170.幼女と夜の公園で
俺は、女の子たちを連れて焼肉屋に来ていた。
りんごの事件解決をみんなで祝うパーティだ。
道中ヒルダは、初めて見る日本の風景に目を丸くしていたが、エレナが手を繋いでくれていたので、迷子になるようなことは避けられた。
「さあ、俺のおごりだ。遠慮しないでなんでも食え~」
「「わー!!」」
一度こんな風に、大盤振る舞いをしてみたかったんだよね~
百合恵さんが頼んだコーラをヒルダに飲ませて、炭酸に驚いて飲み込めなくなってしまい、大変だったり。
舞衣さんが、カルビばっかり食べてたり。
りんごが、手を怪我している俺の代わりに、甲斐甲斐しく食べさせてくれたりした。
「「ごちそうさまでした」」
かなりの金額になったが、社長からだいぶ貰っているので、まったく問題ない。
帰り道、アヤ達を先に帰らせ、
俺は、舞衣さん、百合恵さん、りんごを駅まで送っていった。
「あ、そうだ。
3人には、これを渡さなくちゃいけなかったんだ」
俺は、アクセサリをかばんから取り出して3人に渡した。
「あ、これ私がデザインしたアクセサリ」
金具を用意してもらっていたのだが、事件で有耶無耶になっていたんだよね。
3人共大喜びし、舞衣さんと百合恵さんは、お互いにアクセサリを付けあいっ子して―
りんごには、俺が付けてあげた。
「セイジさん、ありがとうございます」
「デザインさえしてくれれば、幾らでも作るから言ってくれ」
「はい!」
材料は銀貨を電気分解するだけだし、このりんごの笑顔に比べたら安い安い。
「新しいデザインが出来たら、また来ますね」
「アヤちゃんをペロペロしに、また来ますね」
おいこら、百合恵さん!
「また後で……」
ん? また後で?
舞衣さんは何を言っているんだろう?
まあいいか。
~~~~~~~~~~
3人を見送って、【瞬間移動】で家に帰ろうとしたところ。
何故か視線を感じたので、しばらく歩いて様子を見ることにした。
しかし、その気配は、ずっと付いてくる。
一体どういうつもりなんだろう?
俺は、人気のない夜の公園に足を踏み入れた。
公園の中央の広場で俺は立ち止まり―
「いつまでも隠れていないで、出てきたらどうですか?」
俺が、そう言うと―
木の影から幼女が一人、姿を表した。
「やっぱり、気がついていたんだね」
舞衣さんだった。
「百合恵さんとりんごと一緒に、帰ったんじゃなかったんですか?」
「あの子達とは方向が逆でね。途中で別れてから、お兄さんを追いかけてきたんだ」
「ほうほう、それはまた、どういうご用件で?」
「2つほど、お願いがあるんだ」
「他の人に聞かれたら困るお願いなんですか?」
「まあね」
そう言うと、舞衣さんは空手の構えをとった。
そして、殺気のようなものが舞衣さんを包んでいく。
俺が、とっさに距離を取ると―
舞衣さんの【正拳突き】が、火を吹いた。
『火を吹いた』というのは、比喩表現ではなく、本当に火が出たのだ。
とうとう、アクセサリが無くてもその技が出せるようになってしまったんですね。
「【爆熱正拳突き】……」
そう、『魔法少女・シィ』のアニメの中で、『炎の魔法少女ラン』が使う、必殺技だ。
「そう、【爆熱正拳突き】。
お兄さんは、あまり驚かないんだね」
「驚いてるさ。まさか、そんな技が使えるなんて」
「驚く方向性が違うんじゃないかい?
ボクがこの技を使うことに驚くんじゃなくて、
普通は、この技そのものに驚くところだよね」
ギクッ!
「お、驚いてるさ。
なんで、火ガ出ルノカナ~」
「お兄さん、嘘が下手だね」
舞衣さんは、クスリと笑った。
「この現象について、何か知っていることがあれば、教えてほしいんだけど…… 教えてはくれないのかな?」
「お、俺は、ナニモ知ラナイヨ~」
「それなら仕方ない」
よかった、諦めてくれたのか。
「じゃあ、2つ目のお願いだ」
「まだ何かあるの?」
「ボクと、戦ってくれ」
「はぁ!?」
「前からお兄さんとは、戦ってみたかったんだ」
「そんなことをおっしゃられても、俺は普通のサラリーマンですよ?」
「アヤくんも強いけど、お兄さんはもっと強いでしょ?」
「いえいえ、そんな事はありませんよ」
「どうしても戦ってくれないのかい?」
「舞衣さんと戦っている所を見られたら、警察に通報されちゃいますよ」
なにせ舞衣さんは、見た目はどう見てもJSだからな~
「じゃあ、こんなのはどうだい?
ボクに勝てたら何でも一つ言うことを聞くよ?」
「いやいや! 女の子が、そんなことを軽々しく言っちゃダメでしょ!」
「やっぱり、ボクに勝てる自信があるんだね?」
しまった!
「どうやら図星らしいね。
じゃあ、ボクが勝ったら、【爆熱正拳突き】の件、話してもらうよ」
舞衣さんは、そう言って―
有無を言わさず―
襲いかかってきた。
結局戦うことに……
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