153.受け渡し
「ヒルダを、貰ってくれないか?」
「はいぃ!?」
奴隷の存在しない日本で暮らしていたので、奴隷と言うものには抵抗があるんだよね~
俺が困った顔をしていると、
ヒルダは少し悲しそうな不安そうな顔をしている。
「ヒルダ、君は、俺の所に来ることに賛成なのか?」
「え!? あの、私は、奴隷なので……
ご主人さまになった方の、ご命令にしたがいます」
しかたない。まあ、なんとかなるだろう。
俺はしゃがみこんで、ヒルダの頭を撫でながら―
「ヒルダ、俺の所へ来るか?」
「は、はい!」
ヒルダは、少しうれしそうな顔を見せた。
「よしセイジ、奴隷受け渡しをするぞ」
「どうやるんですか?」
「なんだ、しらないのかい?
二人で奴隷の首輪の前後に、それぞれ魔力を送るんだ。
あたしが後ろ、セイジが前だ」
「わかりました」
ヒルダの首輪の前部分を触り、レイチェルさんの合図で魔力を送った。
すると、ヒルダの首輪が光り始め、
ヒルダは俺の事を見つめながら、もじもじし始めた。
何か魔法の作用なのだろうか?
そして、その光はだんだん強くなり、
一際光が強くなると、弾けて消えた。
ヒルダはその光が弾けるのと同時に、体をビクンビクンと震わせていた。
ヒルダは、少し息を乱していたが、
急に、俺の腰のあたりに抱きついてきた。
「も、申し訳ありません」
どうやら、足がふらついてバランスを崩したらしい。
「大丈夫か?」
「は、はい」
なんだか、物凄く犯罪臭い『奴隷受け渡し』だったが、大丈夫なのか?
まあいいか。
「これで、ヒルダはセイジのものだ。
あ、そうだ、これはヒルダが使っていた魔物の解体用のナイフだが、餞別代わりにやるよ」
俺は、レイチェルさんから、ナイフを受け取り―
「ヒルダ、これは君が持っててくれ」
「はい」
ヒルダは、俺からナイフを受け取ると、
大事そうに腰の紐にナイフを下げた。
「用事はこれだけだ、ミーシャとカサンドラにあったらよろしく伝えてくれ。
それじゃ、あたしは忙しいから、さっさと帰ってくれ」
レイチェルさんは、急に早口になると、
クルッと後ろを向いて、しまった。
「 」
レイチェルさんは、何かを小声でつぶやくと、
さっさとテントの奥へ行ってしまった。
急にどうしたんだろう?
~~~~~~~~~~
俺達は、レイチェルさんのテントを後にして、
少し歩いた場所にある、森の木陰に来ていた。
「ヒルダ、これから、魔法を使うから俺の手を握ってくれ」
「は、はい」
4人で手を取り合って輪を作り、【瞬間移動】でシンジュの街へ移動した。
「え!?」
ヒルダは、急に場所が移動した事に驚き、目を丸くしている。
「ヒルダ、この魔法のことは、あまり人には言わないように、いいね?」
「ひゃい!」
ヒルダは、自分の口を自分で押さえながら、激しく頷いている。
そんなに緊張しなくてもいいのに。
~~~~~~~~~~
シンジュの街は、兵士たちがほとんどいなくなり、
代わりに商人たちが多く見受けられた。
俺達は、街の人に貿易特使の事務所の場所を聞いて、カサンドラさんを訪ねた。
「あ、セイジ。それと、ヒルダ!」
「こんにちは、カサンドラさん」
「もうレイチェルと会ったか。セイジ早いな」
早いとか言うなし。
「しかし、貿易特使って、
カサンドラさんは、魔法だけじゃなくて、貿易にも詳しかったんですね」
「いや、ぜんぜん」
「え!? でも貿易特使なんですよね?」
「私は、付いて行くだけ」
「なんでまた」
「人族以外も居たほうがいいって言われて」
カサンドラさんは、そう言うと、猫耳をピコピコ動かした。
貿易とか外交とかは、良くわからないけど、
そんなものなのかな~?
「そう言えば、セイジ」
「なんですか?」
「【言語一時習得の魔石】って持ってない?」
「え? 持ってますけど」
「持ってる!? ほんとに?
ちょうだい!」
「あげませんよ! 無いと困るんですから!」
「そ、そうか……」
「【言語一時習得の魔石】が必要なんですか?」
「魔族の街に行った時に使うけど、数が足りない」
そうか、魔族とは言葉が通じないの忘れてた。
イケブの魔石屋なら置いてるかもしれないな、後で行ってみるか。
「セイジ、もう一つ質問」
「なんですか?」
「ゴブリンとの戦いの時、私をかばった魔族いたよね」
「ええ」
「あの人の名前、知らない?」
「あー、確かあの人の名前は~
『ブンミー』さんです」
「『ブンミー』か、ありがと」
「名前を聞いてどうするんですか?」
「貿易で魔族の街に行くついでに、お礼を言う」
へー、カサンドラさんって、けっこう律儀なんだな~
「所で、魔族の街には、いつ出発するんですか?」
「明後日」
「ずいぶん早いんですね」
「そうでもない、ちょっと前から準備してたし」
「それじゃあ、それまでに【言語一時習得の魔石】を見つけたら届けに来ますね」
「ありがと、助かる」
俺は、カサンドラさんと握手をかわして、
次の場所に移動した。
奴隷受け渡し、どんな感じなんでしょうね。
ご感想お待ちしております。




