125.魔王の奥の手
魔王との距離が急速に近づき、刀と刀がぶつかり合う。
その瞬間!
【警戒】魔法が、『危険』を知らせてきた。
魔王の刀を、力づくで受け止めようとしていたのを、急遽とりやめて、受け流しに変更した。
魔王の力強い刀は、受け流しによってその軌道を変え、ギリギリ躱すことが出来た。
しかし、魔王の刀を受けた摸造刀が、
少し欠けてしまっていた。
あのまま受け止めようとしていたら、きっと折れてただろう。
武器の差が、ここまでとは……
その後は、魔王の攻撃を、何とか避け続けた。
しかし、どうも上手く体を動かせない。
【魔力強化・クイック】と、【魔力強化・運動速度強化】の2つの魔法を重ねがけして、速度を上げすぎた。
それによって、ただ移動するだけで、色々な問題が発生してしまっているのだ。
まずは、土。
【土の魔法】で足場を硬化させないと、一歩足を進めるたびに、足元の土がえぐり取られて吹き飛んでしまう。
まるで『ぬかるみ』の上を走っているようだ。
次に、空気。
高速で移動しようとすると、体に空気がまとわりついてしまって、まるで水飴の中をもがいているようだった。
最後は、俺の体。
骨や筋、筋肉が動きに耐えられず、悲鳴をあげていた。
魔法で何とかするしか無いか。
土は、土の魔法で固める。
陸上競技用の硬質ゴムのタータントラックの上を、陸上競技用スパイクで走るような感じに、土を操る。
空気は、俺の体の動きに合わせて、【風の魔法】でスムーズに流してやる。
風で体を押すのではなく、体の動く先の気圧を下げて、空気の吸引力で体の動きをアシストするように、風を操る。
体は、【肉体強化魔法】で強化する。
骨や筋を【耐久強化】で動きに耐えられる強度にし、
筋肉に溜まり続ける疲労を【体力回復速度強化】でどんどん治していく。
それぞれをきちんと意識して行くことで、徐々に動きが改善されつつあった。
『【土の魔法】がレベル4になりました。
【風の魔法】がレベル5になりました。
【肉体強化魔法】がレベル4になりました』
うわ!
なんか魔法のレベルが一気に上った。
やはり、強敵と戦ってるとレベルの上がりが早いな。
「なんだ!? 急に動きが良くなっただと!?」
魔王も、俺の動きが良くなったことに驚いている。
「だが、武器の性能の差は埋めることは出来んぞ」
まさに、魔王の言うとおりだ。
武器の差があるため、刀で刀を受け止めることだ出来ず、避けるばかりになってしまっている。
これも魔法で何とかならないものか……
闘いながら、自分を【鑑定】し、打開策を探る。
ふと見ると、【土の魔法】のレベルが4になったことで、新たに【金属コントロール】という魔法が使えるようになっていた。
走るときに大地を蹴るのと同じように、俺の摸造刀が、魔王の刀を受け止める瞬間に、【金属コントロール】を使って衝撃を吸収できないだろうか?
しかし、もし失敗したら、摸造刀はポッキリイッてしまうだろう。
まあ、なんとかなるだろう。
魔王の刀を、摸造刀で受け止める、その瞬間!
高いところから卵を落としても割れない、衝撃吸収マットの様に―
【金属コントロール】を使って、摸造刀で魔王の刀を受け止める。
俺の摸造刀と魔王の刀は―
『ぐにゅっ』と、ぶつかり合った。
魔王は、その気持ち悪い感触に驚き、飛び退いた。
「な、何をした! 何だ今の変な感触は」
「さあて、何だと思う?」
俺が、ニヤリと微笑むと、
魔王は、物凄く嫌そうな顔をした。
それからしばらく、刀と刀がぶつかり合う
ぐにゅ、ぐにゅっと言う音が響き渡った。
なんだこれはorz
刀をちゃんと?受け止めることが出来るようになったおかげで、やっと対等に戦えるようになって来ていた。
『【刀術】がレベル5になりました』
やった、刀術レベルがアップ!!
もう、戦いというより、スキル上になって来ているな。
俺は、一旦距離を取り、
【摸造刀】をインベントリにしまって、
【ミスリルソード】を取り出した。
「なぜ武器を変える!」
「いやあ、刀はもう十分堪能したし」
「今までが遊びだったというのか!!」
ガンッ!
魔王の刀と俺のミスリルソードがぶつかり合う、甲高い金属音が鳴り響いた。
「戦いの音というものは、こうでなくては」
「それについては、俺も同感だ」
それからしばらくは、ガンガンと小気味いい金属音が鳴り響いていた。
『【剣術】がレベル5になりました』
やったぜ!
またもやスキル上げ成功だ!
これ以上のスキル上げは、流石に止めておくか。
「さあて、お遊びは終わりだ」
「ぬかせ!」
俺は言葉通り、レベル5の【剣術】で魔王を圧倒し始めた。
「おのれ、貴様はなんなのだ!
なぜ途中から急に強くなる!」
「なんだ、魔王のくせに、もう降参か?」
「そうだな、貴様を侮っていたようだ」
「やけにあっさりだな」
「俺も、奥の手を出させてもらう」
奥の手だと!
ヤバイ、『驚くふり』をしないと……
「ナ、ナンダッテー」
「驚くのも無理はない。
これを見せるからには、死んでもらうぞ!」
次の瞬間、俺がバックステップで後方に下がると同時に、俺のいた場所に―
【雷】が落ちた。
「カミナリ、ダト!」
上手く驚いて見せられたかな?
「な、なぜあれを避けられる!!」
あれ?
魔王の方が驚いてるじゃん!
なぜ避けられるかというと―
【警戒】魔法が、『危険』を知らせてくれるからです。
事前に、魔王が【雷の魔法】を使えることを知っていて、【警戒】魔法で、そのタイミングも分かる。
後は、避けるだけです。
情報は、何よりも重要ということだ。
しかし、魔王も【雷の魔法】が使えるとは、驚きだ。
「おのれ、運の良い奴め」
魔王は、俺にめがけて雷を3度落としたが―
俺は、それを全て避けてみせた。
「な、なぜだ!!
なぜ! 俺の雷を避けられる!!!!」
魔王は、【雷の魔法】の使いすぎで、MPが底をついたらしく、膝をついてしまっていた。
さて、そろそろとどめを刺すか。
流石に魔王は強いですね(小並感)
ご感想お待ちしております。




