168.エレナとヒルダの家事手伝い
アヤの飛び蹴りを二度も食らって、エレナに復活させてもらった俺は、ヒルダに【追跡用ビーコン】を取り付けてから、急いで出社した。
会社では、真面目に仕事をこなしつつ、いつもの様にエレナたちの観察を開始した。
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「ヒルダ、こっちへ来て下さい」
「はい、エレナ様」
エレナは、ヒルダのことを呼び捨てにしているのか。
まあ、奴隷に対する態度としては当然なのだろう。
アヤは、もう短大に行ってしまって、エレナとヒルダだけみたいだ。
「これから、あなたが汚してしまったパジャマの、お洗濯をします」
「は、はい……」
厳しい態度のエレナも新鮮だな。
「本当であれば、『洗濯機』というもので洗うだけなのですが、ヒルダのパジャマはそのままでは洗えないので、先に水洗いしましょう」
「はい」
エレナとヒルダは、お風呂場にパジャマを持って行き、洗面器にお湯をためて何度か水洗いをしていた。
へー、エレナも洗濯をちゃんとやれるんだな~
「今度は『洗濯機』を使います」
「はい」
「先ずは、ここに洗濯物を入れて―」
「エレナ様、私のものも一緒に入れてしまうのですか?」
「セイジ様から、なんでも一緒にするように言われています」
「は、はい」
「洗濯も一緒にしますので、いつも身綺麗にしておくように」
「はい!」
エレナは、素直に言うことを聞くヒルダに対し、ニッコリ微笑みかけている。
態度は厳しいけど、エレナはやっぱりエレナだな。
「そして、このボタンを押すと―」
エレナが、『スタート』と書かれたボタンを押すと、洗濯機が動き始めた。
ヒルダは、びっくりして尻もちをついてしまった。
「大丈夫ですか?」
「は、はい、すいません」
「後は、この絵と同じ分量の洗剤を入れて、蓋を閉めたら、洗濯が終わるのを待つだけです」
「は、はい」
ヒルダにはちょっと難しいんじゃないだろうか、大丈夫かな?
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「次は、お部屋のお掃除をします」
「はい!」
「先ずは、これを使います」
「これは何ですか?」
「静電気を使った、ホコリ取りだそうです」
「静電気?」
「静電気とは、すごく弱い雷の魔法なんだそうです」
「魔道具なのですか!?」
魔道具じゃないし!
「次に、掃除機を使います」
「その、杖に何かがくっついた物が掃除機ですか?」
「そうです、このスイッチを入れると―」
エレナがスイッチを入れると、掃除機が唸りを上げて動き出した。
「うわ!」
ヒルダはまた尻もちをつきそうになったが、今度はなんとか耐えたみたいだ。
「ヒルダ、杖の先に手を近づけてみてください」
「は、はい」
ヒルダは、エレナの言うとおりに手を近づける。
「か、風が、杖に向かって吹いています」
「そうです、この風の力を利用して埃を吸い込みます」
「す、すごいです」
ヒルダは、さっきから驚いてばかりだ。
まあ、無理も無いけど。
エレナはホコリ取り、ヒルダはエレナの指示通りに、掃除機を使って各部屋の掃除を始めた。
ヒルダは、掃除機が楽しいらしく、鼻歌を歌いながら掃除をしていた。
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しばらくすると、洗濯終了を知らせる電子音が鳴り響いた。
「エレナ様! い、今の音はなんですか!?」
「ヒルダ、慌てなくても大丈夫ですよ。
あれは洗濯が終わった音です」
まあ、電子音を初めて聞いたら驚くよな。
二人は、洗濯物をカゴに入れ、ベランダで干しはじめた。
世界地図が描かれた布団は、すでに干してある。
しかしヒルダは、ベランダから見える風景が気になって仕方ないようだ。
「エレナ様、あの物凄い速度で走っている鉄の塊は何なのですか?」
「あれは、車と言う乗り物です。中に人が乗っているのですよ」
「あれの、中に…… 凄いですね!」
「あれよりも大きな、バスや電車と言う乗り物もありますよ」
「こ、怖くないのですか?」
「私も最初は怖かったですが、とっても安全な乗り物なんだそうです」
ヒルダ、風景を眺めるのに夢中になって、手が動いてないぞ~
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洗濯と掃除が終わり、お昼の時間になった。
「それではランチを作りましょう」
「はい!」
ヒルダは元気いっぱいに返事をした。
きっと食いしん坊なのだろう。
どうやら二人は、ミートソースパスタを作るみたいだ。
「先ずは、大きなお鍋に水をはります」
エレナは、何故か水道水ではなく【水の魔法】でお鍋に水をはった。
「エレナ様、【水の魔法】もお使いになられるんですね。すごいです!」
エレナは、嬉しそうに微笑んでいる。
いいところを見せようとして、わざと魔法で水を出したんだな。
エレナにも、こんな『おちゃめ』な一面があったのか~
「それでは、火を点けます」
エレナは、ガスコンロに火をつけた。
「火がつきました!!
これはどうなっているんですか?」
「燃える空気が出てくる仕組みになっているそうです」
「空気が燃えるんですか!? すごいです!!」
ヒルダは、ガスコンロの炎をずっと見つめている。
そんなに近づくと、前髪が焦げちゃうぞ!
エレナは、ミートソースの缶詰の蓋をちょっとだけ開けて、小さいお鍋で湯煎し始めた。
「ヒルダ、お皿を用意して下さい」
「はい!」
エレナは、茹で上がったパスタのお湯を【水の魔法】で流しに捨て、ある程度軽くしてからザルに上げ、水気を切ってからお皿に盛りつけた。
ミートソースの缶詰は、やけどしないように鍋つかみで取って、お皿に盛りつけたパスタの上に半分ずつかけて、仕上げにパルメザンチーズを振って出来上がりだ。
更に、ロールパンとミルクも用意して二人で美味しそうにランチを食べている。
おっと、俺も昼休みに行かないと。
俺も、会社の近所のパスタ屋さんに行き、エレナとヒルダの楽しそうなランチ風景を見ながら、俺もパスタを頂いた。
二人だけだと、大丈夫なのかちょっと気になってしまいそう。
ご感想お待ちしております。




