225.コンプリート
「では、俺とこの子が参拝します」
「ん? 話を聞いていなかったのかね?
火のマナ結晶に参拝できるのは、魔法で火を出せる者だけだぞ?」
「ですから、俺とこの子は魔法で火が出せます」
「ほう、そこまで言うならここでやってみろ」
『この子』と言うのは、もちろん―
ヒルダ……
ではなく、舞衣さんだ。
ヒルダはもう火のマナ結晶を参拝済みだからね。
「では、舞衣さん、やって見せてやれ」
「おう」
舞衣さんは、警備兵の前で構えをとった。
「行くぞ!
【爆熱正拳突き】!!」
激しい音とともに、熱と光と爆風が吹き荒れる。
「どうです? いちおう、火の魔法ですよ」
「……お、おう……
そうだな……
通ってよし!」
「では、続いて俺がやります」
俺が魔法を使おうとしていると―
アヤが、近寄ってきた。
「兄ちゃん、本当に火の魔法つかえるの?」
「火の魔法じゃないだろ?
魔法で火を出すんだ」
「それって同じじゃん」
「それが違うんだな~
まあ、見てな」
俺は、アヤを下がらせ、魔法を発動させた。
「ん?
それは、【水の魔法】ではないか!」
俺の目の前には、【水の魔法】で発生させた水の球が浮かんでいた。
警備兵は呆れ顔だ。
「まだ続きがあるんですよ」
俺は、左手をピースの形に指を立てて、
水の球を、2点責めの要領で下からズブズブと指を突き刺した。
そして水の球は、2点責めに耐えかねたかのように、ブクブクと泡立ち始めた。
発生した泡は、左右に分かれて集まり、2つの塊となっていった。
そして2つの気体の塊から、それぞれ管が伸び外へと繋がる。
そこから外へシューと音を立てて気体が吹き出し、2つの気体が混ざり合っていた。
俺は、その混ざり合った気体に、最小の【電撃】を発生させ、着火した。
ゴー!
ガスバーナーの様な真っ直ぐで青い炎が吹き出ていた。
「な、なんだこれは!?
火の魔法? いや、水の魔法か?」
「まあ、いいじゃないですか、
魔法で、火を、出しましたよ?」
「た、確かに……」
「セイジお兄ちゃん、これどうやってるんですか?」
よしよし、ヒルダには今晩ゆーっくり、『2点責め』を教えてやろうじゃないか。
種明かしをすると、これは水の電気分解だ。
2つの気体は、水素と酸素。
それを混ぜあわせた気体に火をつけたというだけだ。
「では、二人は参拝を許可する」
俺と舞衣さんは、警備兵に通してもらい、火のマナ結晶に参拝した。
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『【火の魔法】を取得しました。
【火の魔法】がレベル4になりました。』
参拝を終えると、いきなり【火の魔法】がレベル4になった!
確認してみると、ヒルダが覚えていた【着火】【加熱】【炎コントロール】以外に、【爆発】と【可燃ガス生成】の魔法を習得していた。
先ずは、【爆発】。
『幻の炎をともなった爆発を発生させる』となってる。
幻の炎なのか……
もしかして、舞衣さんの爆熱正拳突きで発生する炎も、幻の炎なのかもしれないな。
そして、【可燃ガス生成】。
『空気の成分を変化させ、可燃ガスにする』だってさ。
これはいい!
【油の魔石】が無くても炎を発生させられる。
ちなみに恥ずかしがる舞衣さんを【鑑定】してみたところ、レベルに変化はなく、【爆発】までの魔法を習得していた。
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続いて、『光のマナ結晶』を参拝しに行った。
こちらは、特に条件などはなく、一人10ゴールドで参拝可能だそうだ。
ここで【光の魔法】を習得すれば……
ついに、魔法コンプリートだ!
長く苦しい旅だった……
それもここで終りを迎える。
「兄ちゃん、何やってるの? 早く参拝しちゃおうよ」
くそう、せっかくセンチメンタルな気分に浸っていたのに。
光のマナ結晶参拝結果は~
アヤと舞衣さんがレベル2。
ヒルダがレベル3。
俺とエレナは…… レベル4だった!
なんか全体的にレベルが高いな。
しかし、とうとう魔法をコンプリートしてしまった。
コンプリート記念に何かイベントとか起きるのかと期待したが、そんなことはなかった。
「ねえ、兄ちゃん見て見て~」
アヤは、【光の魔法】を使って空中に光の文字を書いていた。
花火ではしゃぐ子供かよ!
「さて、一通り魔法の習得も終わったし、
ヒルダ、この街出身なら、誰か会いたい人とか居るんじゃないのか?」
「いえ、特には……」
ヒルダの表情が暗くなってしまった。
嫌なことでも思い出させてしまったのかな?
ヒルダ自身が話す気がないなら、そっとしておくしか無いか。
「それじゃあ、帰るか」
「「はーい」」
今週はけっきょく、刀の試練はクリア出来なかったな。
来週頑張るとしよう。
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日本に帰宅すると、
舞衣さんは、百合恵さんに電話をかけていた。
そう言えば、泊まりに行く約束をしてたんだっけ。
泊まりに行って本当に大丈夫なんだろうか?
「おかしいな」
百合恵さんに電話をかけていたはずの舞衣さんが、首をかしげている。
「舞衣さん、どうかしたんですか?」
「百合恵くんが電話に出ない」
一人で変なことでもシてるのかな?
舞衣さんは、しばらく百合恵さんに電話をかけていたが、いっこうに出る気配はなかった。
「どうしたんだろう?」
「百合恵さんの家に直接行ってみます?」
「いや、止めておくよ。
連絡も無しにいきなり行くのも失礼だしね。
いったん家に帰って連絡を待つよ」
「そうですか、じゃあ、送っていきますね」
「ありがとう」
俺は、舞衣さんを家まで送っていった。
百合恵さん、一体どうしたんだろう?
……
ご感想お待ちしております。




