224.ゲスい店長
俺たちはエビスの街を離れ、スガの街の武器屋に来ていた。
「こんにちは~」
「なんだ、うちの庭を壊したやつか」
いつまでそのネタを引っ張るんだ。
皆さん忘れてるかもしれないが、前に【魔力のロッド】を購入した時、試し殴りさせてもらって、庭にクレーターを作成したのだ。
そして、この店長さんは、美人店長さんだ。
しかし、店長さん、なんだかいつもより不機嫌そうだな。
どうかしたんだろうか?
「何しに来たんだ?」
「えーと……
杖を作ってもらおうかと思いまして……」
「杖を、作る?
出来合いのものじゃダメなのか?」
エレナは、作りたてほやほやの【回復強化魔石+5】を店長さんに差し出した。
店長さんは、その魔石を見た途端、目の色を変え、
魔石をジロジロと見ている。
「なるほど、えらく品質の高い【回復強化魔石】だね。
出来合いの物じゃ勝負にならないな。
しかし……
こんな高級な魔石を使うなら、杖の素材もそれなりのものにしないと」
「とりあえず、一番いい素材で頼みます」
「ほう、そりゃまた豪儀だね~
50000ゴールドでどうだ?」
た、高い……
まあ仕方ないか。
「それでお願いします」
「まいど!」
店長さんは、急に機嫌が良くなり、
散らかっていたテーブルの上を片付け始めた。
あれ?
いま片付けようとしている物って……
テーブルの上には、ひょうたん型の魔石と、木製の小さな樽の様なコップ。
ひょうたん型の魔石は【双子魔石】だろう。
そして、木のコップの底に、その双子魔石の片割れが埋め込まれていた。
「これってもしかして……」
「あー、ダメだダメだ、それは極秘の依頼のものだ」
「しかし……
木のコップだと、声の振動が双子魔石に届かないのでは?」
「こ、声!? 振動??
もしかして、この作りかけの魔道具がなんだか分かるのか?」
「離れた人と会話するための魔道具でしょ?
キセリさんに依頼されたんですよね?」
「な、なぜ、それを知っている!?」
やはりそうか。
「キセリさんの所で、紙コップの試作品を見ませんでしたか?
あれを作ったのは俺ですよ」
「なん、だと!?」
店長さんは、血走った目でにじり寄ってきた。
「どうしても上手く出来ないんだ。
問題点を指摘してくれ」
どうやら、依頼されたものの、上手く作れず焦っていたようだ。
「素材が木ではダメです」
「しかし、試作品みたいな上等な紙などないし、
紙でコップなど、作れるものが居ない」
「魔物の革はどうですか?」
「ああ、魔物の革ならあるが……
革でコップを作るのも無理だ」
「コップ全体を革で作る必要はありませんよ、
コップの底だけ革にして、後は木でも大丈夫です」
「なるほど、コップの底の素材が重要なのか」
店長さんは、木のコップの底を金槌で乱暴にぶっ壊し始めた。
けっこう豪快だな。
「あ、革を張るときは、たるみがないように張ったほうがいいですよ」
「わかった」
底に穴を開けた木のコップに革を張り付け、接着剤のようなもので、革部分の中央に魔石をくっつけた。
「これでいいのか?」
「大丈夫だと思います」
動作テストをやってみると……
丈夫な上に、紙コップ版より音がクリアに大きく聞こえる。
これはいいな。
「やった! 成功だ!!」
店長さんは、俺の手を取ってぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいる。
この人、けっこう可愛らしい一面もあるんだな。
「ぐへへ~ これで大儲けだ!」
この人、けっこうゲスい一面もあるんだな。
「店長さん、悪魔族の件はご存じですか?」
「ああ、なんか人族の街を襲ってるらしいな」
「その件が片付くまでは、この魔道具を一般の人に売ったりはしないで下さいね」
「ん?
ああ、そうか!
これが悪魔族に渡ったら、悪用されるのか!」
今気がついたんですか?
「まあ、しょうが無いな。
それまでに、双子魔石を……
買い占めておくか…ぐへへ」
ゲスい、ゲスすぎる!!
杖の作成は5日ほどかかるそうなので、
俺たちは、魔石を預けて武器屋さんを後にした。
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最後の目的地である『シナガの街』に向かうため、
みんなにスガの街で待っててもらって、
俺は、悪魔族と戦った場所から、【電光石火】で東に走っていた。
一時間ほど走った所で、『シナガの街』が見えてきた。
街にはみんな一緒に入るつもりなので、いったんスガの街に戻って、【瞬間移動】でみんなを連れて戻ってきた。
「へー、あそこが『シナガの街』か~
ん?
なんか、煙が上がってるけど…大丈夫なの?」
「あ、ほんとだ」
アヤに言われるまで気が付かなかったが、
街のあちこちで煙が上がっている。
「セイジお兄ちゃん、あれは鍛冶屋の煙ですよ」
「ん? ヒルダ、この街を知ってるのか?」
「ええ、私、この街出身なんです」
へー、ヒルダはこの街出身なのか。
しかし、煙はたくさん上がっている、
ずいぶん鍛冶屋が多い街だな。
街の入口に到着すると、警備をしていた兵士に呼び止められた。
悪魔族の侵入を防ぐための警備とかで、身体検査をされてしまった。
おいバカ、変な所を触るな!
あ、ちなみに、女子たちの身体検査は女性兵士が担当していたので大丈夫だ。
『シナガの街』は、ほんとに鍛冶屋が多かった。
大通りに並ぶ店は、2軒に1軒は鍛冶屋な程だ。
まあ、鍛冶屋には用がないので、
俺たちは、道行く人に場所を聞いて【火のマナ結晶】と【光のマナ結晶】の場所へ急いだ。
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【火のマナ結晶】の場所に到着すると、
なにやら工事が行われていた。
「すいません、【火のマナ結晶】を参拝したいのですが……」
警備兵に話しかけてみた。
「現在、参拝禁止だ」
「え!? どうしてですか?」
「悪魔族対策だそうだ。
悪魔族に【火の魔法】を悪用されないためだとさ」
「そんな……
せっかくここまで来たのに」
「えーと、現在参拝が許されているのは……」
なにか条件があるのか?
「魔法で火を出すことが出来る者だけだそうだ」
「え? それって、【火の魔法】が使える人だけしか参拝できないってこと?」
「まあ、そういうことになるな」
「それって、ぜんぜん意味無いですよね」
「まあ、そうだ」
うーむ、どうしよう……
ご感想お待ちしております。




