155.猫耳フード
その部屋に居たのは―
ライルゲバルトと、
アジドさんだった
「お前は!」「あなたは!」
「「セイジ(さん)!」」
「こんな所へ何しに来た」「なぜこんな所へ」
二人のセリフが、左右から同時に聞こえた。
「アジド殿、セイジを知っているのか?」
「ライルゲバルト様こそ」
この二人、知り合いだったのか?
カサンドラさんは、場の空気を読まずに、
一歩前に出て、説明を始めた。
「ボス、セイジが、【言語一時習得の魔石】を用意できるそうだ」
ライルゲバルトがどういう反応をするのか注目していると……
答えはその隣から返ってきた。
「そうですか! それは助かります」
「え!? ボスって、
ライルゲバルトじゃなくて、アジドさん?」
「セイジさん、実はこのたび、貿易特使のリーダーに選ばれたんです」
「アジドさんが?
アジドさんって旅の商人じゃなかったの?」
今度は、ライルゲバルトが説明してくれた。
「何を言っておる、このアジド殿は、王都の商人ギルドのギルド長だぞ。知らなかったのか?」
「えぇ! ギルド長!?」
そう言えば、王都の商人ギルドで塩を売った時に出てきたのは、ギルド長じゃなくて副長だったな。
アジドさんは、あの人の上司だったのか。
「じゃあ、ライルゲバルトはなんでここに居るんだ?」
俺が、ライルゲバルトを呼び捨てにしていることに、
アジドさんやカサンドラさんは驚いていた。
「俺は、処刑されたエイゾスの代わりに、
この街の領主代理をしているんだ」
「エイゾスは、もう処刑されたのか」
まあ、オークと通じていて、さらに、小さい子供を監禁して怪我も追わせていたんだ、当然の報いだろう。
「そんな事より、セイジさん、【言語一時習得の魔石】を用意できるって本当ですか?」
「ええ、用意できますよ。
いくつ必要なんですか?」
「先ずは、ものを鑑定させて下さい」
「分かりました、それじゃあ、試しに一つ作りますね」
「つ、作る!?」
俺は、キセリさんから前に貰った【魔石複製器】に
【ヌルポ魔石】と【言語一時習得の魔石】をセットして、魔力を込め、
【言語一時習得の魔石+2】を作って、アジドさんに手渡した。
「セイジさんは、商人だと思ってましたが、魔石づくりまで出来るんですね。
それでは、失礼して【鑑定】させて頂きます」
アジドさんは、呪文を唱え始めた。
「○△◇×……【鑑定】!」
アジドさん、【鑑定】の魔法が使えるのか、
流石、商人ギルドのギルド長!
「ま、まさか、【言語一時習得の魔石+2】!!?
まさかそんな!
セイジさん、あなたは何者なんですか?」
「何者と言われてもな」
「そいつは、『勇者』だ」
「「え!?」」
おいバカ!
ライルゲバルトが、バラしやがった。
アジドさん、カサンドラさんだけじゃなく、
ヒルダも驚いている。
「ライルゲバルト様、セイジさんが『勇者』って、どういう事ですか!?」
「そいつは、王様が異世界から召喚した、勇者だ」
「おい! 勝手にばらすなよ!」
「なるほど、前にごちそうになった『カレー』とかいう食べ物は、異世界の料理だったのですね」
「セイジ、お前、勇者だったの!?」
「セ、セイジ様が、勇者!?」
アジドさんは納得し、
カサンドラさんとヒルダは、驚きっぱなしだ。
「あーもう!!
俺は、勝手に連れてこられただけだ!
勇者呼ばわりするな!」
それからしばらくは、大騒ぎだった。
~~~~~~~~~~
俺は、その場をなんとか静め―
「そんな事より【言語一時習得の魔石】の件は、どうするんですか?」
「あ、そうでした。忘れてました。
『+2』の品質ですと、3つもあれば十分かと思います」
「了解」
俺は、合計3つの【言語一時習得の魔石+2】を作り、アジドさんに手渡した。
「ありがとうございます。
これで貿易も上手くいきます。
それで、代金なのですが……
一個10万ゴールドで、
合計30万ゴールドでどうでしょうか?」
「そんなに? 無理しなくてもいいのに」
「いやあ、勇者様相手に値切りなど出来ませんよ」
「だから、勇者は止めてくれよ
しかし、これから貿易が始まるっていうのに、30万ゴールドの出費は大きいんじゃないですか?」
「【言語一時習得の魔石+2】が有ると無いとでは、貿易の成功率も大きく変わってきますから」
「それじゃあ、30万ゴールドは、アジドさんが預かっておいて下さい」
「それは、どういう事ですか?」
「30万ゴールドは、貿易で儲けて、増やしてくださいよ。儲けの半分はアジドさんに差し上げますから」
「それは面白い話ですね。
しかし、損をしてしまった時はどうします?」
「その時は、損失を半分肩代わりして下さい」
「分かりました! 必ず儲けてきます!」
俺と、アジドさんは、固く握手を交わした。
~~~~~~~~~~
俺達は、アジドさんとの交渉を終え、カサンドラさんの部屋に戻ってきた。
「まさか、セイジが勇者だったとは」
「だから、違いますって」
「そういう事にしておく」
「ありがとうございます」
「あ、そうだ、これお前にやる」
カサンドラさんがくれたのは……
赤い色の、猫耳フードだった。
「これは?」
「買ったんだけど、小さくて使えないから」
「ありがとうございます」
俺は、その猫耳フードをヒルダに着せてあげた。
ヒルダは、目を丸くしていた。
「なんだ、ヒルダに着せるのか」
「いけませんでした?」
「いや、いい」
まあ、この場でこれが似合うのは、ヒルダくらいだろう。
「ほら、ヒルダ、カサンドラさんにお礼をいいな」
「あ、ありがとうございます」
ヒルダは、赤い猫耳フード姿で、
可愛らしく、カサンドラさんにお辞儀をした。
カサンドラさんは、一瞬だけ優しい笑顔を見せたが、
何故か、急に後ろを向いてしまった。
「もう要は済んだんだから、さっさと帰りな」
俺達は、後ろを向いたままのカサンドラさんに追い出されてしまった。
人数が多いシーンは書きづらいです。
ご感想お待ちしております。




