177.試練
『先代の魔王』の関係者らしきお爺さんに、刀を作ってもらうことになった。
しかし―
「いい刀とは、そう簡単に作れるものではない」
「はあ」
お爺さんは大きな刀を持ってきた。
「そこでじゃ。先ずは、この刀を使ってみろ。
ほれ」
お爺さんが手渡してくれた刀を受け取ると―
おれは、両手にかかる急激な重さに耐えかねて、危うく刀を落としてしまいそうになった。
「重!!」
その無骨な刀、見た目以上に重かった。
「その刀で、魔物を100匹ほど倒して来い」
「この刀で!?
この刀は一体なんなんですか?」
「その刀は【試練の刀】といって、使用者の癖を記録する刀じゃ」
「癖を記録する?」
「そうじゃ。
その記録したお前さんの癖を元に、ワシがその刀を鍛え直す。
そして、それを繰り返すことによって、『究極の刀』へと、一歩ずつ近づいていくのじゃ」
「なんだか凄そうですね」
「おうとも」
日の出の塔の攻略のついでに使ってみるか。
とりあえず【鑑定】してみると―
┌─<鑑定>────
│【試練の刀】
│試練を課すための刀
│使用者の癖を吸収し、強くなる
│レア度:★★★★
│試練:魔物討伐 0/100
└─────────
『試練』という項目が記載されてる!
これを達成する事で強化が可能になるのか、面白そう。
俺は、お爺さんと握手を交わして、武器屋を後にした。
お代?
お代は、鍛え直す時でいいそうだ。
さて、この刀で早く、試し斬りをしたい!
~~~~~~~~~~
俺たちは、リルラを迎えにシンジュの街に戻ってきた。
「リルラただいま」
「おかえり、セイジ」
「親子水入らずでゆっくり出来たか?」
「ゆっくりも何も、今後のことなどを話し合っただけだ」
真面目だな。
貴族としての責任感という感じかな?
たまに責任感が暴走するけどね。
「それじゃ、イケブの街に帰るか」
「はい」
~~~~~~~~~~
俺たちは、イケブの街に帰ってきた。
外は、すっかり夕日に赤く染められていた。
「帰ってきてそうそうだけど。
俺は、ちょっと日の出の塔を攻略してくるから、
みんなは夕食を済ませて先に寝てくれ」
「え?
兄ちゃん一人で!?」
「セイジ様、私も連れて行って下さい」
「わ、私も、付いて行っても良いのだぞ?」
3人は、連れて行って欲しいみたいだ。
ヒルダは、何も言わなかったが、寂しそうな瞳で俺を見つめている。
「地下は、臭い水が溜まってるけど、行きたいのか?」
「あ、そうか…… やっぱいいや」
「だ、大丈夫、です」
「……」
みんな行きたく無さそうだ。
まあ、当然だよね。
「それじゃあ、行ってくる」
俺は、エレナの制止を振りきって【瞬間移動】で日の出の塔の入り口へ飛んだ。
~~~~~~~~~~
塔の入り口を守っている兵士に、もらったままになってる【立ち入り許可証】を見せて、一人、塔に潜入した。
俺は【試練の刀】を左手に持ち、
ウキウキ気分でダンジョンをスキップで進んでいった。
なにせ、新しい刀だ。
使ってみたくて、ウズウズしてたんだよね~
落とし穴と呼ばれていた、地下への階段があった部屋にやって来た。
俺は、インベントリから【胴長】を取り出し、ズボンの上から装着した。
「よし!」
気合を入れ、穴の底にめがけて【瞬間移動】で移動する。
「うをっと!」
足元が不安定だったために、ちょっと転びそうになったが、なんとか臭い水に頭から突っ込んでしまう事態は避けられた。
「先ずは、マップを確認」
地下の地図は、まだこの部屋しか埋まっていない。
赤い点が幾つか見えるが、敵の正体はまだわかっていない。
しかし、今回は刀を使ってみるのが一番の目的なので、一番近い赤い点を目指して、臭い水の中を膝くらいまで浸かりながら進んでいった。
「敵がいるのは、この扉の向こうか」
目の前には、部屋に続くと思われる頑丈そうな扉があった。
一番近い赤い点は、この扉の向こうにいる。
俺は、重い扉に付いているハンドルを回してから、ゆっくりと扉を開いた。
臭い水は、通路と同じ高さで部屋の中にも満たされていた。
まあ、水の高さが違ってたら、水圧で扉が開かなかっただろうけど。
部屋の中を覗いてみると―
中には、何もいなかった。
「あれ?
おかしいな、赤い点が表示されているのに……」
慎重に部屋の中に入ってみるが、魔物の姿は見つからない。
【水の魔法】+【情報魔法】で、水の中の敵も分かるはずなのだが……
キョロキョロ探しまわっていると―
上から【危険】を感じて、思いっきり横へ飛んだ。
上から降ってきたものは―
スライムだった。
「びっくりした!」
スライムは、赤い色をしていて、直径1㍍の球をちょっと潰した感じだ。
外で見たスライムよりデカいし、色も違う。
そいつは、臭い水に半分浸かりながら、俺に向かって進んで来た。
バシャッ!
少し手前で水から飛び出して、ジャンプ攻撃してきた。
俺は、ここぞとばかりに試練の刀を抜き、スライムに一撃‥‥
しようとしたのだが、おもすぎて上手く攻撃できない。
「くそう、重すぎだ……」
スライムの攻撃は、なんとか避けたものの、攻撃が出来ないんじゃ意味が無い。
スライムは、もう一度同じ攻撃を仕掛けてきた。
こんどは、試練の刀の重さを計算に入れ、少し早めに攻撃モーションを開始し、上手くスライムに攻撃をヒットさせることが出来た。
しかし、攻撃は当たったものの、斬る事はできず、スライムを弾き飛ばすだけになってしまった。
「試練の刀、けっこう難しいな」
俺に吹き飛ばされたスライムは、部屋の壁にぶつかって―
『ガリッ』という音を立てた。
「??
スライムなのに、なんであんな音が出るんだ?」
次の瞬間!
スライムはバチバチっという音ともに、マッチに火がつくように燃え上がった。
「ふぁ!?」
燃えながら、臭い水の中を俺に向かって進んでくるスライム。
そして、なんだかスライムが大きくなっているような~
!?
違った!
スライムの火が、臭い水に燃え移っている!?
「ヤバイ!!」
俺は、とっさに部屋の外へ飛び出し、
部屋の重い扉を思いっきり閉めた。
「あ、危なかった」
閉めた扉の向こうから、バチバチと燃える音が聞こえていた。
俺がさっきからずっと膝まで浸かっている、この【臭い水】……
鑑定してみると―
【油】だった……
最初に松明を落とした時は、よく燃え移らなかったな……
やっと塔に戻ってきました。
ご感想お待ちしております。




