204.リルラとの絆
エレナの拷問が終わり、
夜も遅くなってしまったので、魔王城の客間に泊まらせてもらった。
そして、翌日。
ブンミーさんに挨拶をしに来ていた。
「自分たちは、人族の街に戻りますが―
悪魔族対策の方は、大丈夫そうですか?」
「君たちには色々助けてもらってしまったな。
まあ、頼ってばかりも居られない。
あとは我々で何とかするよ」
俺はブンミーさんと握手を交わした。
「そう言えば、報酬を支払ってなかったな」
「まあ、別にいいですけど」
「そう言わず。
しかし、魔王様の居ない状況で勝手に決めるわけにもいかんのでな……
魔王様と協議して報酬を用意しておくから、また今度立ち寄った時は必ず顔を出してくれ」
「ええ、わかりました」
ブンミーさんも律儀な人だなあ。
ヒルダも、カサンドラさんと別れを惜しんでいた。
こうして俺達は、魔族の街を後にして、シンジュの街へ【瞬間移動】した。
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「兄ちゃん、なんでシンジュの街に来たの?」
「とりあえず、悪魔族の件をリルラに言っておこうと思ってな」
「あれ?
リルラならイケブの街じゃないの?」
「何故かシンジュの街に居るみたいなんだ。
まあ、会って聞いてみれば分かるさ」
地図でリルラの居場所を調べてみると、エイゾスの屋敷だった。
門番は、俺達の顔を覚えていてくれたらしく、顔パスで通してくれ、直にリルラの部屋へと向かった。
「リルラ、来たぞ」
「セ、セイジ!」
リルラは、両手を広げて俺の方に駆け寄ってくる。
あれ?
リルラ、もしかして抱きついてくるのか?
と思ったら、俺の直前まで来てハッと気が付き、
急ブレーキを掛け、
すごすごと、開いていた両手をおろして―
恥ずかしそうにうつむきながら、
改めて、握手をしてきた。
うーむ、この一連の動作……
意味がわからん。
何がしたかったんだ?
「いきなり来るから、混乱してしまったではないか」
「ん? そうか、ごめん」
うーむ、なんで俺は謝らなくちゃいけないんだ?
「ところで―
ちっちゃい子が一人増えているようだが、
どういう事だ?」
「ああ、この人は舞衣さんと言って……
とある国の王族だ」
「王族!?」
まあ、先代魔王の孫だから、
嘘では、ないよな。
「これは、失礼しました。
私は、リルラ・ライルゲバルトと申します。
以後お見知り置きを」
リルラは、舞衣さんに対して、ひざまずいて自己紹介をした。
しかし、リルラは……
相変わらず『王族』に弱いな。
「ボクは河合舞衣だ。
リルラ君、よろしく」
舞衣さんのしゃべり方って、
王族って聞くと、それっぽく聞こえるから不思議だ。
「それで、舞衣様が私に、どのようなご用件でございますか?」
「あー、違う違う、用があるのは俺の方だ」
「え? そうなのか?」
「カクカクシカジカ……」
リルラに、魔族の街での騒動と、悪魔族の計画について話をした。
「何だと! 悪魔族が!?」
「リルラは、悪魔族について知っているのか?」
「直接見たことはないが……
北方に住み、人心を惑わす怪しげな魔法を使うとの話を聞いたことがある」
怪しげな魔法ね~
【夜陰の魔石】、【魔物発生の魔石】、【帰還の魔石】など、
怪しげな魔石を多く使っていたのは確かだ。
魔石ではなく、魔法を使うやつも居るのかな?
「とりあえず、街の警備を強化したほうがいいぞ」
「そうだな、重要な情報、感謝する」
とは言っても、具体的にどの街を襲う計画なのかは分かっていない。
他の街にも知らせる必要がありそうだな。
「セイジ、お願いがあるのだが……」
「ん、なんだ?」
「お父様にも、この事を伝えてもらえないだろうか?」
「ライルゲバルトは、何処に居るんだ?」
「お父様は『王都』に戻られた。
だから、普通に伝言を頼むと1週間かかってしまうのだ。
その間に王都が襲われる可能性もある」
「あれ? 王都に戻ったのか?
ライルゲバルトは、この街の統治をしてたんじゃなかったのか?」
「それは……
私が引き継いだのだ……」
「引き継いだ?
つまり……
今は、リルラがシンジュの街の『当主』ということか?」
「そうだ」
「それは、また、大変そうだな。
あれ? じゃあイケブの街はどうなったんだ?」
「イケブの街は、
日の出の塔の4階が発見されたことで、
冒険者も多く集まってきていて、
防衛の面でも問題なくなった。
それで、治安維持を新しい当主に任せて来た」
「なるほど、
それで、イケブの当主は誰になったんだ?」
「前当主の弟に当たる者が、当主を引き継いだ」
あの、魔王に【鑑定】魔法をして大騒ぎを巻き起こした奴の弟か……
どんな奴なんだろう?
兄に似てキツネ顔なんだろうか?
「それで、お父様への伝言の件は……
頼まれてくれるのか?」
「うーん、めんどうくさいな~」
「んな!
そんな事を言わずに頼む。
な、何でも言うことを聞くから……」
「ん? 今、なんでもって言った?」
俺とリルラがしばらく見つめ合っていると……
「兄ちゃん! それにリルラも!
なに二人してラブラブな空気を漂わせてるの!」
「アヤ、バカ言うなよ!
そんなわけ無いだろ!
どう見たらラブラブに見えるんだよ!」
俺は、助けを求めてエレナに目を向けると―
エレナも俺のことをジト目で見ていた……
なんで??
「分かったよ、伝言くらい行ってやるよ」
「そうか! ありがとう」
「しかし、リルラ。
お前、本当は、ライルゲバルトと離れ離れになって、
心細いんじゃないのか?」
「そ、そんなことは……」
どうやら図星のようで、
リルラは、俯いてしまった。
「リルラ、
前に、遠くはなれていても話が出来る魔道具を渡したけど―
あれ、今でも持っているか?」
「ああ、持っているぞ!」
そう言うとリルラは、豪華な宝箱を大事そうに抱えて持ってきた。
そして、宝箱を開けると……
前に俺が作った、双子魔石式糸電話が、
なんか、伝説の秘宝のように、大切に保管されていた。
別にそんな大層なものでもないんだけどな~
「持ってるなら、それで良いんだ。
それじゃあ、俺の持っている方をライルゲバルトに渡すから、
それで、父と娘で連絡をとり合ってくれ」
「え!?
で、でも、これは……
私とお前の、絆の証……」
絆って! 大げさだな~
「そんなことを言っても、今まで一度も使わなかっただろ?」
「そ、それは……
で、でも……
もしもの時に、連絡したい時があるかもしれないし……」
「じゃあ今度、双子魔石を手に入れて持ってくるから、
それでいいか?」
「双子魔石…… それって、恋人の……
分かった! それで良い!
いや、それがいい!!」
よくわからんが、リルラが納得してくれたようでよかった。
その場を丸く収め、自分の交渉能力に自画自賛していると、
後ろから何やら冷たい視線が……
振り向くと、アヤとエレナが俺をジト目で睨みつけていた。
なんで、二人とも俺のことを睨みつけてるの??
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