176.魔族の街のお爺さん
俺たちは、魔族の街を探索していた。
物珍しさに街の様子をキョロキョロ見回しているが、
魔族の人たちも俺たちをジロジロ見ている。
人族が珍しいのだろう。
人々が行き交い、子どもたちが遊び、店には品物が溢れている。
街並みや人々の見た目は禍々しいのだが、至ってマトモな街の風景だった。
品物は、若干南国風の物が多かった。
「あれ食べてみよ~」
アヤが指差したのは、色々な具が入った真っ赤なスープだった。
辛そう。
「俺は、やめとくよ」
エレナとヒルダも首を横に振っている。
「じゃあ、私だけね。兄ちゃん、買ってきて」
いつもながら、兄使いの荒い妹だな。
人族の国の通貨であるゴールドは、この街では使えないので、ブンミーさんに頼んで両替してもらってある。
この国の通貨は『シルバ』というらしく、1ゴールド=10シルバで、10000シルバほど手元にある。
「すいません、一杯いくらですか?」
「12シルバだよ」
屋台のおばさん?に12シルバ払って、かぼちゃ位の大きさの木の実の殻の器に盛られた、真っ赤なスープを受け取った。
スープには、二本の木の棒が付いていて、おそらく箸なのだろう。
「ほら、アヤ、買ってきたぞ」
「ありがと!」
アヤは、屋台の前で真っ赤なスープを食べ始めた。
「辛ーい!!」
「言わんこっちゃねえ」
「でも、美味しい!」
「美味しいのかよ!」
アヤが、真っ赤なスープを食べていると―
屋台のおばさん?が話しかけてきた。
「あんた、人族のくせに箸が使えるんだね」
「おばちゃん、人族のことを知ってるのか?」
「おばちゃんはやめてくれよ、こうみえてもまだ100歳なんだよ」
「100歳!?」
アヤが驚いてる。
まあ、予想はしてたけど、きっと平均寿命が違うんだろうな。
「ああ、そうか、人族は50歳くらいまでしか生きられないんだっけ。可哀想に」
この世界の人族の寿命は50歳なのか。
この世界には回復魔法があるけど、地球の医学ほど人の命を救えてないのかな?
「魔族は、どれくらい生きるんですか?」
「そうさね~ だいたい200歳くらいかな」
だいたい4倍くらいか。
というと、魔族の100歳は、人族の25歳くらいかな?
やはり、舞衣さんが若すぎるのは、魔族の血を引いてる影響なんだろうな。
~~~~~~~~~~
屋台のおば… お姉さんと別れて―
俺達は、とある店にやってきていた。
「ごめんください」
「ほう、人族とは珍しい、よくこの街に入れたもんじゃ。
そう言えば、誰かが人族の商人が来ていると言っていたな」
その店にいたのは、ドワーフのお爺さんだった。
ニッポの街の『ガムド』さんも髭面でお爺さんっぽかったけど―
この人は、さらに歳を重ねてる感じだ。
「魔王様から、紹介状を貰ってきました」
「なに!? 魔王の紹介状じゃと!?」
俺は、謁見の後でもらった紹介状を、お爺さんに渡した。
「人族に、刀を作ってやれだぁ!?」
そう、魔王をおど…お願いして、魔王の刀を作った鍛冶屋を紹介してもらったのだ。
「紹介状もありますし、作ってくださいますよね?」
「……」
お爺さんは、無言で店の奥へ入っていってしまった。
かと思ったら、ひょっこり顔を出して手招きしている。
みんなでお爺さんの後を付いて行くと―
裏庭に出た。
なんかデジャブーが……
「これを持ってみろ」
お爺さんが、手に持っていた大きめの刀を、鞘から抜いて渡してきた。
受け取ると、ズシリと重い。
「……それを持つくらいの力は、あるみたいじゃな」
やっぱり俺を試そうというのか。
おうおう、やってやろうじゃないか!
今度は、巻藁を持ってきた。
「これをその刀で斬ってみろ。
言っておくが、倒すんじゃなくて斬るんだからな?
だいたい、人族の剣ときたら―
俺から言わせてもらえば、あんなのただの尖った鉄の棒だ!」
なんかグチグチ言ってる……
よほど人族の剣が気に入らないと見える。
「さあ、出来るもんならやってみろ」
OK、OK、やってやろうじゃないか。
「すいません、その鞘も貸してもらえませんか?」
「ん? 鞘? まあ良いが……」
俺は、鞘を受け取ると、刀を鞘にしまった。
「どうするつもりだ?」
俺は、鞘にしまった刀を左手に持ち、巻藁に近づいた。
腰をかがめ、刀の柄に右手を添え―
巻藁に集中する。
肉体強化、時空魔法で自分を強化し。
土の魔法で足を固め。
風の魔法で風を切り裂き。
さっ!
一瞬、俺の周りにそよ風が舞い。
俺は、回れ右してお爺さんに近寄り、刀を返した。
「セイジ様、どうして諦めてしまうのですか?」
「ん? そういうワケじゃないんだけど」
エレナが不思議な顔をしていると―
アヤが、巻藁に近づいていって、ツンツンと突いた。
すると、巻藁は斜めにズズっとズレて、コロンと上半分が転げ落ちた。
「もう斬っていたのですね!
私には、ぜんぜん見えませんでした」
お爺さんとヒルダは、目が点になっていた。
しばらく目が点になっていたお爺さんだったが―
「ぐわっはははは! これは愉快!」
急に大声で笑い始めた。
「小僧が紹介状なんてよこしやがるから、どんな奴かと思ったら。
とんだ人族だ!」
どうやら、俺のパフォーマンスは喜んでもらえたみたいだ。
しかし、魔王を小僧呼ばわりするこの爺さんは、一体何者なんだろう?
「魔王と同等の刀という話じゃったが、お前さんにあんな『おもちゃの刀』じゃもったいない、
先代魔王様に作ったのと同等の刀を作ってやるぞ」
「あの刀が『おもちゃ』なんですか?」
「魔王なんて名乗っちゃいるが、先代の魔王様に比べたらガキもいいところだ。あんな奴には『おもちゃの刀』で十分じゃ」
どうやら、このお爺さんは、『先代の魔王』の関係者みたいだな。
魔族の街並み見てみたい。
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