191.人族の少女
「やはり先代魔王様でしたか。
40年前に日本に現れた『鬼』は」
「だからニホンなど……
40年前?
この絵の人族の少女……」
先代魔王様は、何やら考えこんでしまった。
ってか、考えこむなら、壁ドン状態を解いてから考えてくれよ!
「なるほど、あの時のあの場所が『ニホン』という場所だったのか。
それで、ニホンには、どうやったら行けるのだ?」
「自分で来ておいて行き方が分からないのですか?」
「あの時は、【緊急脱出の魔石】を使ったからな」
「それは一体どういった魔石なのですか?」
「その場から脱出できるものの、何処に転移するか分からないという魔石だ」
何だ、その危険な魔石は!
俺は【瞬間移動】が使えるから大丈夫だが……
「何故そんな危ない魔石を使ったのですか?」
「それは――」
先代魔王様は、40年前の出来事を話し始めた。
~~~~~~~~~~
「お前は悪魔族という種族を知っているか?」
「あったことはありません」
「魔族と悪魔族は、1000年以上前から戦い続けている」
エルフとダークエルフみたいなものかな?
「悪魔族は、魔族よりは力が弱いものの、卑怯な手ばかりを使い、我々を度々攻撃してきた」
悪魔族は、頭脳派なのか。
「40年前のある日―
悪魔族は卑劣にも、魔族の子どもを誘拐していきやがった」
幼児誘拐とか卑劣極まりないな。
「大規模な捜索隊を結成しようとしていたが―
俺は、皆が止めるのを聞かずに、単独で先行して助けに向かった」
「罠があったんじゃありませんか?」
「そう、悪魔族の罠だった……」
先代魔王様、ずいぶん脳筋なんだな。
「子供は簡単に助け出せた。
しかし、そこには―
何重にも罠が仕掛けられていて、子供も抱えていることもあり、流石に俺も逃げることしか出来なかった。
そしてついに、俺と助けだした子供は、沢山の罠と悪魔族に囲まれ、万事休すだ」
「それで、【緊急脱出の魔石】を使ったんですね」
「そうだ」
捕まるより、何処に飛ばされるか分からなくても、その場から逃げることを優先したのか。
「しかし、【緊急脱出の魔石】を使用中に、我々を落雷が襲った」
「落雷? 悪魔族が【雷の魔法】を使ったのですか?」
「わからん、丁度雨も降っていたし、自然の落雷だったのかもしれない」
落雷?
なにか引っかかるな。
「そして、気が付くと知らない森に居て、周りには悪魔族の姿はなく―
助けた子供も居なかった……
自分だけ、どこかに飛ばされ、あの子供は悪魔族の所へ置き去りになってしまったのだろう」
その森が、日本だったのか。
「後から聞いた話では―
捜索隊が駆けつけた時には、すでに悪魔族は撤退していて―
誘拐された子供も、結局見つからなかったそうだ」
先代魔王様の話を、周りの人達も聞き入っている。
もしかして、魔族の間では有名な話なのかな?
「俺は、見知らぬ森で、傷つき動けずにいた。
そこへ現れたのが、人族の少女だった」
その人が、舞衣さんのお婆さんか。
「少女は、俺を見るなり逃げていった。
大人を呼びに行ったのだろう。
流石にこの傷では人族にも殺られてしまうだろう。
俺は死を覚悟した。
しかし人族の少女は、たった一人で戻ってきた。
治療の道具を持ってきたのだ」
その後は、
その少女の魔法を使わない治療方法が素晴らしいとか、
その少女とヤッちゃった話とかを聞かされた。
先代魔王様……
女性陣も聞いてるんだし、もうちょっとオブラートに包もうよ。
「ところで、先代魔王様。
その場所から、どうやって戻ってきたのですか?」
「【帰還の魔石】を使ったのだ」
「え?
【緊急脱出の魔石】ではなく【帰還の魔石】?」
「なんだ【帰還の魔石】も知らんのか。
【帰還の魔石】は、貴重な魔石なのだが―
使うと1回で魔石は壊れてしまうが、最後に眠った場所に帰ることが出来る魔石だ」
「じゃあ、悪魔族から逃げる時、【緊急脱出の魔石】を使わずに【帰還の魔石】を使えばよかったのでは?」
「残念ながら【帰還の魔石】は一人用なのだ。
助けた子供を連れては帰れない」
なるほど、それで……
「それで、俺があの人族の少女と出会った森が『ニホン』なのだな?」
「はい」
「そして、お前もそこからやって来た。
その『ニホン』は何処にあるんだ?」
「俺も、魔法で行き来してるんです。
歩いてでは行けませんよ」
「ならば、俺を『ニホン』に連れて行け」
「む、ムリです。
日本に魔族が現れたら、大騒ぎになっちゃいますよ」
「ならば、その人族の少女を連れて来い!」
マジかよ!
「え、えっと……
その人に、聞いてみます」
「くれぐれも頼んだぞ!」
舞衣さんのお婆さんをここに連れてくるのか!?
来てくれるかな?
「とりあえず、写真を取らせてもらえませんか?」
「シャシンをとる? どういう事だ?」
「先ほど見せたような、精巧な絵を作成する魔法みたいなものです」
「おう、それは面白そうだ、やってみろ」
俺は、舞衣さんのお婆さんに見せるために―
先代魔王様の写真を取らせてもらった。
先代魔王様は、スマフォに映し出される自分の姿を、えらく気にってしまい。
いろんなポーズで、何枚も写真を取らされてしまった……
お婆さん、来てくれるかな?
ご感想お待ちしております。




