171.舞衣さんの奥の手
「ちょっ!? 舞衣さん、何をするんですか!」
俺の鼻先を、舞衣さんの回し蹴りが、かすめて行った。
「うわ! 危ない!」
今度は、足払いをして来た。
その後も、蹴りや拳が絶え間なく飛んでくる。
流石舞衣さん、凄まじい速度の連続攻撃だ。
攻撃のキレと速度は、魔族王より上なんじゃないか?
あんなにリーチが短いのに、攻撃は何故か遠くから届く。どうなってるんだ?
しばらく舞衣さんの攻撃を避け続けていたところ、舞衣さんは一旦距離をとって―
「流石、アヤくんのお兄さん。
一発も当たらないとは……」
「舞衣さん、もう終わりにしましょう。
引き分けってことでどうですか?」
「こんな面白い戦いを、途中で止めれるわけない!」
そう言うと、舞衣さんが―
消えた!?
次の瞬間、後ろから『危険』を感じ、振り返りながら横に避けると―
後ろから舞衣さんの飛び蹴りが飛んできた。
「この技まで避けるとは……
お兄さんは、後ろに目が付いているのかい?」
そんなことをいいながら、舞衣さんがまた消えた。
今度は、真横から『危険』を感じたが、その時にはもう舞衣さんの拳が、目の前にまで迫ってきていた。
避けられない!
パン!
「これはお兄さんでも、避けられなかったみたいだね」
舞衣さんの拳は、俺の手のひらで受け止められていた。
ガードされても、避けられるよりは嬉しかったらしく、舞衣さんは、どんどん攻撃してくる。
パン!パン!パン!
小気味いい音が連続して鳴り響く。
しかし……
物凄いキレのいい攻撃ではあるものの……
少し軽い。
「言いたいことは分かってるよ。
ボクの攻撃が軽いって言いたいんだろ?」
まあ、軽いって言っても、それほどでもないし、
軽さを補って余りある程のキレもある。
そこまで気にすることもないと思うんだけど……
「でもね、このなりじゃ仕方ないだろ?」
舞衣さんは、少し悔しそうな顔をしている。
「ボクの母さんも似たような感じだし、きっと遺伝なんだろうさ」
舞衣さんの母さんか…… 見てみたいかも。
「でも、ボクだって、何も対策してないわけじゃないんだよ?」
「へ!?」
舞衣さんは、漫画の主人公が何かの力を溜めるような感じの構えを取り……
マジで、何かの力を溜め始めた。
違う。あれは、魔法だ!
舞衣さんが、何かの魔法を使っている。
舞衣さんが何かの魔法を自分に掛け終わると―
ニヤリと微笑んだ。
「さあ、ボクの本気を見せてあげるよ!」
ズドン!!
舞衣さんの正拳突きを受け止めると、衝撃が体の芯に響いた。
なんだこれは!? さっきまでとは明らかに違う。
舞衣さんの激しい攻撃は、なおも続く。
しかも、徐々に攻撃の威力が増してきている!?
激しい連続攻撃の後、舞衣さんは……
渾身の力を込めた一撃を俺に放った。
ズドオォン!
激しい衝撃が体の芯を貫き、骨の軋む嫌な音がした。
痛みに耐えかね、その場に倒れ、動けなくなってしまった…… 舞衣さんが……
「舞衣さん、大丈夫か!?」
「ボクの負けだ、奥の手まで出してこのザマとは……」
公園の広場で倒れている舞衣さんの頬を、涙が一滴こぼれ落ちた。
よく見ると、舞衣さんの手足が腫れて赤くなっている!
「舞衣さん、手と足が!?」
「あの技は反動が大きいから使っちゃダメだって、母さんに言われてたんだけどね。
ボクの攻撃が通用しなくて、ついムキになってしまった……」
舞衣さんは、痛そうにしている。
マズイ!!
こんな時は……
エレナだ!!
俺は、舞衣さんを抱きかかえて、家に向かって走りだした。
しかし、この状況……
見られたら間違いなく捕まる……
そんな心配をしていると―
行く手にお巡りさんが!!
マズイ!!!
こんな時に限って!!
俺は、とっさに自販機の陰に隠れてしまった。
「お兄さん、どうしたんだい?」
「しー!」
お巡りさんが、徐々に近づいてくる。
もうダメだ!
仕方ない、あれを使うしか無いか。
俺は【夜陰】の魔法を使って姿を消し、お巡りさんの横を駆け抜けた。
「なんだいこれは!? 体が消えてないかい!?」
驚く舞衣さんに、俺はニッコリ微笑みかけた。
手足の自由を奪われて、
30歳DTに抱きかかえられ、
涙で頬を濡らしている幼女を―
自宅へ連れ込むことに成功した。
もう完全にやばい人だ。
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