217.エビスの街
「それじゃあ、俺はマサムネさんの所に行って刀を受け取ってくるけど、みんなはどうする?」
「ボクは魔法を使った動きを確認してみたいかな。
日本じゃおいそれと魔法を使えなかったからね~」
「じゃあ私が、部長の相手をしてあげる」
「アヤくんありがとう」
「私も魔法の特訓をしたいです」
ヒルダも、そう言い出した。
先週せっかくマナ結晶を廻ったのに、使って見る機会がなかったからな~
「それじゃあ、私がヒルダに魔法を教えますね」
舞衣さんの特訓にアヤが、
ヒルダの特訓にエレナが付くと言うことは……
けっきょく誰も、俺には着いてきてくれないということか……
寂しくなんかないやい! グスン……
4人は、シンジュの街の外で特訓することとなり、
俺は一人寂しく、マサムネさんの所へ。
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「こんにちは~」
「おう、来たか」
マサムネさんは、さっそく鍛え直した刀を出してくれた。
「あれ? 何だか前と違う感じですね」
「そうじゃ、今回鍛え直したことで、もう『試練の刀』ではなくなっている。
こいつの名前は『白帯刀』だ」
鑑定してみた。
┌─<鑑定>────
│【白帯刀】
│刀術を認められた証となる刀
│使用者の癖を吸収し、強くなる
│能力:【刃風】の威力上昇
│レア度:★★★★
│試練:
│ 風属性魔物討伐 0/10
│ 水属性魔物討伐 0/10
│ 土属性魔物討伐 0/10
│ 火属性魔物討伐 0/10
└─────────
白帯ってことは、この上に黒帯とかもあるのか?
試練が、なんだか面倒くさそうな感じになってる!
今回の試練は、一日二日で出来そうにないな。
俺は、マサムネさんにお礼を言って、シンジュの街へ戻った。
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シンジュの街の外の草原で、
舞衣さんとアヤ、ヒルダとエレナが特訓していた。
舞衣さんとアヤは、
目にも留まらぬスピードで、空手の試合をしていた。
まあ、空手とは言っても―
爆発したり、竜巻が巻き起こったりしているので、通常の空手とはちょっと違うけどね!
ヒルダとエレナは、
氷の竜巻を発生させたり、炎の竜巻を発生させたりしていた。
それとは別に、街の入口付近で、数名の兵士や冒険者達が、こちらの様子をうかがっている。
様子をうかがうというよりかは、あまりの出来事に口が半開きのまま、唖然としているだけなのだが。
「あ、兄ちゃん、もう用事は済んだの?」
アヤが舞衣さんとの戦闘を中断して、こちらに駆け寄ってくる。
「出来上がった刀を受け取ってきたけど、
今度はこれからエビスの街まで、ひとっ走りしてくるから、そのまま特訓を続けてていいぞ」
「はーい」
俺はアヤ達と別れ、シンジュの街から南に向かって走り始める。
しばらく走って、誰にも見られていないことを確認し、【電光石火】を使って速度を上げた。
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一時間ほど走った所で、丘の向こうから煙が上がっているのが見えてきた。
あれが『エビスの街』かな?
丘を超えると、山脈の麓に広がる街並みが見えてきた。
しかし、様子がおかしい。
街のあちこちから黒い煙が上がっていて、
建物や塀などが、色んな所で崩れている。
更に近づいてみると、怪我人がそこかしこで横たわり、命が失われてしまっていると思われる人達もいる。
やっと街の入口にたどり着いた俺は、怪我を負って座りこんでいる兵士に聞いてみた。
「一体何があったんですか?」
「シンジュの街から来た冒険者か?
実は、昨日の夜中に、街が奇襲にあったのだ」
「奇襲!?
もしかして悪魔族ですか?」
「悪魔族? ああ、そうか、悪魔族か!
確かに角が二本生えた奴等が居た。
そいつらが、大量の魔物を引き連れて襲ってきたんだ」
くそう、悪魔族の奴等、とうとう実行に移しやがったのか!
「怪我人がたくさんいるみたいですが、
この街に回復魔法師は居ないんですか?」
「何を言うか!
この街は【回復魔法の神殿】がある街だぞ?
どこよりも沢山の回復魔法師が居る」
「では、何故、怪我人がこんなに居るんですか?」
「回復魔法師達が住む地区へと続く道が、崖崩れで通れなくなっているんだ。
いま、生き残った者たちで復旧作業を急いでいる。
しかし、人手が足りなくて……」
その兵士は、そこまで話すと、座ったまま気を失ってしまった。
これはかなりまずい状況だな。急がないと!
俺は、【瞬間移動】でシンジュの街へ舞い戻った。
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「みんな! 特訓は中止だ!」
「あ、兄ちゃん、お帰り。
どうかしたの?」
「エビスの街が、悪魔族に襲われて、
怪我人がたくさん出ている。
みんなで、復旧の手伝いに行くぞ」
「「はい!」」「「おう!」」
俺は、みんなを連れて、急いでエビスの街に戻った。
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「エレナは、怪我人の治療をしてくれ。
一人に時間をかけ過ぎないように、
あと、なるべく重傷者を優先だ」
「はい」
「ヒルダもエレナの手伝いをしてやってくれ、
もしもの時のために、飴を渡しておく、
頼んだぞ」
「はい」
「舞衣さんとアヤは、俺と来てくれ。
崖崩れ現場の復旧作業を手伝う」
「「おう」」
怪我人の治療をエレナとヒルダに任せ、
俺たちは崖崩れ現場に急いだ。
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崖崩れ現場には、10人ほどの人が復旧作業にあたっていた。
しかし、みんな何処かしらに怪我をしていて、体力的にも限界が来ているように見える。
「俺達は、シンジュの街から来た冒険者です。
復旧作業を手伝います」
「あ、ありがとう、助かるよ」
「すいませんが、危ないので皆さん下がって下さい」
怪我人達を下がらせると―
舞衣さんが拳で、大岩を砕き、
アヤが吸引力の変わらない竜巻で砕いた岩を吸い上げ、脇に積み上げていく。
俺は俺で、大きな岩をインベントリにしまったり、崩れそうな崖を【土の魔法】で補強したりしていた。
「あんたら何者だい!?」
あまりの手際の良さに、驚かれてしまった。
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