111.開戦
翌朝、俺とアヤは、エレナに出発の挨拶をしに来た。
「エレナ、行ってくる」
「エレナちゃん、行ってきます」
「セイジ様、アヤさん……
やっぱり、私も行きます。連れて行って下さい」
「ダメだ。今回エレナは、冒険者としてではなく、姫として、この戦争に参加している。
そう、簡単に動ける立場じゃないだろ?」
「は、はい」
「それじゃあ、魔力のロッドを貸してくれ。
それでエレナの分まで戦ってくるから」
「はい、分かりました」
俺は、エレナから魔力のロッドを受け取り。
アヤと、集合場所へと向かった。
集合場所に行くと、2000人の冒険者が集合していた。
「おい、新入り。こっちだ」
「これは、レイチェルさん」
レイチェルさんが、魔法使い部隊の皆さんを、連れて来ていた。
巨乳のミーシャさんは、相変わらずアヤと睨み合いをしている。
眠そうなネコミミのカサンドラさん、
また大量の荷物を持たされているヒルダも来ていた。
「所で、新入り。となりの女はだれだ?
お前の女か?」
「妹ですよ」
俺は、アヤを魔法使い部隊の皆さんに紹介したのだが、
アヤは、ヒルダが荷物持ちをさせられている事を、気にしている様だった。
しばらくして、冒険者たちが集合を終えた所で、ライルゲバルトが登場した。
ライルゲバルトは朝礼台の様な物に上がり、冒険者達に今回の作戦の説明を始めた。
「冒険者の者達よ、
私は、ライルゲバルトである。
これから今回の作戦を説明するので、よく聞くように」
ライルゲバルトは、ゴブリンの部隊が森にいることを説明し、冒険者達に討伐を命じたのだが……
ゴブリン軍の中に『キング』が居ることを、黙っていやがる。
そんな大事な情報を秘密にしたまま、戦わせようというのか!
なんて酷いやつだ。
「細かい作戦は、ロンド・ウォーセスターが指示する」
ライルゲバルトに指名され、ロンドが朝礼台に上がった。
「キャー、ロンド様かっこいい~」
ミーシャさん、うるさいですよ!
「私はロンドだ。これから細かい作戦を指示する。
まずは、レイチェル、こっちに来てくれ」
「え!? あたし!?」
急に呼ばれたレイチェルは、緊張した面持ちで朝礼台に上がってきた。
なぜかミーシャとカサンドラも、レイチェルに付いてきてしまっている。
君たち呼ばれてないぞ!
「おお、すげえ巨乳だ!」
冒険者たちから、ミーシャさんへの声援?が飛び、ミーシャさんは、気を良くして、投げキッスで応戦している。
本当に何しに来たんだか……
「ごほん! この者…この者達は、我が軍の魔法使い部隊の者達だ。
この中で、魔法による戦闘経験のある者は、一時的にこの部隊に所属して動いてもらいたい」
冒険者達の中から、30人ほどの魔法使いが選抜され、魔法使い部隊に一時的に編入された。
「今回のゴブリン軍は、とにかく数が多い。
まずは、魔法使い部隊の魔法で、数を減らし、
他の者達は、撃ち漏らしを個別に撃破して欲しい」
アヤも、この部隊に所属することになった。
「現場での指揮は……
レイチェル、君が指揮を頼む」
「あ、あたし!? わ、分かった」
レイチェルさんが、冒険者達のリーダーかよ!
「それでは、皆の者、出撃するのだ!」
ライルゲバルトの号令とともに、冒険者たちはゴブリン討伐に向けて、出撃した。
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「しかし、あたしが、この部隊のリーダーとはね~」
「いつも私達のリーダーしてるんだから、平気でしょ? 私もロンド様に、いいところを見せるんだから!」
「ところで、リーダー」
「なんだい新入り」
「勝て無さそうな強敵が現れたら、どうするんですか?」
「はぁ? 冒険者が2000人も居て、ゴブリンに勝てないわけ無いだろ」
「上位種が、居るかもしれないじゃないですか?」
「カサンドラ、ゴブリンの上位種ってなんだっけ?」
「えーと、ゴブリン、ホブゴブリン、ゴブリンジェネラル、ゴブリンプリンス、ゴブリンキングかな」
「ジェネラル辺りが出てきたら、けっこうヤバイかもね」
ジェネラルでもうダメなのか。
俺は、すっかり一般の人の感覚を、忘れてしまっているのだな~
「じゃあ、ジェネラルが出てきたら、退却だな」
「どっちの方角に退却するんですか?」
「そりゃあ、本陣の方に…… って、それはダメか」
「兄ちゃん、魔王軍の方に逃げるのは?」
「アヤ、なぜそっちに逃げる必要があるんだ?」
「MPKだよ、兄ちゃん」
「おい、新入り、その『えむぴーけー』ってなんだ?」
「あー、えーと、魔物をおびき寄せて、敵にぶつける作戦のことです」
「いいじゃないかそれ」
「失敗すると、ゴブリンと魔王軍に挟み撃ちにされますよ?」
「あー、やっぱり、その作戦は無し!」
そんな話をしながら森の中を進んでいると、偵察部隊から、ゴブリンを発見したとの報告が入った。
「さて、どんな風に戦うかな?」
「リーダー、ここはいっちょ、派手にやりましょうよ」
「派手に? どうしてだ?
「貴族たちは、安全な平野で、高みの見物と洒落こんでいるんですよ?」
「だから?」
「地味にゴブリンを倒して戻ったって、
『ああ、そうか』くらいで終わりでしょ?
高みの見物をしている奴等に、
本当に凄い魔法を、見物させてやろうじゃありませんか!
そしたら、追加報酬が貰えるかもしれませんよ」
「それは、いいな……
あ、やっぱり駄目だ。
そんな派手にやったら、魔力が持たないだろ」
「そこは、俺に任せて下さい。
魔力を回復出来る、いいものがあるんです」
「なんだと!?」
俺は、飴玉を取り出し、レイチェルに1つ食べさせた。
「あ、甘い! これは魔力が回復しそうだ!」
「でしょ?」
「こんな凄いもの、いいのか?」
「たくさんありますから、大丈夫ですよ」
「よし! これがあるなら、いっちょ派手にやるか!!」
俺は、魔法使いたちに飴玉を3個ずつ配り、
残りをヒルダに持たせた。
「ヒルダ、この飴を預けるから、
魔力が減ってきた人が居たら、君が配ってくれ、
よろしくな」
「は、はい」
「じゃあ、君も1つ食べてみろ」
「いいんですか?」
おれは、一番甘い飴を1つ、ヒルダの口に放り込んだ。
「あ、甘いです!! ほ、ほっぺが、落ちちゃいます!」
「よろしく頼んだぞ」
「はい!」
こうして、準備が整った頃。
斥候部隊が、数十匹のゴブリンを引き連れて、戻ってきた。
「魔法使い部隊、打ち方始め!!」
こうして、ゴブリンと冒険者たちとの小競り合いが始まった。
後に『ナカ平原の戦い』と呼ばれる事となる戦いが、
幕を開けた瞬間であった。
ついに戦争が始まっちゃいました。
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