175.ヒルダの握手会
ブンミーさんがとんでもないことを言い出した。
「俺とカサンドラは、結婚することになったんだ」
「「「えーー!!!」」」
「そんなに驚くことはないだろう?」
「だってカサンドラさんは、ついこの間ここに来たばっかりですよね?」
「カサンドラが俺に会いに来たその日にものにした」
なんという素早さ、ブンミーさん恐るべし。
「結婚式は来週だ、セイジ殿とお仲間も出席してくれ」
「来週!? ずいぶん早いな」
「結婚が決まったら、素早く結婚式をしないと幸せになれないからな」
おそらく、魔族の風習なのだろう。
しかし、ここまで急だと色々準備が間に合わない気がする。大丈夫なんだろうか?
「ところでセイジ殿、すこし付き合って欲しいのだが」
「別に構いませんが」
俺が、ブンミーさんの口車に乗って、のこのこ付いて行くと―
俺たちは、300人程の魔族の兵士たちに囲まれてしまった。
「お前は!
アメとか言うものをくれた、人族の子ではないか!
あの時のアメはもうないのか?」
どうやら、ヒルダにアメをもらった人たちらしい。
ヒルダは、困った顔をしていた。
「ヒルダ、これを」
「セイジ様!」
俺は、用意してきた飴の袋を、ヒルダに手渡した。
飴はいつも大量に消費するので、それなりの量を用意しておいたのだ。
ヒルダは、元気よく飴を魔族の兵士たちに配り始めた。
「おお、これだこれ! 本当にもらって良いのか?」
ヒルダは大きく頷いて飴を手渡した。
「ありがとう、人族の子。
あ、そうだ! 代わりにこれをあげよう」
兵士は、飴のお礼に果物をヒルダに手渡した。
おそらく魔族の国の果物なのだろう。
「俺も、これをあげるぞ」
「じゃあ、俺はこれを」
魔族の兵士たちは次々にヒルダに色んな物を手渡している。
果物、木の実、薬草、キノコ、民芸品。
ヒルダは色々なものをもらい、両手に持ちきれなくなると、俺の所へ持って来る。
俺が、品物を受け取ると、また兵士たちに飴を配るのを繰り返していた。
まるで、アイドルの握手会のようだった。
「兄ちゃん、この果物美味しいよ~」
アヤは、ヒルダへの貢物をもう食ってるし……
「セイジ様、これを」
エレナも何やら手に持っている。
エレナもアヤの食いしん坊が伝染ったのか?
しかし、エレナが俺に手渡したものは、何かの草だった。
「エレナ、この草がどうかしたのか?」
「それ、【紫刺草】じゃありませんか?」
「なに!?」
俺は、その草を【鑑定】してみた。
┌─<鑑定>────
│【紫刺草】
│穢を払う力を持つ薬草
│魔除けとして使われる事がある
│レア度:★★★
└─────────
「ほんとに【紫刺草】だ」
「なんだ、セイジ殿は【紫刺草】が欲しいのか?」
ブンミーさんが聞いてきた。
「ええ、薬の材料に使いたいんです」
「もっと必要なのか?」
「そうですね、100本以上は欲しいです」
俺の予想だと【呪い治癒薬】を100本作成すれば、【薬品製作】スキルをレベル5にすることが出来るはず。
「おーい、みんな聞いてくれ。
セイジ殿が【紫刺草】を探しているらしい。
持っている奴はいないか?」
ブンミーさんが兵士たちに聞いてみると、29人の兵士が【紫刺草】を持っていたらしく、譲ってくれたので、
合計30本の【紫刺草】を手に入れることができた。
「あとは店などを探してみます」
「うーむ、ちょっと難しいかもしれないな」
「どうしてですか?」
「人族の商人が買っていってしまったから、たぶんもうほとんど残っていないと思うぞ」
そう言えば、ライルゲバルトが貿易品だと言っていたな。
「【紫刺草】は、どこかで採ってきたり出来ないんですか?」
「『ミタの森』に行けば、それなりに見つかると思うが、最近は魔物が凶暴化していて、なかなか取ってこれないんだ」
「魔物凶暴化、森のダンジョン、キタコレ!」
アヤが、テンションを上げている。
時に落ち着け!
「『ミタの森』に行くつもりか?
お前たちなら大丈夫だと思うが、気をつけるんだぞ?」
「まあ、今回もらった【紫刺草】を全部使い切ってしまったら行ってみます。
その『ミタの森』は何処にあるんですか?」
「この街から西にしばらく行った所だ」
俺たちは、【紫刺草】と新たな情報を得て、ブンミーさんと握手を交わし、その場を後に……
後にしようとして、一つ聞き忘れたことを思い出した。
「最後に一つだけ、お聞きしてもよろしいですか?」
「ん? なんだ?」
別に、細かいことが気になってしまう悪い癖があるわけではない。
そう、舞衣さんのお爺さんの件だ。
「おそらく40~50年くらい前、急に消えてしまったか、若しくは知らない場所に飛ばされて戻ってきた人はいませんか?」
舞衣さんのお母さんの生まれた年はそれくらいだと思うんだけど、情報が漠然としすぎているよな。
「変な質問だな……
うーむ、特に思い当たる事はないな」
ブンミーさんは、兵士たちにも聞いてくれたが、結局手がかりは掴めなかった。
ちょっと予定が詰まりすぎてきてしまった。
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