134.爆熱正拳突き
何事かと見てみると、
怒りの表情を浮かべた舞衣さんが、仁王立ちしていた。
「よくも百合恵に怪我をさせたな!!」
どうやら、『鼻ピアス』に対する怒りのようだが……
百合恵さんが怪我したのは、尻もちを付いたからだよ?
当の百合恵さんは、エレナにお尻をナデナデされて、喜んでるし。
鼻ピアスは、想定していなかった事態に戸惑っていたが、舞衣さんが怒っているのを見てニヤニヤし始めた。
これまで、冷静に対処されてしまっていたのが、よほど気に食わなかったのだろう。
鼻ピアスは、舞衣さんに対してアッカンベーをして挑発している。子供かよ!
てか、【スロウ】と【クイック】が掛かってる状態で本気で戦ったら、舞衣さんに殺されるぞ。
舞衣さんは、挑発に乗って鼻ピアス目掛けて駆け出した。
ヤバイ、死人が出るぞ。
ズバーン!!
肉体と肉体がぶつかり合う、激しい音がして。
鼻ピアスは、3歩ほど後ずさって尻餅をついた。
「なぜ止める!」
舞衣さんの拳は、とっさに間に入った俺が止めていた。
「いやいや、あいつを殺す気ですか!?」
「あいつは、百合恵を!」
「百合恵さんは、平気だから。
尻もち付いたけど、
エレナにナデナデしてもらって喜んでましたから」
「し、しかし」
舞衣さん、いつものは冷静なのに、なぜ百合恵さんの事でこんなに熱くなるんだ?
「百合恵さーん、怪我はもう大丈夫ですか~?」
離れた場所にいる百合恵さんに声をかけてみると、
百合恵さんは、ニッコリ微笑んで手を振っている。
「ほら、百合恵さんは大丈夫ですよ」
「あ、うん」
「頭冷えましたか?」
「すまない、少し取り乱してしまった」
うむ、もう大丈夫そうだな。
しかし、その少しの取り乱しで、死人が出るところでしたよ?
そして、鼻ピアスはというと……
舞衣さんのパンチに驚いて腰を抜かしてしまったことに、自分で自分に腹を立て、床をガシガシ殴っていた。
「おい、『怪人・鼻ピアス男』、この『炎の魔法少女ラン』様が、止めを刺してやるからかかってきな」
『名台詞来たーー!!』
ギャラリーが湧いている所を見ると、アニメでのセリフなのだろう。
『怪人・鼻ピアス男』は、最後のプライドを掛けて、立ち上がり、
『炎の魔法少女ラン』に向かって突撃してきた。
「喰らえ! 必殺!!
【爆熱正拳突き】!!!」
『炎の魔法少女ラン』は、無駄に洗練されたモーションを取ってから、迫り来る『怪人・鼻ピアス男』に向けて、【爆熱正拳突き】を繰り出した。
その拳は、炎をまとい。
『怪人・鼻ピアス男』の顔面の、ちょっと手前で寸止めされて―
炎は、爆発四散した。
って、あれ?
なんで『炎』が出るの??
その場に居た全員が同じ疑問を持ったらしく、
辺りはシーンと静まり返った。
「「「わーーーーー!!!!」」」
「「「スゲー!!! 本物の『爆熱正拳突き』そっくりだ!!!」」」
数秒遅れて、ギャラリーからの大喝采が巻き起こった。
鼻ピアス男は、その場で尻もちを突き、前髪が少し焦げていたが、それ以外に怪我はしていないようだ。
「舞衣さん、今のどうやったんですか?」
「い、いや、自分でもよく分からないんだ」
うーむ、もとから使えたとかじゃ無さそうだ。
もしかして、俺の作ったアクセサリとかの影響で舞衣さんが火の魔法を覚えちゃったのか?
どどど、どうしよう。
「舞衣さん、さっきのは危ないので、もう使わないでくださいね」
「あ、ああ」
ふと気が付くと、鼻ピアス男がいつの間にか居なくなっていた。
あいつ、逃げやがったな!
追跡用ビーコンが付いてるし、まあいいか。
無事『怪人・鼻ピアス男』を退治した舞衣さんが、皆の所へ戻ってくると、
百合恵さんが、舞衣さんに抱きついて抱え上げ、ほっぺにチューしていた。
「もう、舞衣ちゃん、私の為に怒ってくれたのね、
嬉しい~!!」
「百合恵、やめないか!」
その日、『炎の魔法少女ラン(ロリ)』と、『土の魔法少女シジル』の、濃厚な××シーンの写真が、ネット上を駆け巡ったのだが‥‥
彼女らがそれを知ったのは、ずっと後になってからだったという……
魔法を覚えちゃった、どうしよう……
ご感想お待ちしております。




