114.行ったり来たり
右翼を冒険者軍団、左翼を魔族がそれぞれ努め。
魔法使い部隊の4人、俺、アヤと、魔族側のリーダーが、中央で指揮をとっていた。
ヒルダは、冒険者軍団だけでなく、魔族側にまで飴を配りに走り回っていた。
当初、魔族の人たちは、飴をもらって戸惑っていたが、
リーダーが最初に飴を食べてみせると、徐々にみんなも喜んで食べるようになった。
飴を配っているヒルダは、魔族の皆さんに大いに可愛がられていた。
魔族冒険者混合部隊は、破竹の勢いでゴブリンを蹴散らし、進軍していった。
「まさか、魔族と一緒に戦うことになるとは……」
『まさか、人族と一緒に戦うことになるとは……』
レイチェルさんと魔族のリーダーさんが、ドレアドス共通語と魔族語で、同じことを言ってやがる。
魔族の人たちは、身体能力も魔力も高いのだが、
人族とは魔法の使い方が違くて、肉体強化魔法を中心として、格闘による攻撃の合間に、接近して魔法をぶつける感じの戦いをしていた。
俺が、魔族の人たちを観察していると―
逆に、魔族のリーダーさんが、俺に質問してきた。
『人族は、魔法を使う者と使わない者がいるのか?』
『はいそうです、魔族の方々は違うのですか?』
『魔法の使えない魔族は、戦闘に参加しない』
『なるほど』
魔族では、魔法の使える人だけが兵士になるのか。
魔族の人たちは、全員同じ戦闘スタイルで戦ってる。
接近戦、魔法、自分で回復魔法、一人で、全てこなすスタイルだ。
人族側は、偵察部隊、防御主体の壁役、前衛攻撃役、弓兵、魔法攻撃役、回復魔法師、ヒルダの様な非戦闘の補助役。それぞれの役割が、完全に専門職になっている。
魔族のリーダーさんは、人族の役割分担について、えらく興味があるみたいだった。
そんなこんなで、進軍していると―
マップ上に、良からぬ動きが発生した。
良からぬ動きと言っても、前方ではない、後方だ。
貴族連合軍の一部が、魔族軍の本陣に向かって進軍を開始したのだ。
何やってんだ、あいつら!
どうやら、【土の魔法】を習得して、足音で位置を判断できるようになってからは、味方の人の位置も、きっちり把握できるようになったみたいだ。
「レイチェルさん、俺はちょっとロンドに状況を知らせに行って来ます」
「そうか、そうした方がいいか。分かった行って来てくれ」
「了解です」
通訳が一時的に居なくなってしまうが、魔族軍も冒険者達も、お互い戦いに身を置く者同士、ジェスチャーなどである程度の意思疎通ができているので、少しくらいなら大丈夫だろう。
俺は急いで『ナカ平原』に戻った。
~~~~~~~~~~
「ロンド、どうなってる!」
「おう、セイジ、すまん。止めたのだが、ブランフォード殿が出撃してしまった」
ブランフォードって、あの【鑑定】の魔法が使える、キツネ目の貴族か。
「ちょっとエレナを借ります。
エレナ手伝ってくれ、あいつらを止める」
「はい、セイジ様」
「ちょっ! まっ」
俺は、ロンドの静止を無視して―
エレナを連れて、飛び出した。
「セイジ様、どうやって止めるんですか?」
「エレナ、雨を降らせてくれ。
出来れば自然に降ってきた感じで」
「はい、分かりました」
エレナに水属性強化の装備をさせ、雨を降らせてもらった。
出撃したブランフォード軍の前方に暗雲が立ち込め、ポツポツと雨が降り始めた。
しかし、ブランフォード軍は進軍を止めない。
「よし、徐々に雨脚を強くしてくれ」
「はい」
雨は段々と強くなっていき、ついには土砂降りになった。
しかし、それでも進軍を止めない。
仕方ない、ここは最終手段だ。
俺は、雨雲から雷を落とした。
もちろん、なるべく人に当たらないようにした。
ブランフォード軍は、落雷に驚き、進軍を止めて撤退してくれた。
「エレナ、すまないが、しばらく雨を降らせ続けていてくれ」
「はい、わかりました」
俺はエレナに雨を降らせてもらっている間に、ロンドを無理やり連れて、ライルゲバルトの所に押しかけた。
「ライルゲバルト! ブランフォード軍を止めろ!」
「なんだ行き成り!」
「冒険者達は、魔族軍と共闘してゴブリンを退治している」
「なんだと! 魔族軍と共闘だと!」
「ああ。
今、こっちで魔族軍と戦いが始まれば、魔族軍と共闘している冒険者達に、影響が出てしまう。
せめて、冒険者が戻るまでは待ってくれ」
「わかった、ブランフォードを呼び戻せ」
俺は、後をライルゲバルトにまかせて、エレナの所に戻った。
「エレナ、ありがとう。もう大丈夫だ」
「はい」
エレナは、かなり頑張って雨を降らせてくれてたらしく、息を乱していた。
エレナに和菓子を食べさせて居ると―
今度は、魔族冒険者混合部隊の方に、動きがあった。
なんと、撤退してきているのだ。何かあったのか!?
「悪い、エレナ、冒険者達の方でも何かあったみたいだ。ちょっと行ってくる」
「セイジ様、お気をつけて」
~~~~~~~~~~
逃走する魔族冒険者混合部隊の所へ来てみると―
50匹のゴブリンジェネラルと、ゴブリンプリンスに追いかけられていた。
逃げる混合部隊の中にレイチェルさんを見つけて、走りながら話しかけた。
「レイチェルさん、これはどういう事ですか!?」
「セイジ、戻ったのか。すまない、急にあいつらが襲ってきて。この戦力じゃムリだ」
「いえ、ただしい判断だと思います」
「しかし、このまま平原に戻ったら、貴族たちになんと言われるか……」
「じゃあ、俺があいつらの足止めをします。
その隙に本陣に戻って、迎撃体制を整えて下さい」
「お、お前、死ぬつもりか!?」
「死にはしませんよ。まあ、任せて下さい」
「わ、わかった。絶対に死ぬんじゃないぞ」
「はい」
俺が、立ち止まり、迎撃体制をとった所で―
「兄ちゃん、私も」
「アヤ、行けるか?」
「もちろん!」
俺とアヤは、迫り来るゴブリン軍団を―
二人っきりで、迎え撃とうとしていた。
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