192.ヌルヌルの……
その後、先代魔王やマサムネさんが、お酒を飲み過ぎて大暴れしたため、結婚式会場はめちゃくちゃになってしまった。
特に先代魔王様。
黒目黒髪で、昔あった人族の少女に似ているとか言って、アヤを追い掛け回し、反撃されまくっていた。
半壊状態の結婚式会場を後にした俺達は、魔王城に泊まっていくことになった。
ヒルダも含め4人の元魔法使い部隊の面々は同じ部屋になり、夜遅くまで色々語り合ったらしい。
カサンドラさん、初夜はいいのか?
~~~~~~~~~~
翌朝。
ロンド、レイチェルさん、ミーシャさんを、それぞれの街に送り届けた後―
俺たちは、『ミタの森』に行ってみることにした。
森は、街から少し歩いた所にあった。
森の入口には―
『立ち入り危険! 魔物が凶暴化中』と魔族語で書かれた看板が立っていた。
まあ、入るけどね。
と、その前に―
「ヒルダ、いいものをあげよう」
「なんですか?」
「じゃーん、【油の魔石】!」
「なんだか、この魔石、ヌルヌルしてますー」
「兄ちゃん、ヒルダちゃんに変なものを持たせちゃダメでしょ!」
「変なものじゃなくて【油の魔石】だよ」
「天ぷら食べ放題?」
「たぶん食用油じゃないと思うぞ」
「なーんだ、唐揚げ食べ放題じゃないのか」
アヤは、ほっておこう……
そんなことをしていると、ヒルダが手を滑らせて魔石を落としそうになってしまった。
「そのままだと持ちづらいか……
ちょっと待ってな」
俺は、1G銅貨を数枚取り出し、【金属コントロール】で成形して、ロッドを作成した。
そして、そのロッドの先に【油の魔石】を装着させる。
「これで、手がヌルヌルにならずに済むだろう」
「ありがとうございます」
ヌルヌルになった俺とヒルダの手は、ハンドソープと【水の魔法】でキレイにした。
「よし、では、火をつけてみな」
「は、はい」
ヒルダは、緊張した面持ちで、ロッドの先の魔石に【着火】の魔法を使用した。
ボッ!
ロッドの先の魔石は、松明のように燃え上がった。
「つ、つきました」
「よし、次は、杖の魔石に魔力を込めてみるんだ」
「はい!」
ヒルダが魔力を込めると、炎は大きく、そして激しくなった。
「す、すごく……大きいです!」
「そ、そうか……
それじゃあ、ソレを自分で動かしてみろ」
「は、はい!」
ヒルダは、燃え上がる炎を蛇のようにクネクネと動かし始めた。
「す、凄いです!」
なんか、粘土のように炎の形を変えて遊んでいる。
『火遊びをするとおねしょをする』って言い伝えがあるけど、大丈夫かな?
「ヒルダは、ソレを使って敵に攻撃するんだ。
出来るか?」
「で、でも、他に燃え移っちゃったりすると、危ないです」
「エレナが【水の魔法】の使い手だから、もしもの時はエレナが消してくれる」
「ヒルダ、私に任せて!」
「はい! エレナおねえちゃん!」
「じゃあ、私も【風の魔法】で……」
「アヤ、【風の魔法】じゃ、火が余計に燃え広がっちゃうぞ」
「……そう!
ヒルダちゃんが火をつけて、
私が燃え広がらせて、
エレナちゃんが消す!
これで完璧」
「完璧じゃねえよ!」
アヤのことは放っておいて、森に入ることにした。
道中、アヤとヒルダが風と火の合体魔法を色々と試行錯誤していたが―
勢い余って色んな所に燃え移りまくり―
エレナがいそいそと火を消して回っていた。
後でエレナは、なでなでしてあげよう。
「あ、敵が居た」
「兄ちゃん釣ってきて、私ヒルダちゃんと合体魔法の準備するから」
大丈夫かな~
「分かった釣ってくる」
俺だけ脇道にそれて、敵の反応があった地点に行ってみると―
イノシシの魔物だった。
イノシシの魔物は、デカい牙を振りかざして襲って来る。
俺は逃げるふりをして、みんなの所へ。
「釣ってきたよ」
「あ、もうちょっと待って」
仕方ない、俺が抑えておくか。
バシッ!
俺は、試練の刀でイノシシを軽く峰打ちにする。
イノシシは峰打ち一発で目を回してしまった。
けっこう弱いな。
「準備OK、兄ちゃん避けて」
俺が素早く敵から離れると―
炎の竜巻がイノシシを襲った!
周りの木々を燃やしながら、激しく燃え盛る炎の竜巻。
イノシシは真っ黒焦げになっていた……
エレナは、森林火災の鎮火に大忙し。
「やり過ぎじゃないのか?」
「テヘッ!」
「……テヘッ?」
ヒルダ、アヤの真似をするな。
バカが伝染るぞ。
エレナは、いい子なので、なでなでしてやろう。
その後も、若干やり過ぎたりもしたけれど、順調に魔物を退治していった。
倒した魔物は、ねずみ、イノシシ、狼、熊、虎など。
全部、魔物だそうなので動物虐待じゃないよ?
ヒルダはレベルが12に、【火の魔法】がレベル3になっていた。
【火の魔法】は、アヤに手伝ってもらわなくても威力のある攻撃もできるようになって来てー
こんな感じの魔法を覚えていった。
・火の玉
火の玉を飛ばして攻撃。
・火の壁
火の壁を出して、敵を怯ませる。
・火柱
敵の足元から勢い良く炎を巻き上げて攻撃。
・火の鳥
火の玉を鳥の形にしたもの。
ある程度、敵を追尾する。
「ヒルダもだいぶ魔法使いらしくなって来たな」
俺とアヤとエレナで、寄ってたかってヒルダの頭をなでなでしてやると―
ヒルダは照れくさそうにしていた。
「よし! もっと奥まで行ってみよう!」
「「「おー!」」」
しばらく森の奥を目指して進んでいくと―
開けた場所にたどり着いた。
木が生えていない草地が、野球のグランド位に広がっていた。
そして、その中央には、清らかな水がこんこんと湧き出す泉があり、そこから小川が続いている。
「キレイ!」
「お水がキレイです!」
「この草、どこかで見たことがあります」
ん? そう言えば、どこかで……
【鑑定】してみると―
あたり一面に生えている草は、全部【紫刺草】だった。
「これ、全部【紫刺草】だ!」
やっと火の魔法が使えるようになって来ました。
ご感想お待ちしております。




