173.リルラの聖水
土曜日、俺達はニッポの街に来ていた。
ヒルダを預かったことを、ミーシャさんに報告するためだ。
「ヒルダ、これをあげます」
ミーシャさんは真っ赤なリボンを、ヒルダの胸の中央辺りに付けてあげた。
「これで可愛くなった。
この可愛さでセイジを誘惑して、
そして、タップリかわいがってもらいなさい」
「はい!」
なんか変なことを言ってるんですけど……
「私もロンド様に可愛がられるように頑張るから、どっちが先にものにするか競争だよ」
「はい!」
ミーシャさん、ヒルダに変なことを吹き込まないように!
レイチェルさんのナイフ。
カサンドラさんの猫耳フード。
ミーシャさんのリボン。
これで、元魔法使い部隊の装備一式が揃ったな。
ヒルダは、真面目な顔をして決意を新たにしている。
頑張れヒルダ、
君の冒険は、まだ始まったばかりだ!
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ミーシャさんの所を後にして、途中で、薬草などを買ってから、次はリルラの所へやって来た。
「セイジ待ちかねたぞ、さっそく日の出の塔へ行こう!」
リルラはそんなにダンジョンに行きたかったのか。
しかし、俺にはまだやることがある。
「悪いけど、今日は別の用事があるんだ」
「なんだ? 私に出来る事ならなんでも言ってくれ」
リルラはなんだか、やる気に満ち溢れているな!
「実は、聖水が欲しいんだ」
「セ、セイスイ!?」
リルラは聖水と聞いて、何やら挙動不審になっている。
聖水に対してトラウマでもあるのかな?
とりあえず、事情を話してみよう。
「【呪い治癒薬】を作りたいのだが、材料がなかなか見つからなくって、困っているんだ」
「へ? なんだ、そっちの『聖水』か」
「そっちの?? リルラは何と勘違いしたんだ?」
「いや! べつに、その……」
リルラは、顔を真赤にして俯いてしまった。
変なやつだな。
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薬作り用の道具一式を、リルラの前に並べた。
「どれも透き通っていて、なんとも凄そうな道具だな。
これで聖水…を作るのか?」
「聖水の前に、【薬品製作】のスキルを上げてもらう必要があるんだ。
リルラにとっても、覚えていて損はないと思うんだが。
どうだい? やってくれるか?」
「ああ、こんな凄そうな道具も使ってみたいしな」
先ずは、【体力回復薬】だ。
リルラに、手取り足取り教えた。
「薬作りも結構楽しいな!」
リルラは、初めて作った薬を大事そうに眺めている。
そんなに嬉しかったのか?
リルラを【鑑定】してみると、【薬品製作】を習得できていたので、
今度は【病気軽減薬】だ。
【病気軽減薬】の材料である【紫草の葉】と【氷草の葉】は、ずっとインベントリの肥やしになっていたやつだ。
やはり、【病気軽減薬】を3回作っただけで、リルラの【薬品製作】レベルが2に上がった。
次は【火傷治癒薬】だ。
【薬草】と【氷草の葉】を使って10回ほど完成させた所で、リルラの【薬品製作】レベルが3に上がった。
「【薬品製作】は、面白いな!
しかも、こんなに簡単だったとは」
多分それは、道具が良いせいだと思うぞ。
満を持して【聖水】の出番だ。
【聖水】は【魔力水】に【光の魔法】を込めることで出来上がる。
そして、【魔力水】は【蒸留水】に【回復魔法】を込めることで出来上がる。
【蒸留水】は、普通の【水】に【水の魔法】の【浄化】を掛けることで出来上がる。
つまり……
水、回復、光の魔法さえあれば、普通の【水】から幾らでも【聖水】が作れるということだ。
俺が【水】から【蒸留水】を作り。
エレナが【蒸留水】から【魔力水】を作り。
リルラが【魔力水】から【聖水】を作ると言う流れ作業だ。
ヒルダは、そんな俺達のために美味しいお紅茶を淹れてくれていた。
アヤは……
ヒルダが淹れてくれた紅茶を飲みながら、俺が持ってきたケーキを、美味しそうに食べていた。
お前は何をしている!
リルラのMP回復を兼ねて、みんなでケーキ休憩をすることにした。
うかうかしていると、アヤに全部食われてしまう。
「なんだこれは!? 甘くてふわふわで……
口の中でとろける!!」
リルラも女の子なんだな~
ケーキを食べながら、瞳がハートマークになってる。
「ほら、リルラ。
ほっぺにクリームが付いてるぞ!」
俺が、リルラのほっぺについたクリームを拭って、もったいないので食べちゃうと……
「あ…… ありがと……」
急に顔を真赤にして下を向いてしまった。
ほっぺにクリームが付いてたことが、そんなに恥ずかしかったのかな?
ケーキ休憩を挟んで、聖水づくりを再開し、
聖水が30個出来上がった所で、リルラの【薬品製作】レベルが4に上がった。
これくらいあれば、十分だろう。
「リルラ、ありがとう。助かったよ」
「い、いや、これくらい、お安い御用だ。
私の聖水…が欲しくなったら、いつでも言ってくれ」
「ありがとう」
「これからどうする? 日の出の塔に行くのか?」
「いや、【呪い治癒薬】のもう一つの材料の【紫刺草】を探したい。
リルラは、心当たり無いか?」
「私はそういう事は分からないが……
お父様なら知ってるかもしれないな」
「ライルゲバルトか、会いに行ってみるか」
「今から行くのか?」
「ああ、そのつもりだけど」
「私も連れて行ってくれないか?」
「いいぞ。でもこの街の事は良いのか?」
「今日一日くらい平気だ」
戦争からずっと親子で別の街で過ごしてて、しばらく会っていないんだろう。
往復することになるけど、まあいいか。
聖水は飲んだりしてはいけません。
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