010.泥棒追跡
【警戒】魔法に反応した黄色い点は、『危険』ではなく『注意』を示すものらしい。
取り敢えず、ちょっとした準備をして、様子を見ておくことにした。
黄色い点は、俺の背後から近づいてきてー
「ごめんよ!」
何かがぶつかった軽い衝撃とともに、そんな声が聞こえた。
「あっ!セイジ様、お金の袋が!」
エレナは、思わずさっきぶつかった人物を追いかけようと、駆け出したのだが…… 勢い余ってコケてしまった。
俺はとっさに、【クイック】の魔法を自分に掛けて、エレナが地面に激突する寸前で受け止めることに成功した。
「あ、セイジ様、ありがとうございます」
抱きつくような格好になってしまって、エレナは顔を真っ赤にしている。か、かわええ~
「ごめんなさい、私のせいで犯人を見失っちゃいました」
「大丈夫、金貨と銀貨はインベントリに移してあるから、あの袋には10ゴールドしか入れてなかったしね」
「そうだったんですか、いつの間に」
「うん、流石に99枚の金貨が重くって。それに、あの袋に魔法を掛けておいたから【追跡】も出来るよ」
「さすがです、セイジ様」
俺達は、犯人の追跡を開始した。
【追跡】の機能を使って、犯人の様子を見てみると…… 裏路地に隠れて、袋の中身を確認していた。
袋の中に10ゴールドが入っているのを見つけた犯人は、しっぽを振って喜んでいた。
「こっちみたいだ」
「はい」
エレナは何が楽しのか、ニコニコ顔で付いてくる。
更に犯人の行動を監視していると…… パン屋でパンを購入していた。
「どうやら犯人は、パンを5個買ったみたいだ」
「パンを5個も、よっぽどお腹が空いていたのでしょうか?」
「うーむ、パンは食べずに、何処かに運ぶみたいだ」
「なぞがなぞを呼びますね」
俺達は、さらに犯人の後を追った。
「ここが犯人のアジトですか?」
「ああ、ここに入っていった」
「でも、ここって、教会ですよ?」
「そうみたいだな。入ってみようか」
「はい」
俺達は、犯人が入っていった教会に足を踏み入れた。
教会の中は、ガランとしていて誰もいなかった。
「あっちの方で人の声が聞こえます」
俺達は、エレナの指差す奥の部屋へと進んだ。
奥の部屋に踏み入ると、犯人と出くわしてしまった。
「お前は、さっきの!」
犯人は、俺に襲いかかってきた。
俺が犯人の両手を捕まえると、犯人は足がつかなくなり、身動きが取れなくなってしまった。
「はなせ!」
俺に捕まり、すっかり借りてきたネコのようになってしまった犯人……
まあ、猫なんだけどね。
犯人は猫ミミ、猫しっぽの10歳くらいの女の子だった。
「セイジ様、こちらに来て下さい」
エレナが、更に奥の部屋から呼んでいる。
「そっちに行くな!」
犯人の女の子の必死の訴えを無視して奥の部屋に入ると……
シスターの格好をした24、5歳くらいの女の人が、粗末なベッドで苦しそうに寝ていた。病気で寝込んでいるのだろう。犯人の女の子は、この病気のシスターにパンを食べさせたかったらしい。
「その人の病気、重そうなのか?」
「だいぶ苦しそうです、私が魔法で治してみます」
エレナはシスターの額に手を載せて、魔法を唱え始めた。
「ま、魔法!」
犯人の女の子は俺に両手を掴まれ、ぶら下がったままエレナの魔法に驚いていた。
エレナの魔法が発動し、シスターの体が光に包まれると、シスターはだいぶ苦しさが減ったようで、静かに眠っていた。
「な、治ったの?」
「時間を置いて、後何回か魔法をかけたら、良くなるはずです」
「あ、ありがとう」
犯人の女の子は、エレナにお礼を言った。
すると、3人の子どもたちがどこからか出てきた。おそらく、何処かに隠れていたのだろう。
3人は5~8歳くらいで、みんな少し痩せていた。
「シスター、しなない?」
「大丈夫よ、魔法で病気を軽くしたから」
「おねえちゃん、ありがとう」
子どもたちは、口々にお礼を言った。
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