015.妹来襲 ☆
トイレ危機を乗り越えた俺達は、リビングに戻ってお茶の続きを楽しんでいたのだがー
ピンポーン!
「な、何の音ですか!?」
エレナは、インターホンの音に驚いて、俺に抱きついてきた。
「大丈夫だよ、あれは呼び鈴の音だから。誰か来たのかな? ちょっと出てくる」
「は、はい」
玄関の扉を開けるとー
「来ちゃった」
「なんだお前か、何しに来たんだ?」
「ひどーい、何よその言い方」
「てか、来るなら来るって言えよ」
「言ったし!」
「聞いてないよ」
「昨日、電話したけど出なかったでしょ? 携帯の電源切って、何処に行ってたの?」
「昨日?」
ああそうか、昨日は異世界に行ってたんだ。電波が届くはず無いよな。
「わるいわるい、電源切ってたんだ」
「じゃあ、メールも見てないの?」
「メール? わるい、メールも確認してなかった」
「ほらー 私は悪くないもん。そのメールに、今日来るって書いたんだから」
『あのー、どなたがいらしたんですか?』
しびれをきらせたエレナが、リビングのドアから顔を出していた。
「あ、あ、あ… あの子だれ!!?」
「まあ、落ち着け」
「おち、おち、落ち着けるわけ無いだろ!!」
『セイジ様?』
『ごめんごめん、ちょっと待ってね』
「今の言葉なに!?」
「え? 言葉?」
「外国語みたいなので、あの子と話してたでしょ!」
しまった、エレナとは無意識の内に【ドレアドス共通語】で話をしていたのか。
「えーと、ご紹介します。この子は、ドレアドス王国のお姫様で、エレナ姫様」
『そして、このうるさい奴は、丸山 アヤ、俺の妹だ』
アヤは現在18歳で、東京の短大に合格し、もうすぐ通い始める。俺のところに来たのは、ここから短大に通うためだ。もうすぐ来るとは聞いていたが、すっかり忘れていた。
「あおれあどす王国? お姫様? 兄ちゃん、頭おかしくなった?」
「いや、ホントだって」
『セイジ様の妹君だったのですね、髪も目もセイジ様と同じ色で、そっくりですね』
いやいや、日本人はだいたい同じ色なんですけど。
「兄ちゃん、この子の話してる言葉って、何処の言葉?」
「【ドレアドス共通語】だよ」
「聞いたことがないんですけど」
「えーとね、異世界の国の言葉だから」
「……」
「なんだよ」
「さっきから、お姫様とか異世界とか、変なことばっかり言って、何かごまかそうとしてるでしょ?」
「ごまかすって何をだよ」
「例えば、この子をどこかから、誘拐してきたとか!」
「まあ、誘拐って言えば誘拐だな」
「!!?」
アヤは、携帯を取り出して、何処かに電話をかけようとしている。
「どこに電話するんだ?」
「警察」
「ちょっと待ったー!!」
「電話されたくないんだったら、自首する? 私も警察まで付き添ってあげてもいいよ?」
「ちょっと待ってください、アヤさん」
『何をお話しているのか分かりませんが、お二人は仲がよろしいのですね』
「と、とりあえず、こんな所では何なので、上がっていただけませんか?」
「まあ、そうね」
「で、ホントの事をいいなさい!」
アヤは俺の対面に。
『私、何かまずかったですか?』
エレナは俺の横に座って、会議の真っ最中だ。
「なあ、アヤ」
「なによ!」
「俺が【瞬間移動】の能力があるって言ったら、信じる?」
「バッカじゃないの! まだふざけるつもり?」
『これからアヤを説得してくるから、エレナはちょっと待っててくれ』
『は、はい』
俺はアヤの手を掴んだ。
「な、なによ!」
「【瞬間移動】!」
俺とアヤは、実家のリビングへ移動していた。
「ふぁっ!?」
「ここはどこだ?」
「実家……」
「信じたか?」
「う、うん」
「あら!? セイジとアヤ、いつ帰ってきたの?」
ヤバイ、母さんに見つかった!
「もう、帰ってくるなら言ってよ、ご飯の支度とかあるんだから。ちょっと待ってて、買い物行ってくるから」
母さんは、買い物に出かける準備をしに、リビングから出ていった。
「この隙に、戻るぞ」
「え、うん」
「【瞬間移動】!」
「セイジ、アヤ、何か食べたいものはある? あれ? セイジ、アヤ! い、いない…… そうよね、セイジもアヤも、今は東京に居るのよね… 私、疲れてるのかしら?」
俺とアヤは戻ってきた。
『ただいま』
『おかえりなさい』
「つまり、俺は異世界に行って、【瞬間移動】の能力を身につけて、お姫様を悪いやつから助けるために、誘拐してきた。分かった?」
「う、うん…… わ、わかった」
『どうですか? 説得出来ました?』
『ああ、説得出来たよ』
「もう、さっきのは分かったから、二人で私の判らない言葉で内緒話しないでよ!」
「内緒話じゃないよ」
あーもう、面倒くさい。この通訳状態、なんとかならないかな~
ピコン!
そうだ! 【言語一時習得の魔石】を使えば。
俺はずっと持ってた【言語一時習得の魔石】を、エレナに渡した。
「そうでした、これがあれば、セイジ様の国の言葉が分かるんでした」
「あ、日本語!」
「アヤ様、初めまして。わたくし、エレナ・ドレアドスと申します。よろしくお願いします」
「わ、私はアヤよ、よろしく」
「セイジ様には、牢屋に閉じ込められてしまっていたところを、助けていただきました」
「う、うん」
「誤解が解けたみたいで、よかったよかった」
「えーと、エレナちゃん」
「はい、なんでしょう?」
「ちょっと、私の隣に来てくれる?」
「は、はい」
エレナは、とことことアヤの隣に歩いて行き、アヤに言われるがまま、隣に座った。
「私ね~」
アヤが何やら悪い顔をしている。
「こんな妹が、欲しかったの!」
「きゃっ! あ、アヤ様! な、なにを!」
アヤはエレナに抱きついて、なでなでし始めた。エレナはアヤに急に抱きつかれて、パニックに陥っていた。
まあ、二人が仲良さそうなのはいいけど、この先、どうなることやら……
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