200.魔族の街防衛戦
日が暮れてきて、舞衣さんの特訓を終え、街に戻ってくると―
街の様子がおかしかった。
兵士たちが慌ただしく、動き回っている。
「すいません、何かあったんですか?」
俺は街の兵士に聞いてみた。
「魔物の大群が、街に近づいてきているらしい。
ですので、人族の皆さんは避難しててください」
「あ、はい」
どうやらこの兵士さんは、俺達の事を『貿易特使』の人たちと勘違いしたらしい。
ブンミーさんの所へ行ってみるか。
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「ブンミーさん、どういう状況ですか?」
「おうセイジ殿、実は……」
ブンミーさんの話では―
【ミタの森】から、大量の魔物が湧き出してきたそうで、兵士たちが対応に追われているらしい。
「どうする、俺達も手伝うか?」
パーティーメンバーに聞いてみたところ―
満場一致で手伝うことになった。
「俺達も手伝います、どうしたらいいですか?」
「おお、それは心強い。
私もこれから前線に出るので、一緒に来てくれ」
「はい」
「カサンドラ、準備はまだか?」
「はーい」
ブンミーさんが呼ぶと、奥からカサンドラさんが出てきた。
「あ、セイジ達も参加するのか?」
「ええ、また一緒に戦うことになっちゃいましたね。
よろしくお願いします」
「こちらこそ」
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俺達が最前線につくと、もう戦いは始まっていた。
「うわ、ネズミだらけ!」
魔族の街を襲っていたのは、『大ネズミ』の大群だった。
しかし、数が多い!
まるで絨毯のように『大ネズミ』が森から溢れだしている。
魔族の兵士たちは、『大ネズミ』を追い返そうとすでに戦い始めていたが―
余りにも数が多すぎて、少し押され気味だ。
そこへ、エレナの『雹』攻撃が炸裂し、大ネズミ絨毯の上に氷が降り注いだ!
兵士たちは、何事かと振り返り―
「「援軍だ!」」「やった、これで勝つる」
口々に歓喜の声を上げた。
どうやら、かなり切迫していたようだ。
アヤと舞衣さんは、競うように最前戦に突撃していき―
ブンミーさんは、部隊の指揮を取り始めた。
残されたヒルダと、カサンドラさん。
「ヒルダ、危ないから下がってて」
「いえ、カサンドラ様。私も戦います」
「『様』は、やめて。もう奴隷じゃないでしょ?」
「はい!
では、カサンドラさん!」
「うむ。でも、ヒルダが戦うって、どういう事?」
ヒルダは、【油の魔石】で作ったロッドを、自慢気にカサンドラさんに見せた。
「これは?」
「お兄ちゃ…セイジ様が作ってくれたロッドです。
見ててください」
ヒルダはロッドに魔力を込め始めた。
そして……
「【着火】!」
ヒルダのロッドは、煌々と燃え始めた。
そして、更に魔力を込めると―
ロッドの炎の中から、鳥の形をした炎が飛び出した。
そして、兵士たちの頭の上を飛び越えて―
『大ネズミ』の1匹に向かって上から襲いかかる。
襲いかかられた『大ネズミ』が燃え上がり、黒焦げになった。
「ヒルダ、凄い!」
ヒルダの急成長に、カサンドラさんも大喜びだ。
「私も負けられない」
カサンドラさんは、しっぽをキッとおっ立てて―
得意の【風の魔法】で竜巻を発生させ、『大ネズミ』達を蹴散らせ始めた。
「ヒルダ、ここは頼んだ。俺も前線に行ってくる」
「はい、お気をつけて!」
俺は後衛を任せつつ、アヤと舞衣さんに負けじと―
最前戦に向かった。
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後方からエレナ、カサンドラ、ヒルダの魔法攻撃が始まったことで―
最前戦は、だいぶ余裕が出てきていた。
『大ネズミ』は、数が多いものの、一匹一匹は弱く―
俺は【試練の刀】で、スパスパと倒していった。
しばらく戦っていると―
【試練の刀】が光り始めた。
何事かと思ったが―
どうやら試練が終わったらしい。
周りの状況を確認してみると、どうやらだいぶ押してきているようで、全体的に余裕も出てきている。
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アヤの所へ行ってみると―
「あ、兄ちゃん、こっちはもうダイジョブそうだよ。
ってか、敵が弱すぎて退屈だったよ」
「まあ、大ネズミだしな」
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舞衣さんの所へ行ってみると―
「舞衣さん、どうですか?」
「あ、お兄さん。ちょうどよかった」
「どうかしました?」
「兵士の人たちと一緒に戦ってて気がついたんだけど―
なんか、魔法で地面をコントロールしながら行動してるっぽいよね?
あれなに?」
「ああ、あれは、【土の魔法】で踏み込み時の踏ん張りを補助してるんですよ」
「なるほど…… ボクにもあれ出来ないかな?」
「【土の魔法】を覚える必要があるので、直ぐには出来ないかも」
「うーむ、けっこう奥が深いんだね」
今度みんなで、マナ結晶を参拝しに行ってみるか。
ヒルダの勉強もだいぶ進んでいるみたいだし、もうそろそろ大丈夫だろう。
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エレナ、ヒルダ、カサンドラさんの所へ戻ってくると―
エレナは、怪我人の治療を行っていた。
「エレナ、大丈夫そうかい?」
「ええ、怪我人もそれほど多くありませんし、大丈夫です」
まあ、怪我人はエレナに任せておけば安心だ。
ヒルダとカサンドラさんは、火と風の合体魔法で【炎の竜巻】を発生させ、『大ネズミ』を大量に葬っていた。
「「いえーい!」」
二人は、ハイタッチをして合体魔法の成功を喜んでいる。
大分暗くなった戦場に、【炎の竜巻】の光が煌々と辺りを照らしていた。
兵士たちは、夜戦に備えて、そこかしこに『篝火』を焚き始めていた。
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最後にブンミーさんの所へ行ってみた。
「ブンミーさん、戦況はどうですか?」
「セイジ殿か。
魔王様の留守中にこんなことになって、一時はどうなることかと思ったが―
みなさんのおかげで、もう大丈夫そうだ。 感謝する」
魔王は留守だったのか、道理で見ないわけだ。
戦況に余裕が出てきて、ブンミーさん達の間にも安堵の表情が見えていた。
その時―
地図上に妙な反応があることに気がついた。
なんだ?
俺達が戦っている場所から、丁度街を挟んで反対側に、一つだけ赤い点があり―
その点が、街の中へと侵入している所だった。
「ブンミーさん、街の反対側はどうなっているんですか?」
「ん? 反対側?
そちらの見張りからは、特に報告は来ていないようだが?」
どうも嫌な予感がする……
「俺は、ちょっと街の反対側を見てきます」
「うむ、こちらは大丈夫そうだから問題はない」
俺は、街の反対側へと急いだ。
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