213.ホウレンソウ
出社した俺は、さっそく部長に話を持ちかけた。
「部長、少しお話があります」
「ん? 何の話だね?」
「えーっと、社長にもお話を聞いていただきたいのですが……」
「なるほど、例のアレ関係の話だね」
部長は、俺が何を話したいかを理解してくれたらしく、さっそく社長に連絡を入れてくれた。
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「おう、丸山くん、例の薬の時は本当に世話になったね」
忘れてる人が居るかもしれないが、『丸山』は俺の事だ。
俺と部長と社長は、社長室のソファーでヒミツの会議を行っていた。
「で、改まって何の話なんだい?
まあ、君のことだから、また凄い話なんだろうけど」
社長の中で、俺の評価がうなぎ登りだ。
「実は、例のアレとはまた違う物を手に入れまして、
真っ先に部長と社長にご報告をと思いまして……」
「アレもすごかったが、また違う物?
ものすごく、興味がそそられるな」
「実は……」
俺は、応接セットのテーブルの上に、4種類の薬を並べた。
「ん? 幾つか種類があるのかね?」
「ええ」
先ずは、エリクサーを手に取り―
「これは、かなりな大怪我などに対して、治りを早める飲み物です」
「なん、だと!?」
俺は、続けざまに他の薬を説明する。
「他のは、頭髪、肥満、胸の問題に対応する飲み物です」
「!!?
……すまん、今なんて言った?」
「噛み砕いて言いますと……
ハゲ、デブ、ペチャパイに対応する飲み物です」
社長と部長は、口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。
「いやいや! まさかそんな!」
そうだよな、いきなりこんな話、信じるはず無いよな。
「信じていただけないのは、ごもっともです。
今回の話は忘れて下さい。
他を当たることにします」
俺は席を立ち、一礼をして、退出しようと……
「ちょっと待った、丸山くん!」
「はい、なんでしょう?」
「べ、別に信じないとは言ってないだろ。
まあまあ、座りなさい」
「はあ」
俺が元の席に座るやいなや、部長が俺の肩をたたいた。
「私は、はじめから君の事を信じていたぞ!
頭髪、肥満、胸のやつを1つずつ譲ってくれ」
「あ、ずるいぞ!
私も傷のやつを含めて全部だ!」
「いや私は、全部2つずつで!」
「では私は、3つずつだ!!」
部長の抜け駆けがきっかけとなり、二人は競うように欲しがり始めた。
「おふたりとも、落ち着いて下さい。
そんなに沢山はありませんよ。
胸のやつは、妹が1つ使ってしまったので2つしかなくて、
他のやつは、3つずつだけです」
「そ、そうか……
では私は、頭髪のやつを2つで、他を1つずつにしてくれ」
「では私は、肥満のやつを2つで、もちろん他のやつも1つずつで」
社長が頭髪、部長が肥満を2つずつか……
部長は体型的にうなずけるが……
社長のは、誰が使うんだろう?
俺が社長の頭辺りをチラチラみていると……
「か、勘違いするでないぞ?
私のこの頭は、地毛だからな!
嘘じゃないぞ!!」
俺は、何も言ってませんが……
「えーと、知り合いに譲る場合でも、他言無用をくれぐれもよろしくお願いしますね」
「ああ、もちろんだとも!!」
社長と部長は、薬の瓶をいそいそとかばんにしまいこんだ。
「ところで丸山君、
君の妹が胸のやつを飲んだのかね?」
「ええ、自分としては飲む必要がないと思うのですが、
本人たっての希望でして」
「で、効果はどうなんだね?」
「今朝飲んだばっかりですので、そう直ぐには……
あ、でも、飲んでみた感想をメールで送ってくるはず」
ピコン!
「あ、ちょうとメールが届いたみたいです」
社長と部長は、身を乗り出してくる。
「えーと、
とりあえず、飲んですぐ効果が現れたりはしないみたいです」
「そ、そうだよな」
「で、味は抹茶味だそうです」
「ほうほう」
「あとは、エレナちゃんの触り方がエッ…
おっと、これは関係ない内容でした」
「うーむ、今のところ分かったのは抹茶味ということだけか……」
やはり社長も部長も、薬の効き具合が気になるらしい。
社長は何やら考え事をしていたが―
急に立ち上がり、こんな事を言い出した。
「では、こうしよう、
今週は毎日、3人で集まって報告会を行おう。
仕事の基本は、『ホウレンソウ』と言うしな!」
社長の提案に、部長も俺も同意し、
今週いっぱい『例のアレ・効果報告会』の開催が決定した。
ご感想お待ちしております。




