208.魔石屋事件
「ずいぶん、繁盛していますね」
「ええ、リルラ様のお陰です」
ん?
どういう事だ?
「リルラ様が日の出の塔の4階を発見してくださったおかげで、冒険者が我先にとイケブの街に押し寄せてきています。
冒険者が居ることで、街周辺の魔物が一掃され、
また、日の出の塔攻略で魔石が沢山取れる様になりました。
品物が増え、お客が増え、おかげで商売大繁盛です」
「それじゃあ、街の他の店も繁盛しているんですか?」
「ええ、宿屋も、武器屋も、防具屋も、街全体が大賑わいです」
「なるほどな、それでリルラは安心してシンジュの街に行くことが出来たわけか」
「リルラ様を、よ、呼び捨て!?
もしかして、お知り合いなんですか?」
「ま、まあな……」
「セイジさんって、すごい人だったんですね!」
まあ、日の出の塔の4階を見つけたのも俺だし!
言わないけど!
「そう言えば、新しい魔石も沢山入荷しているんですよ」
「ほうほう、どんな魔石ですか?」
「これです!」
キセリさんが自慢げに、3つの魔石を並べてみせた。
【鑑定】してみると……
【夜陰の魔石】、【帰還の魔石】、【魔物発生の魔石】だった……
これって……
ちょうどすべて、悪魔族が持ってた魔石じゃないか!
「もしかして、この魔石……
怪しげな人物に売ったりしてませんか?」
「怪しげな人物?
そう言えば、この前、フードを被ったお客さんが大量に購入していきました」
それってまさか……
「あ、今、家内が接客中のお客さん、あの人です」
キセリさんが指差す方向には、フードを深めに被った怪しげな客が居て、
まさに今、魔石を購入しようとしていた。
「その客、ちょっと待った!!」
俺が急に大声を上げたせいで、
キセリさんの奥さんが、渡そうとしていた魔石の入った袋を引っ込めた。
怪しげな客は、その袋を奪い取ろうとしていたが、その手は宙を切っていた。
俺がその客に対して【鑑定】の魔法をかけると―
その客は、飛びのいて魔法を避けた。
ビンゴだな。
「お前、悪魔族だろう!」
俺は、わざと店全体に聞こえるような大きな声で、叫んだ。
フードを被った客は、毒々しいナイフを取り出し構えている。
店の中に居た冒険者達はそれを見て、
ある者は武器を取って構え、
ある者は距離を取って様子をうかがっていた。
「舞衣さん、店員さんを頼みます。
ヒルダは、キセリさんを守ってくれ」
「了解」「分かりました」
「悪魔族!?
それって、ずっと北に住むっていう……」
キセリさんは、急な展開に恐れおののいている。
『お前、悪魔族だろう』
今度は、悪魔族語で話しかけてみる。
『おのれ角無しめ!』
はい、確定!
俺は、素早くそいつの後ろに回り込み―
「ぎゃっ!」
【電撃】で気絶させた。
そして、そいつのフードを取ってみると―
丸っこい角が2本生えた、悪魔族の女性だった。
確か、悪魔族も女性のほうが角が小さいんだっけかな。
街に侵入する任務は、悪魔族とバレないように、角の小さい女性が担当することになっているのかも。
「セイジさん、これはどういうことなんですか?」
「実は、悪魔族が人族や魔族の街を狙っているんです。
魔族の街は、すでに悪魔族の襲撃を受けました。
その魔族の街を襲った悪魔族は、キセリさんがさっき見せてくれた魔石を使っていました」
「つまり、私は……
悪魔族に手を貸してしまっていたということですか!?」
「おそらく、そうでしょう」
「そんな……」
悪魔族の女を身体検査してみると……
けっこうボインボイ…じゃなくて!
【言語一時習得の魔石】を持っていた。
「お兄さん、どこを触っているんだい?」
「しかたないでしょ!」
「まあ、アヤ君には内緒にしといてあげるよ」
「あ、ありがとうございます」
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悪魔族の女は、街の兵士が連れて行った。
もうちょっと、身体検査をしてもよかったんだが……
「セイジさん、私どうしたらいいんでしょう……
私が悪魔族に魔石を売ってしまったせいで……」
「キセリさんのせいじゃありませんよ、
悪いのは悪魔族なんですから。
心配でしたら、後のことはリルラと話をしてください」
「リルラ様に!?
しかし、リルラ様は、シンジュの街に居らっしゃいます。
私は、この店を開けられませんし……」
「それは、俺がなんとかしましょう。
前に貰った【双子魔石】、いくつかありますか?」
「【双子魔石】ですか?
それでしたら、10個ほどありますが……」
「では、2つほど下さい」
「あ、はい」
インベントリから、紙コップとセロテープを取り出し、
紙コップの底に、セロテープで【双子魔石】の一つを半分に分け、片方ずつ貼り付けた。
ちなみに、もう一個の【双子魔石】は、リルラへのお土産用だ。
「キセリさん、これを耳に当ててみてください」
「あ、はい」
俺は少し離れた位置から糸電話に話しかける。
『もしもし、キセリさん、聞こえますか?』
『うわ、声が!?
そうか! 話すときは口に当てて話すんですね』
「どうです?
これならシンジュの街のリルラとも話が出来ますよ」
「これは凄い魔道具ですね!
これと同じものを作って売ってもいいですか?」
キセリさんは、少々興奮気味だ。
「キセリさん、落ち着いて下さい。
この魔道具が悪魔族に渡ったら、どうなりますか?」
「そ、そうでした。すいません」
「そこら辺も含めてリルラと話して下さい。
そうですね~
売るとしても、リルラやライルゲバルトにだったら問題無いですよ」
「ライルゲバルトって!
リルラ様のお父様……
そうですか、セイジさんとリルラ様の仲は、もうそんなに……」
ん?
キセリさん、何を言っているんだろう?
「とにかく、これをリルラに持ってきますから、
あとはよろしくおねがいしますね」
「はい、分かりました」
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