133.百合恵さん!
『魔法少女(ロリ)』と、
『怪人・鼻ピアス男』の対決のゴングが、
今、打ち鳴らされた!
相変わらず、ニヤニヤしている『鼻ピアス』の表情が、一瞬キリッとしたかと思うと―
『ロリ魔法少女』の顔面目掛けて、かなりの速度の『正拳突き』が襲いかかった。
ロリ魔法少女は、事も無げに左手で鼻ピアスの正拳突きを払いのけ。
流れるような体さばきで、懐に潜り込んで、
鼻ピアスの顔面に裏拳を……
って、あれ?
舞衣さんは、裏拳をヒットさせずに、寸止めさせている。
あんなやつ相手に、寸止めとかしなくていいのに。
寸止めされた鼻ピアスは、逆上して更に襲い掛かってくる。
そんな攻撃も、ロリ魔法少女が全て躱し、
その度に、寸止めの反撃が繰り出される。
しかし、あれだな、格好は魔法少女なのに、まるで空手の試合を見ているみたいだ。
ギャラリーの皆さんも、魔法少女らしからぬ戦いを見て、さぞかしお冠のことだろう。
気になって、ギャラリーの皆さんを見回してみると……
大喜びしていた。
何故に?
『今の見たか?
あれは、第一話の戦闘シーンの再現だぜ!』
『ああ、見たともさ、
しかし、アニメの戦闘シーンを生で再現してみせるとは、あの人達凄いな!』
どうやら、アニメの方もあんな戦い方らしい……
しかし、どういうわけだ?
舞衣さんは『魔法少女・シィ』のDVDを見たから、その戦闘シーンを知ってるのも頷けるけど、
鼻ピアスは、何故アニメと同じ戦い方に協力してくれてるんだ?
それは、二人の戦闘をじっくり観察してみて、理由が判明した。
舞衣さんが、わざと隙を作って、相手の攻撃を誘っているのだ。
鼻ピアスは、舞衣さんの隙を突こうとして、
逆に舞衣さんに踊らされているのだ。
ギャラリーが大いに湧いて、拍手が巻き起こる。
鼻ピアスは、それが気に入らないようで、ますます怒り狂う。
ロリ魔法少女に寸止めされ、自分の空手が弄ばれているのも、男の神経を逆なでしていたのだろう。
鼻ピアスは、ついにブチ切れ、
隠し持っていたナイフを取り出しやがった。
ギャラリーもどよめき始め、
舞衣さんも、緊張した表情を見せている。
流石にマズイ。
俺は、鼻ピアスに【スロウ】、舞衣さんに【クイック】を掛けた。
舞衣さんは、魔法を掛けられたのを察したのか、
体を少しピクッとさせたが、
視線は鼻ピアスからそらさずに居た。
鼻ピアスは、【スロウ】のかかったゆっくりとした速度でナイフを突き出す。
舞衣さんは、突き出されたナイフを持った手を蹴り上げる。
しかし、舞衣さんは、『しまった』という表情を見せた。
蹴りあげた勢いで、ナイフが鼻ピアスの手から離れ、あらぬ方向に飛んでいってしまったのだ。
俺は、素早く落下地点に移動し、
落ちてきたナイフをキャッチした。
「ふー」
一息ついて、ふと視線を戻すと―
ギャラリーの視線が、全て俺に向いている。
ギャー、何故みんな俺を見ている!?
ナイフキャッチがパフォーマンスの一部だと思われたのか?
しかし、どうしよう。
ここで何かパフォーマンスしないと……
俺がコスプレしてるキャラって、どんなのだったっけ?
こんなことなら、ちゃんと作品を見ておけばよかった。
俺がチラ見した限りでは……
たしか、手品が得意なキャラだったはず。
俺は、拙い手つきで、『これから手品をしますよ~』といった感じのジェスチャーをして―
ナイフをわざとらしく見せながら、インベントリにしまいこんだ。
手品で消えたように見えたかな?
俺は、『手には何もありませんよ』的なジェスチャーをしてみせると―
ギャラリーから、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
『あれは、第七話の手品の再現では!?』
『手つきは素人っぽかったけど、どうやって消えたんだ!?』
うろ覚えだったけど、どうやら似た話があったらしい。
ギャラリーの視線は、俺から外れてロリ魔法少女に戻っていった。
なんとか誤魔化せてよかった。
しかし、面白く無いのは、鼻ピアスだった。
自慢の空手は弄ばれ、
奥の手のナイフも奪われてしまった。
自暴自棄になった鼻ピアスは、
近くで見ていた、ネトゲのナイトのコスプレイヤーの持っていた、作り物の真っ黒で禍々しい剣を強引に奪い、
ロリ魔法少女に向けて、投げつけようとした。
しかし、作り物の剣は、見た目と違って重さのバランスが悪く、
剣を持つ、鼻ピアスの手がグラっと揺れて
剣がスッポ抜けて飛んでいってしまった。
グラっとして、飛んでいった剣なので、
グラっ飛ん剣と名付けよう。
俺が、そんな馬鹿なことを考えていると―
「きゃー!」
後ろから悲鳴が聞こえて来た。
振り返ると、グラっ飛ん剣が飛んでいった先に百合恵さんが居る。
ヤバイ、このままでは百合恵さんに当たってしまう!
俺は、土の魔法で床を蹴り、風の魔法で風を切って
ギリギリの所で、百合恵さんに当たりそうになっていたグラっ飛ん剣を受け止めていた。
それと同時に、俺の体に衝撃が走った。
何かと思ってみてみると、アヤが俺にぶつかって来ていた。
どうやらアヤも、百合恵さんを助けようと、飛んできていたのだろう。
「俺が、受け止めたから大丈夫だよ」
俺の胸に顔を埋めているアヤにそう伝えると―
「よかった」
アヤは、俺に抱きついたまま、上目遣いに安堵の表情を浮かべていた。
「痛ーい!」
百合恵さんの声で振り向いてみると、
どうやら驚いて尻もちを付いてしまったらしく、お尻を痛そうに擦っていた。
「大丈夫ですか?」
「ちょっとお尻が割れちゃっただけ」
冗談を言えるくらいなら大丈夫だろう。
「お尻が割れた!?
た、大変です!!」
そこに駆けつけたのは、エレナだった。
エレナは、百合恵さんの冗談が通じなかったらしく、
大慌てで、百合恵さんのお尻を、撫で回し始めた。
「いやーん、エレナちゃんのエッチ❤!」
しかしエレナは、百合恵さんのお尻を撫で回すのを、やめようとしない
「エレナちゃん、ダメよ……
皆が見ているのに~❤」
しかし、しばらく撫で回していた手が、ある場所で止まると―
「え!?
なんだか、お尻がジンジンして来た!
なにこれ! き、気持ちいいぃ❤!!」
百合恵さんの黄色い叫び声とともに、やっと回復魔法が終わったらしく、
エレナが、百合恵さんのお尻から手を離すと―
「エレナちゃん、もっとやって~❤」
百合恵さんがエレナに抱きついて、お尻をくねくねさせている。
まあ、百合恵さんは、もう大丈夫だろう。
頭の方は、もともと大丈夫じゃ無さそうだけど……
俺がほっと一息つくと……
急に激しいオーラが辺りを包み込んだ。
何事かと見てみると、
怒りの表情を浮かべた舞衣さんが、仁王立ちしていた。
百合恵さんは大丈夫じゃなかったみたいです┐(´д`)┌
ご感想お待ちしております。




