113.魔王軍と冒険者軍団
冒険者軍団は、東に向かって移動していた。
しばらくして後ろのほうから、魔法の炸裂したり、武器同士がぶつかったりする、戦いの音が聞こえてきた。
「レイチェルさん!
後ろから戦ってる音が聞こえます」
「ああ、魔王軍とゴブリンが戦ってるのか?」
「多分そうだと思います」
「そうか、あたい達にとって両方とも敵だが。
彼らもまた、敵同士なのか……」
「そうみたいです」
これで、魔王軍とゴブリン軍が裏で手を組んで無いことが分かったな。
手を組んでいたら、かなりヤバかったんだが……
しかし、魔王軍って、どんな奴等なんだろう?
「じゃあ、魔王軍の動きを注意しつつ、
ゴブリン討伐を再開させるか!」
「はい! それじゃあ、
俺が、魔王軍の偵察に行って来ますよ」
「お前が、偵察に行くのか?」
「任せて下さい」
「分かった、行って来い」
さーて、魔族ってどんなやつらなんだろうな~
俺は、期待に胸を膨らませて、偵察任務に出発した。
~~~~~~~~~~
俺は、魔王軍とゴブリンが戦っている現場が見える位置まで、やって来た。
魔族の姿は―
普通の人間だった……
違うところがあるとすれば、それは、
おでこに、小さめの角が付いているくらいだ。
ユニコーンの角を短くした感じだ。
戦いを見てみると、全員魔法が使えるようで、
身体能力的にも、人族より強いみたいだ。
「○△◇×……!!」
ん? 魔族の一人が、俺に気づいたらしく、何かしゃべっている。魔族の言葉だろうか?
俺はさっそく【言語習得】を使ってみた。
┌─<言語習得>─
│【魔族語】を習得します
│ 習得レベルを選択して下さい
│
│・レベル1(消費MP:50)
│ 片言で話が出来る
│
│・レベル2(消費MP:100)
│ 日常会話程度は話ができる
│
│・レベル3(消費MP:200)
│ スラスラと会話ができ
│ 簡単な文字のみ読める
│
│・レベル4(消費MP:500)
│ スラスラと会話ができ
│ 日常使う文字が読み書き出来る
│
│・レベル5(消費MP:1000)
│ 全ての言葉を使って会話ができ
│ 全ての文字が読み書きできる
└─────────
やった! 魔族語だ!
俺は、MPを1000消費して、レベル5【魔族語】を習得した。
『隠れている人族は、どうやら偵察らしい』
『襲ってこないなら放っておけ』
『了解しました』
俺のことを話しているらしい。
ここはいっちょ、魔族語で話しかけてみるか。
『俺は、人族の冒険者だ。助けはいるか?』
『なに!? 言葉が喋れるのか!?』
『ええ、喋れますよ』
『それなら話が早い、色々質問に答えろ』
『はい、なんですか?』
『少し前に、この辺りでゴブリンと戦っていたのは、お前の仲間か?』
『はい、今はもうちょっと東のほうに移動しています』
『このゴブリン達はなんだ、なぜこんな所に沢山のゴブリンがいる? 何か知っているか?』
『ゴブリンキングが、こちらの方向に移動しています。
こいつらはその取り巻きです』
『ゴブリンキングだと!!?』
魔族たちは、ゴブリンキングの名前を聞いて、驚き戸惑っている。
『もう一つ聞きたいことがある』
『はい、なんでしょう』
『人族が兵を集めていたのは、魔族に戦争を仕掛けるためではなく、ゴブリンキングの討伐の為だったのか?』
『ソ、ソウナンジャ、ナイカナ~』(すっとぼけ)
『そ、そうか……』
魔族部隊のリーダーっぽい人が指示をだし、数名が魔族軍の本陣に伝言を伝えに行った。
~~~~~~~~~~
俺は偵察を終え、レイチェルさんの所へ帰ってきた。
「ただいま戻りました」
「どうだった?」
「魔王軍と話をつけてきました」
「話をつけただと!?」
「ええ、
魔王軍が、ゴブリン討伐に協力してくれるそうです」
「マ、マジかよ!」
「マジです」
レイチェルさんは、戸惑っていたが。
真剣な眼差しでレイチェルさんを見つめると、
レイチェルさんは、俺のことを信用してくれた。
「おまえら、よく聞け!
魔王軍が、ゴブリン討伐に協力してくれるそうだ」
「「ええええーーーー!!!」」
「いいか、魔王軍は敵じゃない!
遭遇しても、絶対に攻撃を仕掛けたりするんじゃないぞ! いいな!!」
冒険者達は、ざわざわしているばかりだった。
「おまえら、わかったら返事をしろ!!」
「「お、おう!」」
レイチェルさんに、無理やり返事をさせられた冒険者軍団は、再びゴブリン討伐を再開させた。
魔王軍の参戦によって、ゴブリンの戦力が分散されたのか。
こちらに来るゴブリンの数が減り、簡単に蹴散らすことが出来るようになっていた。
「楽勝だな。こちらから攻めに行くか」
「「おう!」」
レイチェルさん率いる冒険者軍団は、押せ押せムードで進撃を続けていた。
そろそろ、魔王軍と鉢合わせするけど……
大丈夫かな?
冒険者軍団が、逃げる数匹のゴブリンを追って森を進んでいると―
急に森が開け、見通しのいい場所に出た。
すると―
冒険者達が一斉に左を向いて、凍りついた。
冒険者達が開けた場所に飛び出した丁度同じタイミングで
魔王軍もそこへ飛び出してきたのだ。
よく見ると魔王軍の方も、こちらを見て凍りついていた。
両軍が凍りつき、沈黙が流れた……
俺は、一人で魔王軍の方に歩み寄り、手を上げた。
すると、向こうのリーダーさんもこちらに歩いてきた。
『どうも』
『さっきの冒険者か、本当にこちらに攻撃をしてこないのだろうな?』
『はい』
『そ、そうか』
俺と魔族のリーダーとの遣り取りを、両軍とも固唾を呑んで見守っていた。
『握手をしませんか?』
『わかった』
俺と魔族のリーダーは、手を握り合った。
そして、おれは、その握り合った手を、高々と掲げた。
「「おおーー!!」」
『『おおーー!!』』
両軍から歓声が上がる!
『協力してゴブリンを倒しましょう』
『おう、よろしく頼むぞ』
魔王軍、冒険者軍団。
2つの種族を超えた集団が、一つの目的のために、手に手を取り合った―
歴史的瞬間であった。
ここまで来て、やっと魔族が登場です。
ご感想お待ちしております。




