231.悪魔族対策会議
俺たちは、エレナ教の信者たちから逃げ、
リルラの所へ来ていた。
「ようリルラ、調子はどうだい?」
「セ、セイジ! よく来た」
リルラが手を差し出してきたので、普通に握手を交わした。
しかし、リルラはいつまでたっても握った手を離そうとしない。
どういうつもりだろう?
すると―
パシッ!
横からアヤが俺の手をチョップしやがった!
そのはずみで、リルラと握手をしていた手が外れてしまった。
「アヤ、なにすんだ!」
「なんとなくよ!!」
なんとなくで、兄の手をチョップするのかよ!
意味分からん!
なぜか、アヤとリルラが睨み合っている。
二人は、なんで睨み合ってるんだ?
チョップされたのは俺だぞ?
「リルラ、とりあえず、悪魔族の新しい情報はないか?」
「特に新しい情報は入っていない。
どの街も警戒を強めているから、おいそれと襲っては来れないのだろう」
「そうか、それはいいことだ」
「あと、いいものが出来上がってきたぞ」
リルラが自慢気に見せてくれたものは、
木のコップの様なものだった。
「あ、双子魔石式糸電話か!」
「そ、そうだ…何故先に言ってしまうのだ。
驚かせようと思っていたのに……」
そりゃあ分かるさ、その作成現場に俺も居たのだからな。
「それを何処に配るんだ?」
「各街の領主に1つずつ配置する予定だ」
それはいい、これで各街の間の連絡が簡単になる。
その内、電報のサービスとか始めてもいいかもな。
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「そろそろお昼だが、昼食を食べていくか?
準備させるぞ」
「俺は、ちょっと野暮用がある。
アヤたちに昼食をごちそうしてやってくれ」
「え!?
もしかして、他の女の所へ行くのか?」
「まあ、先方には女性もいるけど……」
あれ?
リルラは何故、ハンカチを噛み千切ろうとしているのだろうか?
「それじゃ、後はよろしく」
俺は、よく分からない危険を感じて、逃げるように竜人族の村に飛んだ。
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「お前が長老様の言っていた人族だな」
村の門番は、ジロジロと俺を見てくる。
俺には、そんな趣味はないですよ。
「まあいい、通れ。
村の中で厄介事を起こすんじゃないぞ」
「は、はあ」
なんとか村に入れてもらい、長老様の所へ急いだ。
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「こんにちは」
「来たか」
ガドルが出迎えてくれた。
そして、長老様の家に入ると―
大勢の男達が、集合していて、全員一斉に俺のことをジロリと睨んできた。
「ど、ども」
なんか、凄くアウェイ感。
「すまないが、急にみなで話し合いをする必要が出来てしまってね、
少し待っていてもらえないだろうか」
「どうかしたんですか?」
「実は、狩りに出ていた者たちが、ガドルとハルバ以外にも何人か、
悪魔族に襲われてね」
長老様は、静かにそう語ったが、
周りの男達は、ヤクザの抗争が始まる前かのような熱気だった。
「ちょっと待ってください、
その話、俺にも聞かせてもらえませんか?」
「しかし、これは竜人族の問題だ。
君には関係なかろう?」
「魔族、人族の街も、悪魔族に襲われてます。
そして、そのどちらの現場にも、俺は居合わせました。
情報交換をしませんか?」
「なんだと!?
襲われたのは、我らだけじゃないのか!」
もしかしたら、人族と勘違いして襲われたかもしれないのだけれど……
それは言わないでおこう。
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彼らの話をまとめると―
・狩りに出ていた者たちが、寝込みを襲われた。
・怪我を負い村までたどり着けた者が数名。
・行方不明になっているものが多数。
・怪我を負ったものは毒により助かる見込みが無い。
「ちょっと待った!
【毒治癒薬】を数本持っていますから、すぐにその人たちに使って下さい」
「本当か!?
それは助かる!」
俺は、10本ほど持っていた【毒治癒薬】を渡した。
「これで足りますか?
足りなければ、この場で作りますから」
「大丈夫だ、ありがとう」
長老様のお孫さんに【毒治癒薬】を持たせて、急いで怪我人に届けに向かってもらった。
「セイジ殿には、お世話になってばかりだな」
「いえいえ」
情けは人のためならずって言うしね。
べ、べつに長老様のお孫さんが可愛いからではないですよ?
俺の方からは、悪魔族たちが色々な魔石を使っている情報を提供し、
村が悪魔族の操る魔物に襲われるかもしれない事について話し合いをした。
村は、崖の上にあり、通常の魔物が襲っては来れないだろうけど、空を飛ぶ鳥のような魔物を使われた場合は、その限りではない。
村の人達は、そのような魔物に備えて『弓』などの準備をすることにした。
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悪魔族対策会議も終了しようとしていた時。
一人の怪我人が、他の人の肩を借り、必死の形相で長老様の家に入ってきた。
「ほ、報告しなければならない事があります!」
「意識が戻ったのか!
しかし、怪我を押してまで報告する事なのか!?」
「はい!
悪魔族が、『マツの洞窟』から大勢出てくる所を目撃しました」
「『マツの洞窟』!?
あの、小さな洞窟から悪魔族が出てきたのか?
何人くらいだ?」
「少なくとも100人以上いました」
「バカな!
あんな小さな洞窟に、そんなに入れるわけなかろう」
「いえ、確かに見ました」
そこまで報告すると―
その怪我人は、気を失ってしまった。
「早く手当を!」
その場にいた男たちによって、緊急搬送されていった。
「うーむ、あの洞窟に何があるんだ??」
みな、考えこんでしまった。
「すいません、その『マツの洞窟』とは、どのようなものなんですか?」
「森の中にポツンとある、大岩に開いた洞窟で、
狩りに出かけた者が、たまに野営に使う場所だ。
洞窟の中は、10人も入ればいっぱいになってしまう程度の広さしかない」
「もしかして、隠し通路があるとか?」
「かなり前から頻繁に利用しているが、
妙な石像があるだけで、それ以外に何もないはずだ」
妙な石像ね~
怪しい……
「場所は、どこらへんですか?」
「ガドル、場所を教えて差し上げなさい」
「はい」
俺は、ガドルに案内されて長老様の家から外に出た。
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「あそこに見える大岩が『マツの洞窟』だ」
長老様の家の前から見えるのか!
ガドルが指差す方向に、大岩が見えた。
あれ?
あの辺りは、昨日探しまわったはずの場所だ。
隠し通路とか、隠し部屋があって、そこに悪魔族がいたなら―
マップで確認できたはずだ。
何故、マップに反応しなかったんだ?
ご感想お待ちしております。




