189.祝福の輪
舞衣さんのお婆さんから魔王の情報を聞き出した週に、一つ問題が発生していた。
ストーカー男に刺された左手の治療のため、定期的に通っていた病院で、左手が完全に治ってしまっていることに激しく驚かれた。
日の出の塔地下攻略の後、エレナに治療してもらったさいに、左手の傷も一緒に治ってしまったためだ。
レントゲンやらCTやら採血やら、細かく検査されてしまったが―
もともとだいぶ治りかけていたので、何とかごまかした。
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そして土曜日。
俺たちは、色々準備をして異世界へ向かった。
何はさておき、先ずは鍛冶屋のお爺さんの所だ。
「こんにちは」
「おう、お前か。刀なら出来ているぞ」
受け取った刀は、以前より若干軽くなっていた。
┌─<鑑定>────
│【試練の刀+1】
│試練を課すための刀
│使用者の癖を吸収し、強くなる
│能力:【刃風】の威力上昇
│レア度:★★★★
│試練:魔物討伐 0/300
└─────────
鋭さが増しているだけじゃなく―
なんか『能力』が付いてる!
『【刃風】の威力上昇』だと!?
試したい!!
「試したいのか? 顔にそう書いてあるぞ」
俺が頷くと、お爺さんは裏庭に巻藁を用意してくれた。
「行くぞ!」
10㍍ほど手前から【刃風】を飛ばすと、巻藁が斜めに斬れて、ずり落ちた。
そして、【刃風】はそのまま飛んでいき、後ろの崖にぶつかって、大きな穴を開けた。
すげえ!
「問題無さそうだな。
よし、次の試練は300匹だ。
まあ、ゆっくりやりな」
「はい!」
徐々に試練で倒す魔物の数が増えていくのかな?
流石に1日でクリアは無理そうだ。
言われたとおり、ゆっくりやっていくかな。
「ワシはこれから、知り合いの結婚式に行く準備をせねばならん。
他に用がなければ、また今度だ」
「もしかして、ブンミーさんの結婚式ですか?」
「ああそうじゃ。
何じゃ、アイツの知り合いだったのか」
お爺さんは、準備をしてから行くということだったので、俺達だけで先に、ブンミーさんとカサンドラさんの所へ向かった。
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「ブンミーさん、カサンドラさん、おめでとうございます」
「セイジ、来てくれたのか」
「セイジ、よく来た」
結婚式は、魔王城の少し広めの部屋で開催されていたが―
特に、セレモニー的なことをやるでもなく、
訪れた客人が、適当に飲んで食ってしているだけだった。
「これは、お祝いのプレゼントです」
俺は、日本から持ってきた酒とケーキを差し入れた。
酒は、日本酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、ワイン、ウォッカなど。
ケーキは二段重ねのデカいのをテーブルに置いた。
「なんだこれは!?」
「こっちのは、俺の故郷の酒です」
「あっちの白いのは?」
「あれは、『ケーキ』と言って、俺の故郷でお祝いの時に食べるお菓子です」
ケーキと酒は、他の客人達にも大好評だった。
「所でカサンドラさん、レイチェルさんとミーシャさんは呼んでないんですか?」
「うん……
あいつら遠いから呼んでない」
そうか、ニッポの街とその隣の開拓村だもんな。
連絡と移動の両方に時間が掛かるから、一週間じゃ間に合わないか……
俺は、美味しそうに料理を食べているアヤ、エレナ、ヒルダに、しばらく席を外すと断りを入れてから、結婚式会場を後にした。
そして、【瞬間移動】でニッポの街へ!
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「おうセイジ、よく来たな」
「今日は、ミーシャさんをお借りしに来ました」
「ん? どういう事だ?」
カクカクシカジカ!
「ならば、俺も行こう!」
ロンドと、ミーシャが仲間になった!
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次は、レイチェルさんの所へ!
「セイジ、よく来た。
あれ? ロンド様にミーシャまでそろって、何かあったのか?」
カクカクシカジカ!
「なるほど!
これは、カサンドラの驚く顔が見れそうだ。
私も行くとしよう」
レイチェルが仲間になった!
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3人を連れて、再び結婚式会場へ!
「ただいま、連れてきたぞ」
「ミーシャ!
レイチェル!
ロンド様まで!!」
いつも飄々としているカサンドラさんが、目を丸くして驚きまくっている。
「ほら、ヒルダも行ってあげな」
「はい!」
ヒルダは、俺に促されて祝福の和の中に飛び込んでいった。
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しばらくぶりに再結成された『魔法使い部隊』と、その上司であるロンドは、楽しそうに話をしていた。
しかし、レイチェルさんが―
「ヒルダ!
首輪は、どうしたんだ!?」
ヒルダの首に【奴隷の首輪】が無いことに気がついたみたいだ。
「おにい…セイジ様が、外してくれました」
「外した!? どうやって!!?
それで、ヒルダはなんともないのか?」
「大丈夫です、なんともありません。
それに……
セイジ様とアヤ様とエレナ様が、私を妹にしてくれたんです」
「「「「な、なんだってー!!」」」」
「しかし、セイジ……
転移の魔法も使えて―
【奴隷の首輪】まで外してしまうとは……
一体何者なんだ?」
なんか色々面倒くさそうなので―
気づかないふりをして、結婚式の料理を頬張っていた。
『カクカクシカジカ』便利な呪文だ……
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