142.忘れてた
ピラミッドの王の間で、コウモリに追跡用ビーコンを取り付けたのだが、
そのコウモリは、通風口に入っていってしまい、見えなくなってしまった。
ビーコンの映像を確認してみると、通風口の中をフラフラとゆっくり進んでいっている。
「セイジ、なにぼーっとしてるの?」
ナンシーが心配して話しかけてきた。
「あ、いや、さっきのコウモリが穴に入っていったから、大丈夫かな~って思って」
「セイジったら、せっかくのピラミッドなのにそんなことをまだ気にしていたの?」
「だって」
「そう言えば、日本には、こんな『ことわざ』があるって聞いたよ」
「ん? どんな『ことわざ』?」
「私とコウモリ、どっちが大事なの?」
ことわざじゃないし!
まあ、そう言われたら仕方ないな。
「ナンシーのほうが大事に決まってるじゃないか」
俺が、ナンシーの頭をポンポンすると
「なら良し」
ナンシーは、ニッコリ微笑んで、俺の背中を叩いてきた。
痛いよ、ナンシー。
まったくナンシーには、かなわないな。
その後は、コウモリが動かないのをマップで確認しつつ、
3人で、ピラミッド探検を楽しくたっぷり堪能した。
「ピラミッドは、ダンジョンみたいで楽しかったです」
「エレナは、ダンジョンに入ったことがあるの?」
「いえ、無いです」
そう言えば、イケブの街に『日の出の塔』っていうダンジョンがあるんだったな、今度行ってみようかな。
俺達は、ピラミッドを後にして、こじんまりとしたレストランで昼食をとっていた。
「いやあ、一人旅もいいけど、こうして友達と一緒に観光するのも楽しいものだね」
「ナンシーは、ずっと一人旅なんだっけ?
凄いよな~ 俺にはとても真似できないよ」
「まあ、私も、始めの頃はかなりドキドキだったんだよ、日本でセイジにあった時は、まだ旅を始めたばかりの頃で、
親切にしてくれるセイジが居て、本当に助かったんだよ」
「そうか、それは助けたかいがあったよ」
「そしたら、今度は、エジプトでまたセイジに助けられてしまった……
なんというか、その…… 運命というか……」
「うんめい?」
「あ、やっぱりいいや」
「なんだよ、話を途中でやめるなよ、気になるだろ」
「あー、その……
あ! そう言えば!
最初に助けてもらった時、妹さんが一緒に居なかったっけ?
あの子はどうしたの?」
妹??
……
「……わ、忘れてた(激汗)」
「わ、忘れてたって!!?
まさか、最初にあった町に置き去りなのか!!?」
「違う違う! 別行動なだけだよ」
「なんだ、びっくりしたよ」
今、エジプトは昼の12時だから、
日本は19時だ。
アヤは、短大から帰ってきて。
一人ぼっちで……
まあ、アヤに限って、寂しくて泣いているなんてことはないだろうけど(笑)
でも、帰ったら物凄く怒りそう‥‥
腹に鉄板でも仕込んでおくか?
「ごめんよ、ナンシー。
俺達は、アヤの所に行ってやらないと」
「そうか……
寂しいけど、仕方ないよな」
「もしまた困ったことがあれば、連絡をくれ、
すぐに飛んで行くから」
「あはは、セイジが言うと、本当に何処でも飛んできてくれそうだな」
「おうともよ」
「この旅行が終わったら、もう一度日本に行くよ、
あ、でも、もしセイジがアメリカに来ることがあったら、その時は連絡してくれ、力いっぱい歓迎するから」
「ああ、わかった」
俺は、握手をすべく手を差し出すと、
ナンシーは、俺の手を取らずに……
いきなり、ハグして来やがった。
そして、ほっぺに、チュッと、
柔らかいものが触れた。
俺は、一瞬意識が飛びそうになってしまったが、
ほっぺを膨らませたエレナが、俺の脇腹をツンツン攻撃して来たおかげで、なんとか意識を取り戻した。
ナンシーは、俺から離れると、
今度はエレナに襲いかかり、
エレナにも、ハグ&ほっぺチューしやがった。
エレナも俺と同じように固まってしまっていた。
「それじゃあね、バイバイ」
ナンシーは、そう言うと手を振りながら、颯爽と去っていった。
俺達は、しばらく唖然としていたが、
気を取り直して、日本に帰還した。
~~~~~~~~~~
「ただいま~」
玄関で靴を脱ぎながら、俺がそう叫ぶと、
リビングからアヤが、ものすごい勢いで襲いかかってきた。
「に゛い゛ぢゃん゛~!!」
アヤは怒りに震えた声?で、そう叫びながら。
俺の間合いに素早く踏み込み、
0距離から、俺の鳩尾に頭突きをかました。
「ぐほっ!!」
やっぱり、鉄板を、仕込んで、置けば、よかった……
肺の空気が一気に強制排出され、
俺は意識を失った……
気が付くと、俺はリビングのソファーに寝かされ、エレナに回復魔法を掛けてもらっていた。
「あ、セイジ様、気が付きました」
アヤは、少し離れた場所に仁王立ちしていて、
怒りに満ちた?真っ赤な目で、俺を睨みつけていた。
「兄ちゃんが悪いんだからね!
連絡もなしに、ぜんぜん帰ってこないから
しんぱ…… じゃなくて、
私をのけ者にして、一体何してたの!」
「えーと……」
ここは、正直に話しておかないと後が怖そうだ。
「ナンシーをカイロに送っていくことになって
その途中でバスジャックに襲われて」
「バスジャック!?」
「俺が倒したから平気だったけど」
「まあ、兄ちゃんなら平気だろうけど」
「その後、カイロに着いて、一旦日本に戻ってきたんだけど、日本は夜の1時でアヤは寝てたから、起こさなかったんだ」
「まあ、1時じゃしかたないかな」
「そして、ナンシーに誘われて、高級ホテルでディナーを食べて」
「ディ、ディナー!?」
「高級ワインを勧められて、がぶ飲みしてたら酔っ払っちゃって、気がついたら朝になってて」
「……」
「その後、ピラミッドを見に行って」
「ピ、ピラミッド!!!?」
「それで帰ってきたんだ」
「……」
「アヤ、どうした?」
「100回タヒね!!」
どうやらアヤの怒りが有頂天に達したようで、
俺は、アヤのいろんな攻撃を受けて―
もう一度、気を失ってしまった。
妹怖い。
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