120.逆鱗
ゴブリンキングの死亡により、
戦いは、急に終わりを告げた。
当初戦う予定だった敵は、すぐ隣に居て、
いそいそと撤兵の準備をしている。
ほとんどの兵士たちが、微妙な空気を醸し出しながら、せっせと作業に当たっていた。
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俺は、魔王様の本陣にやってきていた。
俺以外にも、ライルゲバルト、ロンド、エレナ、ブランフォード、何故かアヤもいる。
『それで、セイジよ、これは何の集団なのだ?』
『ここにおられる方々は、人族側の代表の人たちでして、魔王様と和平の会談をしたいとのことです』
それから俺は、一人ひとりを紹介していった。
てか、なんで俺が通訳しないといけないわけ?
まあ、俺しか通訳できないから、仕方ないんだろうけど……
ひと通り紹介を終えた所で、魔王様が質問してきた。
『人族の王は何処にいるのだ?』
『王様は、ここには来ていません。王都にいます』
『は? これだけの戦いに王が出てきていないのか!?』
どうやら、魔族たちの文化では、
『王は戦いに赴くもの』と言う認識らしい。
その後、俺の通訳で、なんとかつつがなく会談が進められていた。
のだが……
それは、休憩中に起こった。
会談が長引き、一旦休憩となった。
魔族側がお茶を用意してくれて、
一つの大きなテーブルを挟んで、魔族側と人族側が和気あいあいと、お茶を飲んでいた。
お茶は、ちょっと変わった味だったが、無礼を働くようなバカな奴は、一人も居なかった。
しかし……
何の前触れもなく、魔王様が怒り始めたのだ。
『貴様! 俺に何の魔法を掛けた!!』
魔王様は急に怒鳴り散らして、ブランフォードに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
ブランフォードは、急に怒りだした魔王様に対して、怯えきっている。
(忘れている人もいるかもしれないが、
ブランフォードは、例のキツネ目の貴族で、
俺達がゴブリンと戦っている最中に、勝手に魔王軍に向かって進軍した奴だ。)
『魔王様、急にどうしたんですか!?』
『どうしたもこうしたもない!
こいつが、俺に対して、悪意のこもった魔法を掛けやがった』
どうやら魔王様は、自分に掛けられた魔法を感知する能力があるらしい。
「ブランフォードさん、魔王様に対して一体何の魔法を掛けたんですか?」
「あ、あ、あのだな…… か、鑑定の、魔法をだな」
キャンタマが縮み上がっているらしく、ブランフォードはシドロモドロになっている。
そういえばこいつ、俺に対しても【鑑定】の魔法を掛けてきやがったな。
俺も不用意に魔王様を【鑑定】しなくてよかった……
『魔王様、この者が掛けた魔法は、【鑑定】の魔法だそうです』
『おのれ! この俺に向かって【鑑定】だと!!』
なんか、凄い怒ってる。どうしよう。
魔王様は、胸ぐらをつかんでいたブランフォードを突き飛ばして―
日本刀を、鞘から抜いた。
『この件は、我々に対する宣戦布告と見なす!
覚悟しろ!!』
え!? 宣戦布告!?
魔王様のこの怒り様は異常だ。
勝手に【鑑定】されるのは嫌なことではあるが、
これほど激しく怒る事なのか?
人族側の面々は、魔王様に凄まれて、誰も動けないでいた。
ゴブリンキングの首を跳ねてしまうような相手だ。
その人が、目の前で武器を構えて激怒している。
こんな場面に出くわしたら、誰だって恐れおののくだろう。
「セ、セイジ。魔王様は、何と言っているんだ?」
「えーっと……
宣戦布告と見なす、そうです……」
「な、なんだと!!?」
そして、魔王様に突き飛ばされ、腰砕けになっているブランフォードに、全員の視線が集中する。
「わ、私は……
情報収集の、一環として……
こんなことに、なるとは……」
ブランフォードは、あまりの事に顔面蒼白になり、
そのままぶっ倒れてしまった。
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会談は中止になってしまい。
人族の貴族たちは、自分たちの陣に戻り、
対応会議を開いていた。
「ライルゲバルト殿、どうするおつもりか」
「どうもこうも無い。
このままでは、あのゴブリンキングを一撃のもとに葬り去るほどの魔王と……
戦争になってしまう。
我々では、勝つことは不可能だ。
どんな犠牲を払っても、戦争を回避せねば……」
この前まで魔王軍と戦う気満々だった奴がよく言うぜ。
「今後、魔王との交渉は、俺一人で行う。
セイジは引き続き通訳を頼む」
俺とライルゲバルトは、改めて魔王との会談に向かった。
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※このシーンは、セイジが通訳をしてます。
「先程の件は、こちらの落ち度を認め、陳謝いたします」
『謝罪などいらぬ』
「そこを何とか、ご容赦いただきたい」
『問答無用!
そもそも、お主は、人族の王では無いではないか!
話があるなら、お前たちの王を連れて来い』
「王は王都に居りますゆえ、ここまで来るのに半月はかかると思います。
それまで、お待ちいただけるでしょうか?」
『待たん! 今日の日没までに王を連れてこなければ、
魔王軍は、このまま人族の街に攻め入る。
覚悟しておけ!』
魔王様、完全にへそを曲げてしまっている。
子供かよ!
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俺とライルゲバルトは、控室用のテントで対応を協議していた。
「どうすればいいんだ……」
「さあ、どうだろうね」
「お、お前! お前もちゃんと考えんか!」
「なぜ俺が考えなくちゃいけないんだ、俺には関係ないだろ」
「国が滅ぶかどうかという瀬戸際なのだぞ!」
「俺の国じゃない」
「……そ、それは、そうだが……
エレナ様、エレナ様はどうする、
国が滅べば、エレナ様も悲しむぞ」
「エレナ一人くらいなら、俺が匿って、平和に暮らして行くさ」
「リルラはどうなる!」
「リルラ? お前の娘のリルラは……
魔王様に無理やり手篭めにされてしまうかもしれないな」
「な!? い、言わせておけば!!」
ライルゲバルトは俺の胸ぐらを掴んできた。
「そうだ! お前は、急に消えたり現れたりする、おかしな魔法を使っていたな。
あれで何とか王を連れてくることは出来ないのか?」
「出来るよ」
「出来る!? 出来るのか?
ならば早く王を連れてくるのだ」
「報酬は?」
「お、おのれ…… 足元を見やがって。
いくら欲しい!」
「10万ゴールド」
「10万ゴールドだと!?」
「払えないなら、代わりにリルラでもいいぞ」
「なんだと!!?」
「どうする、10万ゴールド払うのか?」
「わ、わかった……」
「よし、交渉成立だ。じゃあ、王様連れてくるか」
俺は、【瞬間移動】で王のもとへ向かった。
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「よう、王様」
「お前は、セイジ! なぜここに!」
「魔族との間で色々あってな」
「なんだと!?」
「それじゃあ、魔王様の所へ、王様1名ご案内~」
ちょっと黒くなってしまった。
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