201.食い込む縛り方
地図上の赤い点を目印に、魔族の街に侵入した何者かを探していた。
やっと見つけたそいつは、フードを深めに被った奴だった。
「こんばんは。
こんなところで何をしているんですか?」
俺にいきなり話しかけられ、そいつはビクッとしていた。
そして、俺のことを無視して、そそくさと立ち去ろうとする。
「無視はないでしょ?」
俺は、素早く回り込んで行く手を塞ぐ。
それでもそいつは、何度も行き先を変更して更に逃げようとする。
俺が、バスケットのディフェンスの様に、行く手を防ぎまくっていると―
「テハニスハ、ケソヌ!」
そいつは、何やら聞き慣れない言葉で叫んでいる。
俺の知らない言葉かな?
俺は【言語習得】を使ってみた。
┌─<言語習得>─
│【悪魔族語】を習得します
│ 習得レベルを選択して下さい
│
│・レベル1(消費MP:50)
│ 片言で話が出来る
│
│・レベル2(消費MP:100)
│ 日常会話程度は話ができる
│
│・レベル3(消費MP:200)
│ スラスラと会話ができ
│ 簡単な文字のみ読める
│
│・レベル4(消費MP:500)
│ スラスラと会話ができ
│ 日常使う文字が読み書き出来る
│
│・レベル5(消費MP:1000)
│ 全ての言葉を使って会話ができ
│ 全ての文字が読み書きできる
└─────────
【悪魔族語】!
つまり、こいつは『悪魔族』か!!
俺は、さっそくレベル5の悪魔族語を習得し、
話しかけてみた。
『お前、悪魔族か?
なぜ魔族の街に居るんだ?』
『なにっ!?
角無しのくせに、言葉が分かるのか!?』
『角無し?』
『角無し風情が、神聖な我らの言葉を話すな!』
角無しとは、人族の事かな?
そいつは、懐からナイフを取り出した。
俺も、刀を構えながら、
【鑑定】を使ってみる。
『!?』
ところが奴は、素早く動いて【鑑定】の魔法を避けやがった。
魔族だけじゃなくて、悪魔族も魔法が見えるのか!
奴は、いきり立ってナイフで攻撃してきた。
あぶな!
ナイフをギリギリで躱したけど、
あのナイフ、見るからに『毒』が塗ってあるって感じだ!
かすり傷でも致命傷になり得る。
奴は、ナイフの一撃が避けられてしまったことに驚いている様子で―
俺の事を、かなり警戒しているようだった。
『逃げられはしないぞ。
諦めたらどうだ?』
『それはどうかな?』
奴は、ニヤリと微笑むと―
懐から、『魔石』のようなものを取り出した。
バチバチッ!!
俺は、とっさに【電撃】を放ち、
魔石が使われるのを阻止した。
『お、おのれ……』
奴は、俺の電撃をマトモにくらい、
その場に倒れて、意識を失った。
完全に意識を失ったのを確認して、
近づいてフードを取ってみると―
角が2本生えた、若い『女』だった……
顔を拝んだついでに【鑑定】も、してみた。
┌─<ステータス>─
│名前:ナターシャ
│種族:悪魔族
│職業:工作員
│
│レベル:13
│HP:534
│MP:463
│
│力:28 耐久:23
│技:74 魔力:46
│
│スキル
│ 闇3、魔力感知3
│ 短剣術4
└─────────
工作員ね~
そりゃあ、【鑑定】されたくないわけだ。
俺は、何か危険なものを隠し持っていないかを確かめるべく、
仕方なく彼女の体をチェックした。
ほんとに『仕方なく』だからな!!
彼女は、2つの魔石を持っていた。
1つ目は、【帰還の魔石】。
さっきは、これで逃げようとしていたらしい。
2つ目は、【夜陰の魔石】。
こんな物があるのか!
どうやら、街に進入するときにこれを使ったのだろう。
俺は、2つの魔石とナイフを没収して、
彼女の手と体を縄で縛り上げた。
しかし、気を失ったまま運ぶのは大変そうだな……
『ほら、起きろ!』
俺は、彼女の顔を叩いて、目を覚まさせる。
『は!? わ、私は…… 何を……
くっ! な、縄を解け!! この角無しめ!!』
やっと目が覚めたか。
しかし、あんまり暴れたら……
『くそう! く、食い込む……』
あ、別に『変な縛り方』は、してないですよ?
ほんとだよ?
俺は彼女を、ブンミーさんの所へ連れて行った。
~~~~~~~~~~
「そいつは! 悪魔族ではないか!!
セイジ殿、どうしたのだ!?」
「魔物の襲来に合わせるように、
街の反対側から侵入していた」
『くっ、殺せ!』
そのキャラはもういるので、取らないであげて!
「悪魔族語か、
何を言っているかわかればいいのだが……」
「分かりますよ」
「なに!?
さすが通訳!」
通訳じゃないし!
「それで、そいつは何をしていたのだ?」
「ちょっと聞いてみますね」
『お前は、何しに来たんだ?』
『ふん、言うわけ無いだろ!』
「喋る気はないそうです」
「そうか、では、拷問でもするか!」
「そうですね! 仕方ないですもんね」
俺がウキウキしていると―
地図上に、複数の悪魔族の反応が現れた。
「残念ですが、拷問をしている暇はなさそうです。
大ネズミがやって来た方向に、複数の悪魔族の反応があります」
「なに!?」
ブンミーさんは、大慌てで兵士たちに迎撃の準備をさせている。
工作員の女は、別の兵士さんに連れられて行ってしまった……
べ、別に、拷問をしてみたかった訳じゃないんだからね!!
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