227.エレナに抱きつくおっさん
「はー、疲れた~」
「セイジ様、アヤさん、お帰りなさい」
俺たちは、夜遅くなってようやく家に帰ってきた。
結局、百合恵さんは部屋にいなかった。
しかし、駆けつけてくれた警察官たちは、十分異常さを理解したらしく、徹底的な調査が行われた。
俺たちも詳しい事情を聞かれ、それで帰りがこんなに遅くなってしまったというわけだ。
なにせ、完全なる密室状態である。
警察は、血眼になって百合恵さんの家の捜査を行った……
しかし、大量のおもちゃやDVDなどが発見され、
警察の人たちは、なんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。
おもちゃに付着した体液などからDNA鑑定が行われるのだろうか?
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ヒルダは頑張って俺たちを待ってくれていたのだが、遅くなりすぎたために先に寝かさたそうだ。
そして俺たち3人は、遅い夕食を食べていた。
「さて、アヤ、エレナ。
この状況、どう思う?」
「誰かが魔法で連れ去ったのではないでしょうか?」
「エレナ、日本には俺たち以外に魔法を使える人なんていないよ」
「そうでした……」
「あ、私、分かっちゃったんですけど!」
「アヤ、何か分かったのか?」
「犯人は、この中にいる!!」
アヤは、そう言いつつ俺のことを指差している。
「……
まあ、聞いてやるから、言ってみろ」
「エレナちゃんの言った『誰かが魔法で連れ去った』、
そして、兄ちゃんの言った『日本には俺たち以外に魔法を使える人なんていない』、
そして、兄ちゃんは【瞬間移動】の魔法が使える……
これらから導き出せる答えは……
犯人は、兄ちゃんだ!!」
ポカッ!
「なんで、殴るの!?」
「真面目な話をしているんだから、ふざけるなよ」
「ふざけてないよ」
ふざけてなかったのか、
余計たちが悪いな……
アヤ、お前は疲れてるんだ。
百合恵さんを心配するあまり、心労がたまってしまった……
だからこんなバカな事を言い出すんだ。
そうに違いない。
「名推理だと思ったんだけどな~」
俺も、疲れがたまってきてしまった。
「アヤの事はほっておいて」
「なぬ!?」
「俺に1つ、心あたりがある」
「ほんとですか!?」
「人を移動させることの出来る魔法を持っている奴は、俺以外にもう一人知っている」
「そんな奴いるの?」
「それは……
俺をドレアドス王国に召喚した奴だ」
「あ!」
そう言えば、俺が召喚された時、エレナもいたんだよな。
「エレナ、俺を召喚した、あの魔法使いの事をなにか知ってるか?」
「いえ、詳しいことはお父様が教えてくれなかったんです」
「うーむ、もう夜遅いけど、王様の所へ行ってみるか」
「今から行くの?」
「0時過ぎたら戻ってこれるし、早いほうがいいだろう」
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俺とエレナは、2人で異世界へ飛んだ。
ヒルダが寝ているので、アヤは留守番だ。
「真っ暗だな」
謁見の間は、明かりが何もなく真っ暗だった。
「もう遅いですし、みなさん寝ていると思います」
「エレナ、王様の寝室はどこだか知ってるか?」
「はい、こちらです」
俺たちは、【白熱電球】魔法で周囲を照らしながら王様の寝室へ向かった。
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途中、見回りの兵士たちが何人かいたが、【睡眠】の魔法で眠らせて、どんどん進んだ。
「ここです」
見張りの兵士を眠らせて、俺たちは王様の寝室に忍び込んだ。
「お父様、ぐっすり寝てます」
「魔法で起こすか」
実は、【光の魔法】を習得した時、使えそうな魔法を幾つか覚えたのだ。
その一つが【起床】。
寝ている者を起こす魔法だ。
「【起床】!」
「……ん? なんだ? 誰かおるのか?」
魔法を使用すると、王様はすぐに目を覚ました。
「お父様、お久しぶりです」
「エ、エレナ! わしは夢を見ているのか!?」
王様は、エレナに抱きつきやがった。
「お、お父様!」
「王様、娘とイチャイチャするのは、そこまでにしてもらおうか」
「お、お前は! セイジ!
おのれ、わしを暗殺しに来たのか!?」
「違うに決まってんだろ。
急用が出来たから会いに来たんだよ」
「こんな夜中に何事だ?」
「俺に隠れて勇者召喚をやったりしてないだろうな?」
「そんなことをするわけ無いだろ。
お前のような者を召喚してしまうかもしれない、あんな危険なものは、もうこりごりだ」
酷いいわれようだ。
「じゃあ、俺を召喚した魔法使いは、今何処にいる?」
「ん?
……『ヴァルニール』の事か?」
アイツの名前は『ヴァルニール』と言うのか。
「アイツは、お前が攫ったのではなかったのか?」
「なぜそうなる」
「お前がエレナを誘拐しやがった時に、ヴァルニールもいなくなったから、
てっきりお前が攫ったのかと思っていたのだが」
「そう思ったんだったら、俺とあった時に聞けばよかっただろう」
「アイツの口車に乗って勇者召喚などしたから、こんな事態になったのだ。
別にわしがわざわざ探してやる義理など無い」
冷たいやつだな。
「アイツの行方を知らないなら、用はない。
エレナ、そろそろ0時を過ぎるから、帰るぞ」
「はい」
「ま、待ってくれ。
エレナ、行ってしまうのか?」
「はい、私はセイジ様の所でもっと学びたいことがあります。
あ、お父様。
お願いがあるのですが」
「なんだエレナ、なんでも言ってくれ」
こいつ、エレナには甘々だな。
まあ、俺もそうだけど。
「私のお友達が、勇者召喚と同じような形で姿を消してしまいました。
そのヴァルニールさんが、何かを知っているかもしれないのです。
お父様のお力で、ヴァルニールさんを探してくれませんか?」
「そうか、分かった。探しておく」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、帰るぞ」
「はい」
「エ、エレナ~」
帰ろうとすると、王様がエレナに抱きついて離れない。
「おい、離れろよ」
「いやじゃ!」
「お、お父様」
気持ちは分からんでもないが
気持ち悪いぞ。
「【睡眠】!」
俺は【睡眠】の魔法を使って
再び王様を寝かしつけ、日本に帰還した。
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