178.三匹を斬る
閉めた扉の向こうから聞こえていた、バチバチと燃える音は、次第に消えていった。
おそらく、部屋の中の酸素がなくなり鎮火したのだろう。
しかし、中のスライムはまだ生きている。
【試練の刀】の『試練』もカウントが0のまま。
扉を開けたらバックドラフトが発生するのは目に見えているので、この部屋は諦めるしか無い。
「しかし、厄介だな」
【試練の刀】を上手く扱わないと魔物を吹き飛ばしてしまう。
そして、魔物が壁にぶつかると火が付いてしまう。
ダンジョンの壁を鑑定してみたところ、【赤燐】で出来ている壁だそうだ。
【赤燐】といえば、マッチ箱の擦る所に使われている成分だ。
つまり―
赤スライムが、マッチ棒の先端部分。
ダンジョンの壁が、マッチ箱の擦る所。
床には大量の油。
いつ火の海になってもおかしくないな……
俺は、気を引き締め直して、次の部屋を覗いた。
やはり、天井に赤スライムが張り付いている。
慎重に近づくと、赤スライムは天井から襲いかかってきた。
重い【試練の刀】を、斬ることを意識して赤スライムに叩き込む。
赤スライムは一撃のもとに真っ二つになり、
その体内から、赤い【スライムの核】が出てきた。
鑑定結果は【赤スライムの核】だ。
そして、【試練の刀】の『試練』のカウントは1に増えている。
「やっと、1匹目か……」
ぶっちゃければ、『試練』をクリアするなら、別の場所の別の魔物を倒せばいいし、
赤スライムは、ミスリル剣で倒せばいいだけなのだが…… それだと、なんか負けた気分になる。
俺は、ムキになってそのまま『試練』をこなしていった。
~~~~~~~~~~
「30匹目っと」
30匹倒した所で、
【赤スライムの核】が25個
【赤スライムの核+1】が5個
【着火の魔石】が5個
の戦利品が手に入っていた。
【赤スライムの核+1】と【着火の魔石】を落としたスライムは、他のスライムより大きいスライムだった。
ふと見ると、30匹目を倒した部屋の奥に、別の扉があることに気がついた。
これまでの部屋は、通路に繋がる扉が1つだけだったのに、ここだけ扉が2つ。
これは、期待大だな。
その扉は、少し高い所にあるため、油には浸かっていない。
扉を開けると、その奥も油は無しだった。
「やった、これから先は普通に歩けそう」
俺は、その扉の所で胴長を脱ぎ、スニーカーを履いた。
~~~~~~~~~~
扉の先は、少しだけ通路が続いていたが、正面に大きな扉がある場所で突き当りになった。
「ボスかな?」
大きな扉を開けると、小さめの体育館程度の広さの部屋だった。
そして、正面奥に階段が!
しかし、階段が向かう先は上ではなく、下。
「やっぱり地下二階もあるのか……」
俺が、そうつぶやくと―
天井から3匹のスライムが落ちてきた。
緑、赤、黒の3色で、
緑と黒は直径3㍍、赤は5㍍ほどの大きさだ。
「やっぱりボスか!
一人で倒しちゃったら、アヤが怒るだろうな~」
まあ、殺るんですけどね。
てか、100匹倒すまで帰れません!
とりあえず3匹を【鑑定】してみた。
緑のスライムは、【ムササビスライム】、
風の魔法を使い、
ジャンプの後で、ムササビのように滑空するらしい。
黒のスライムは、【闇スライム】、
闇の魔法を使い、
影に潜んで、不意打ちを仕掛けてくるらしい。
中央の赤スライムは【炎スライム】
体内の油を使って炎を吐くらしい。
炎を警戒しつつ、取り巻きから倒していくかな。
俺は先ず、ムササビスライムに向かってかけ出した。
すると、ムササビスライムが輝き、突風が俺を襲った。ムササビスライムの【風の魔法】だろう。
俺は、その突風をジャンプで躱して、そのままムササビスライムにジャンプ攻撃を仕掛ける。
ムササビスライムは、後方にジャンプして、俺の攻撃を躱した。
俺も、同じ方向にジャンプし、追いかける。
ムササビスライムは、傘を開いて空中でブレーキを掛け、滑空して追撃してきた俺を躱した。さすがムササビ。
俺は、ジャンプの勢いが強すぎて、天井まで届いてしまい、逆さまになって天井に着地した。
そして、天井から下方向にジャンプして、滑空しているムササビスライムに突撃し―
スパッ!
空中でムササビスライムを一刀両断にした。
2つになったムササビスライムと俺は、そのまま落下していく。
その時、斜めしたから【危険】を感じて、見てみると―
炎スライムが、俺に向かって炎を吐き出していた。
「こんな位置まで炎が届くのか!?」
とっさに、ムササビスライムの裏に隠れると、炎はムササビスライムごと、俺を飲み込んだ。
「熱っ!」
ムササビスライムの裏に隠れたおかげで、なんとか事なきを得たが、髪の毛が少し焦げてしまった。
無事に着地して、炎スライムと睨み合う。
「あれ? 闇スライムは?」
その瞬間、後ろから【危険】を感じて―
後ろから不意打ちをしてきた闇スライムに、振り向きざまに反撃した。
しかし、とっさの攻撃でうまくいかず、闇スライムを斬ることが出来ずに、吹き飛ばしてしまった。
部屋の奥へ吹き飛んでいく闇スライムを、ダッシュで追いかけた。
やっと闇スライムに追いつき、とどめを刺そうとした時、またもや後ろから【危険】を感じ、攻撃をキャンセルして横っ飛びした。
俺のいた所に後ろから炎が襲いかかり、炎は闇スライムを火だるまにしてしまった。
てか、炎スライムの攻撃って、さっきから同士討ちばっかりじゃないか!
火だるまになって転げまわる闇スライムにとどめを刺し、やっと炎スライムと1対1となった。
1対1になれば、こっちのもんだ。
炎スライムを、あっさりと倒し、
地下一階のボス攻略完了!!
戦利品は、
【ムササビスライムの核】、
【そよ風の魔石】、
【闇スライムの核】、
【闇強化魔石+1】、
【炎スライムの核】、
【油の魔石】、
だった。
【油の魔石】ってなんだ!?
┌─<鑑定>────
│【油の魔石】
│可燃性の油が滲み出る魔石
│魔力を込めると量が増える
│レア度:★★★★
└─────────
なんかこれ、凄くない!?
新しい魔石は、あの子に持たせるといいかも。
ご感想お待ちしております。




