196.言葉は通じない
舞衣さんが先代魔王の孫だと聞いて、ブンミーさんが驚きまくっていると―
舞衣さんが、俺の裾をクイクイと引っ張ってきた。
「舞衣さん、どうしました?」
「さっきから、ボクの分からない言葉で話しているけど、通訳してくれないのかい?」
「おっと、忘れてた」
俺は、インベントリから【言語一時習得の魔石】を取り出し、舞衣さんに渡した。
これは、コピーした『+2』のやつではなく、オリジナルのやつだ。
わけも分からず、魔石を受け取った舞衣さんは、魔石の光に包まれた。
「な、なんだこれは?」
「これで、話が分かるようになったはず」
「某猫型ロボットの『こんにゃく』みたいな物かい?」
「そんな感じ」
魔石をジロジロ舐めるように見入る舞衣さんを放っておいて―
俺は、ブンミーさんとの会話を続けた。
「それで、先代魔王様にお会いしたいのですが―
何処に行けば会えますか?」
「なるほど、了解しました」
ブンミーさんから先代魔王の居場所を聞き出し―
俺たちは、そこへ向かうことにした。
~~~~~~~~~~
先代魔王様の家は―
禍々しくはあるのだが、若干和風な感じの大きい屋敷だった。
「ここか~
なんか、あんがい普通の家だな」
「ここにボクのお爺さんが住んでいるのかい?」
「ええ、そうです」
「そ、そうか…」
先代魔王の家をジロジロ見ていると―
「あの、なにか御用ですか?」
若い魔族の家政婦さんが声を掛けてきた。
メイドさんではない、家政婦さんだ。
「えーと、先代魔王様に会いたいんだけど」
「旦那様に御用なのですね。
伝えてきますので、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「はい、セイジと言います。
『人族の女性の件で来た』と伝えて下さい」
「分かりました、しばらくお待ち下さい」
玄関前で、しばらく待っていると―
中から、ドタドタと足音が聞こえて、先代魔王が飛び出してきた。
「セイジ!
例の人族の娘は何処だ!?」
先代魔王様は、キョロキョロとしている。
「居ないではないか!
おのれ、セイジ!!」
興奮しすぎた先代魔王は、俺の胸ぐらを掴んできた。
「ちょっと先代魔王様、落ち着いて」
「おっと、すまん、取り乱した。
しかし、どういう事だ?
連れて来たのではないのか?」
「会いたくないそうです」
「何故だ!」
先代魔王は、また興奮し始めた。
この人こんなキャラだっけ?
「自分だけ歳をとってしまった姿を、見せたくないそうです」
「そ、そうか…… 人族だものな……
たった40年で歳をとってしまうのか……」
きっと先代魔王の中では、お婆さんは若いままのイメージだったのだろう……
「そこで、代わりにこの人を連れて来ました」
「ん? だれだそいつは」
「この人は……」
「そいつは……?」
「貴方の、お孫さんです!」
「ん?
え!? お、俺の孫!!?」
「そうです!
貴方と、例の女性の間に生まれた子供の子供」
「いや、ちょっと待て!
まだ、たったの40年……
そうか!
人族は15歳で、もう子供を産めるのか!!」
俺は、状況を整理中の先代魔王をほっておいて―
舞衣さんの背中を押して、一歩前に出させた。
「自分で自己紹介してください」
「お、おう」
舞衣さんは、更に一歩前に出て―
「河合舞衣だ。
あんたが、ボクのお爺さんか?」
「どうやらそのようだ。
魔王になった時に名を捨て―
今では『先代魔王』と、呼ばれている」
「魔王ってなに?」
舞衣さん、今更それを聞くか?
「なんだ、知らされていないのか?
ここは、魔族の国。
そして、俺はその王だった。それだけだ」
「なるほど」
今ので納得したのか?
しかし、会話がぎこちないな……
「先代魔王。あんた強いのか?」
「この国で一番強いから魔王となったんだ。
今でも一番強いぞ。
それより、お祖父様とか呼んでくれないのか?」
「ボクに勝てたら呼んであげる」
「なんだと!?」
おいおい、拳で語り合うつもりか!?
みるみるうちに、二人の殺気が膨らんでいく。
なんでこうなるの!?
「おい、孫よ。
お前、何歳だ?」
「19」
「19!?
人族の血のせいで成長が早いのか!」
「成長が早いなんて言われたの、生まれて初めてだ」
そりゃあそうだ。
「兄ちゃん、下がってようよ」
「アヤ。だが、しかし……」
「いいから!」
俺達が少し離れたところで―
先代魔王と舞衣さんは、お互いに構えをとった。
「先代魔王様、あまり無茶はしないでくださいね」
「当たり前だ。
19歳の赤ん坊に、本気など出さんよ」
「ボクは、もう大人だ!!」
その舞衣さんの叫びが、戦い開始の合図となって―
二人は同時にぶつかり合った。
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