166.日本の食卓
俺達は、ヒルダを連れて日本に帰国した。
ヒルダは、うちの玄関の様子にビビっている。
「セイジ様、ここは何処かのダンジョンですか?」
「ここは俺達の家だよ」
「……」
カルチャーショックというやつか。
思えばエレナが始めてきた時もこんな感じだったっけ。
電気も、玄関で靴をぬぐ事も―
そして、窓から外の景色を見た時、ヒルダは動かなくなってしまった。
「ヒルダ、大丈夫か? おーい」
ダメだ、放心してしまっている。
しばらく放心していたヒルダが、やっと立ち直り、ゆっくりと振り向いて―
「あの、あの、もしかして、ここは、『神様の国』なのですか?」
何故そうなる!?
「違うよ、ここは日本という国。俺とアヤの生まれ育った国だ」
「兄ちゃん、ヒルダちゃんの言葉が分からないけど、どうする?」
「あ、そうか」
複製しておいた【言語一時習得の魔石+2】をエレナに渡し、普通の【言語一時習得の魔石】は、ヒルダに渡した。
後で、もう2つ作って、1人1つ持っておけるようにしておこう。
エレナは、魔石のおかげで、ほとんどの漢字が読めるようになって大はしゃぎだ。
本が読めるようになって嬉しいのはわかるが、そんなにたくさんの本を引っ張りだしたらダメだよ~
ヒルダは、いまだに状況が掴めず、唖然としたままだった。
「さて、じゃあ夕飯でも作るかな」
「ちょっと待ったー!」
「なんだよアヤ」
「先にお風呂行って来て」
「なんで?」
「臭うし! ご飯に匂いが移るでしょ!」
ひどい。
~~~~~~~~~~
俺のセクシーな入浴シーンは全面カットされ、
今は、女子3人で仲良くお風呂でキャッキャウフフしている声が聞こえてきている。
俺は、そんな楽しそうな声をBGM代わりにして、夕飯の準備の真っ最中だ。
だいぶ悩んだが、献立はハンバーグにした。
ヒルダの初めての日本の食事だし。
俺がヒルダくらいの年の時は、ハンバーグが大好きだったから、きっとヒルダも喜ぶだろう。
そして、せっかく日本なので、『パン』ではなく『ご飯』だ。
夕飯の準備が終わった頃、お風呂で遊んでいた3人が、上がってきた。
ヒルダは、何故か俺のTシャツを着ている。
しかし、なんということでしょう!
半袖のはずが、中袖位になってしまっていて、
裾を引きずってしまわんばかりにワンピースになっていて、
胸元が大きく開いていて、何かがチラチラしそうな勢いだ。
これは、イカーン!!
俺が、その危機的状況を注意深く警戒していると―
アヤが、ゴミクズを見るような目で俺を見てきた。
違うんだ、俺はただ……
なんとか夕飯の準備が整い、4人で食卓を囲んだ。
「「「頂きます」」」
3人は、夕飯を食べ始めたが、ヒルダはどうしていいか分からずに固まってしまっている。
リルラの所でディナーを食べた時も、こんな感じだったし、まだ慣れていないのかな?
アヤとエレナは向かいに座ってるし、ここは俺がなんとかするしか無いか。
俺は、ヒルダのハンバーグを、フォークで一口取り分け、
肉汁いっぱいのソレを、ヒルダの可愛い唇に近づけた。
「ほら、あ~んして」
「は、はい! あ、あーん」
ヒルダの口にハンバーグを入れると、
ヒルダはおめめをぱっちり見開いて、口をもぐもぐさせたかと思うと、両手でほっぺを押さえている。
ほっぺが落ちそうなのかな?
その一口をゴクンと飲み込むと、しばらく放心していたが、
ハッと気が付いて、今度はお皿に乗っているハンバーグをじっと見つめている。
「美味しいか?」
ヒルダは、無言で力強く頷いた。
「ヒルダ、ご飯も食べてみな」
「ご、ごはん、ですか?」
「となりの白いのだ。そのスプーンで食べてみな」
「は、はい」
ヒルダは、今度は自力でスプーンにご飯を一口すくい、口に運んだ。
普通の白米だけど、海苔と卵の『ふりかけ』が掛けてある。
俺がヒルダくらいの歳の時には、大好きだった『ふりかけ』だ。
ヒルダは、やっと食べていい事が分かったらしく、
マグカップのコンソメスープや、小皿のサラダも美味しそうに食べ始めた。
やっと自分の食事ができる。と思っていたのだが―
ヒルダは、自分の分をほとんど食べ終わってしまい、残り少ない夕飯に、別れを惜しんでいる。
ハンバーグもご飯も、残りは一口ていどだ。
俺は、そんなヒルダのハンバーグとご飯の皿を無理やり取り上げた。
ヒルダは、いきなりの事態に驚き、
何故すぐに食べてしまわなかったのかと後悔していた。
まあ、『おかわり』をよそってあげるだけなんだけどね。
ハンバーグは、余ったお肉で小さめのをもう一個作ってあったのを乗せ。
ご飯もよそって、さっきより多めにふりかけを掛けて、ヒルダの前に戻してあげた。
絶望に満ちた顔が、一転して喜びに包まれ。
ヒルダは美味しそうに、『おかわり』もペロッと平らげた。
「兄ちゃん、何かデザートは無いの?」
「あるよ」
まあ、出来合いのものだけどね。
俺は、ワンタッチで皿に出せるプリンを取り出し、
フルーツ缶詰とホイップクリームでデコレーションして、食卓に運んだ。
「プリンだ! やった~!」
ヒルダは、プリンアラモード風をペロッと平らげた。
「美味しかったか?」
「は、はい!」
まあ、30にもなってプリンアラモードも無いよな。
「じゃあ、俺のも食べな」
「い、いいんですか!?」
俺がヒルダにプリンをあげると―
アヤが物欲しそうにこちらを見ている。
いつもだったら「いいな~」とか言ってきそうなところだが―
アヤのくせに空気を読みやがった。
少しは成長したみたいだな。
ご飯を美味しく食べれられうのは幸せなことですよね~
ご感想お待ちしております。




