219.鍋
「さて、何鍋にするかな~」
俺が、何気なくそうつぶやくと、横からアヤが……
「なんでも適当に入れちゃえばいいじゃん!」
適当なことを言い出した。
「アヤ、それじゃあ、闇鍋になっちゃうだろ」
「闇鍋いいね! それに決まり!」
「勝手に決めんな!」
オークがたくさんあるので、肉はオークの肉でいいだろう
だとしたら、オーク肉の豚汁かな。
オーク肉なんだから、『豚汁』じゃなくて『オーク汁』なんだろうけど……
なんか変な響きだから『トン汁』でいいや。
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火をおこしたりするのに、ヒルダにも手伝ってもらうか。
集会所の中に入ってみると、回復魔法師さん達の魔力が回復したおかげで、エレナとヒルダは休憩していた。
「休憩中もうしわけないけど、外で料理をするからヒルダ、手伝ってくれないか?」
「はーい」
ヒルダは元気いっぱいだ。
「セイジ様、私も手伝います」
「エレナ、大勢の怪我を治して、疲れてないか?」
「大丈夫です!」
エレナも元気みたいだ。
俺達が、集会所から出ると、
後ろから、怪我が治った街の人たちが、ゾロゾロ付いてきた。
料理を作るという事を聞きつけたのだろう。
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「じゃあ、これから竈を作るから待っててくれ」
俺は、みんなを少し下がらせ、大鍋の近くで竈を作ろうとしている。
しかし、街の人達がどんどん集まってきてしまって、注目の的になってしまっている。
やりづらい……
「兄ちゃん頑張れー!」
くそう、もうヤケだ。
逆に考えるんだ、『注目されちゃってもいいさ』と考えるんだ!
「行くぞ!!」
俺は気合を入れて叫び、
何処かの戦闘民族が気を集中させるような感じで、全身に力を込めていく。
おまけで、静電気を利用して髪の毛を逆立てたり、
ワザと放電現象を発生させたりもする。
「なんだ!?」「一体何が起こるんだ!?」
見物人達がざわつきはじめる。
俺は、勢い良く両手を地面に叩きつけ、
地響きとともに、【土の魔法】で竈を作り上げていく。
もちろん、地響きも演出です。
そして、若干大げさな竈が完成した。
「「おぉー!!」」
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「次は、水だ。エレナ頼めるか?」
「はい!」
ジョロジョロ~
鍋に物を入れるために作った台の上にエレナが乗り、ジョロジョロと水を入れている。
「エレナ、もうちょっと勢い良く出来ないか?」
「は、はい」
どうやら、みんなが見ている前でジョロジョロしているのが恥ずかしいらしい。
仕方ない、俺もしっかりエレナを見ておいてやろう。
やっとエレナがジョロジョロするのを終え、
何故か体をブルっと震わせていた。
本当にただの水だよね? ね?
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「次は、火だ。
ヒルダ、景気よく頼むぞ!」
「景気よくですか?
分かりました!」
俺とアヤと舞衣さんで竈に薪を入れ。
ヒルダに合図を送った。
ヒルダは油の魔石のロッドを高く掲げ、魔力を込めていく。
ヒルダが、カッと目を見開くと同時に―
『炎の竜巻』が巻き起こった。
「「うわ!」」
見物人達は少しビビって後ずさりしたが、
安全だと分かり、拍手が巻き起こった。
「すげえ、あんなにすごい火の魔法は見たことがない」
そうだろうそうだろう、
ヒルダは俺が育てた。どやー!
ヒルダの魔法は、これで終わらず、
炎の竜巻から、火の鳥が3羽飛び出してきた。
「何だアレは!!?」
見物人達からどよめきが沸き起こる。
そして、その火の鳥は、
まるで巣に帰るように竈に入っていき―
竈の中の薪が、勢い良く燃え上がった。
「「うわーー!!」」
見物人達から、大歓声が沸き起こり、
ヒルダは照れまくっていた。
まあ、やっていることは、ただ竈の薪に火をつけただけなんだけどね
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どうして、こんな大げさなパフォーマンスをやらせているかというと―
それは、街の人達の心を、少しでも和ませるためだ。
悪魔族に襲われ、多数の犠牲者が出ている。
しかし、生き残った者達は……
これからこの街を復興させていかなければならない。
今ここにいる人たちが一番不安に感じているのは、食べ物だ。
悪魔族に街のほとんどの食料が奪われ、他の街に支援を頼んだとしても、
往復で4日、食料の準備などで1日、少なくとも5日は食糧支援をあてに出来ない。
だからこそ、大量の食料を見せ、大きな鍋で大げさに料理をする必要があるのだ。
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そんなこんなで、鍋の用意をし、
野菜を細かく切ってぶち込み、
ヒルダにオークを解体してもらってぶち込み、
そして最後に!
業務用のスーパーで買っておいた『だし入りプロ用味噌』10kgだ!!
10kgのだし入り味噌を、鍋にぶち込む。
すると、辺りにお味噌のいい香りが漂ってくる。
「なんか、うまそうな香りだ!」
街の人々は、器になりそうなものをそれぞれ探して、一列に並び始めた。
俺は、木の棒と適当な金属で『ひしゃく』を作り、
並んでいる人たちに、トン汁をよそっていった。
「旨いぞーー!!」
どうやら気に入ってもらえたらしく、みな口々に美味しい美味しいと言って食べてくれていた。
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「さて、炊き出しも一段落したし、リルラの所へ行ってくるかな?」
「兄ちゃん、リルラの所へ何しに行くの? 逢引き?」
「何故そうなる。
エビスの街が襲われたことを報告しに行くんだよ。
あと、支援の要請もしてくる」
「あ、そっちか」
そっちしかないだろ。
「それじゃあ、しばらく後は頼んだぞ」
「はーい」
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