104.リルラのイケブ防衛
町の人々に見送られて着いた先は、街の北側の出入口前の広場。
兵士100人、冒険者50人が集まっていた。
全員バッチリ気合が入っている。
ゴブリン達が何時来るかを、事前に知らされていた事で、心構えが出来たのだろう。
全員、街の外へ移動して、出入口を守るような陣形を取った。
陣形は△の形になっていて。
最前列をリルラ、俺、エレナ。
その後ろを、リルラが率いる100人の兵士たち。
その左右を冒険者達。
中心部分は、魔法使いや弓兵、それと回復魔法師たち。
兵士や冒険者達は、自ら最前線に立つリルラの、堂々とした背中を見つめて、奮起している。
しかし、俺とエレナは、リルラの泣きそうな横顔を、すぐ横から見ていた。
エレナとは事前に話し合っていたのだが、今回はリルラと兵士たちに、花を持たせる事にしていた。
しばらくすると、遠くに見える森から、ゴブリン達がわらわらと出てきた。
リルラは体をビクッとさせ、心配そうに横にいる俺を見つめてきたが。
俺が大丈夫だと頷いてみせると、リルラも頷き、気合を入れなおして、正面を向き直した。
弓と魔法の射程に入ったのをマップで確認し、リルラに耳打ちする。
「弓兵部隊! 魔法使い部隊! 撃ち方始め!!」
リルラの号令で、弓兵と魔法使いが、攻撃を開始する。
相手は普通のゴブリンなので、それだけでどんどん倒せている。
しかし、それでも撃ち漏らしもあり、ゴブリンとの距離も、徐々に近づいてくる。
そろそろ、ゴブリンの先頭集団が、リルラの所に到達しそうだ。
俺は【クイック】を、リルラや兵士たち1人ずつに、掛けていった。
「セイジよ、ゴブリンの動きが急に遅くなった気がするのだが、どうしてだろう?」
「戦いの高揚感が、そうさせるらしいぞ」
「なるほど、そういうことか」
リルラは、ゴブリンの動きの遅さに、すっかり自信を取り戻し。
とうとうリルラの所にまで到達したゴブリンを、自慢の細剣で一刀両断にした。
何匹かのゴブリンが、兵士たちを避けて、横に回り込んで来たが。
そいつらは冒険者たちによって、片付けられていた。
ゴブリンの死体が、戦いの邪魔になって来たので、手の空いているものに運ばせて、ゴブリンの山が出来つつあった。
しばらく、間断なくゴブリンと戦っていると。
ホブゴブリンが登場し始める。
しかし、俺の【スロウ】と、エレナの【水の魔法】で動きを弱らせたおかげで、リルラや兵士たちが、次々と倒していく。
数名ほど、怪我人が出ているが、後方で回復魔法師に治療してもらい、すぐさま前線に復帰出来ていた。
思った以上に善戦している様子で、兵士たちの士気も高い。
それに、疲れるどころか、逆に全体的に動きが良くなってきている。
もしかして、俺の【スキル習得度上昇】の効果で、部隊全体的に、スキルも上昇しているのかもしれない。
楽勝ムードで、部隊全体が調子づいて来ていた時。
「グオー!」
森から、巨大なゴブリンが姿を表した。
プリンスではない、しかし、ホブゴブリンよりデカい。しかも鎧で身を固めている。
【鑑定】してみると、『ゴブリンジェネラル』と出た。
そんなのも居るのか。
ジェネラルは、一直線にリルラに向かってくる。
リルラも、真っ向から迎え撃つ気だ。
ちょっとヤバそうなので、【魔力強化】からの【スロウ】で、強めのスロウを掛け。
ジェネラルの初撃がリルラを襲う。
俺は、リルラが構えている盾と同じ場所に【バリア】を張って、ジェネラルの攻撃を軽減させる。
ドオオン!
ジェネラルの強烈な一撃を、リルラが自慢の『ミスリルの盾』で受け止めた。
しかし、リルラは、少し辛そうな顔をしている。
軽減させたとはいえ、ジェネラルの攻撃を受け止めたことで、少しダメージを食らったのだろう。
俺はミスリル剣で、素早くジェネラルの足を攻撃し、更に動きを鈍らせる。
エレナは、リルラの受けたダメージを、素早く回復していた。
ジェネラルは2撃目を叩き込もうと、剣を振り上げるが。
その瞬間を狙いすまして、リルラの細剣がジェネラルの右肩を貫いた。
ジェネラルは肩を攻撃されても、そのまま攻撃を振り下ろす。
しかし、足の踏ん張りも効かず、肩もやられて力がこもらず、ひょろひょろとした2撃目になってしまっている。
スパン!
リルラはそんな攻撃を、盾で弾き飛ばした。
攻撃を弾き飛ばされたジェネラルは、バランスを崩している。
一瞬無防備となったジェネラルは、リルラの細剣で、鎧の上から胸や腹を滅多突きにされ。
そのまま後ろ向きにぶっ倒れた。
鎧を貫通するとか、すごい攻撃だな。
「「うおー!」」
ジェネラルを倒した事で、部隊の士気がさらに高まった。
勢いづいた兵士たちは、破竹の勢いで、ゴブリンたちを倒し尽くしてしまった。
「「やったぞー!!」」
ゴブリンの勢いが止まったことで、勝利に沸く兵士と冒険者達。
俺はリルラに耳打ちをして。
リルラは、大声で叫ぶ。
「新手が来るぞ! 気を引き締めなおせ!!」
兵士と冒険者達は、一瞬で静まり返り、森のほうを注視する。
ドドドド。
地響きとともに、森が揺れ。
新たなゴブリンの軍勢が、森から湧き出してきた。
しかも、今度の集団は、ホブゴブリンが多く、ゴブリンジェネラルも10匹ほど混じっている。
それを見た兵士や冒険者たちは、少しおじけづいていたが。
「うおぉー!!」
テンション爆上げ中のリルラが、雄叫びを上げると。
兵士と冒険者たちも、表情を引き締めて、応戦の構えをとった。
しかし、流石にこの量は捌き切れない。
「エレナ、いっちょ頼む」
「はい、セイジ様」
「【魔力強化】【雹】!」
エレナの氷系範囲攻撃が炸裂し、ホブゴブリンのほとんどが凍りづけになった。
しかし、ゴブリンジェネラルは、氷漬けのホブゴブリンを破壊しつつ、前進を止めていない。
ジェネラル達は―
リルラに2匹、兵士たちに6匹、左右の冒険者達にそれぞれ1匹ずつ、別れて突撃してくる。
「【スロウ】【スロウ】【スロウ】……!」
全てのジェネラルに【スロウ】を掛け。
【クイック】が切れてしまった人たち全員に、もう一度【クイック】をかけ直していく。
MPキツイ!
弓兵と魔法使いチームも、10匹のジェネラルに攻撃を加え、少しながらもダメージを与えている。
10匹のジェネラルと各場所で、激しいぶつかり合いが開始された。
激しいぶつかり合いを物語るように、ジェネラルとの戦いで、何人か怪我人も出てきている。
「エレナ、怪我人を頼む」
「はい!」
エレナを後ろに下がらせ、回復魔法師の支援に行かせる。
俺は、リルラに襲ってきた2匹のうちの1匹を、ミスリルソードで真っ二つにした。
リルラは1対1で何とか持ちこたえている。
リルラは、スキルレベルが上がって、急に強くなっているみたいだ。
リルラは大丈夫そうなので、支援を後まわしにして。
ジェネラルに押され気味の所を優先して、俺の【ウォータージェット】で攻撃し、支援をしていく。
一番外側で戦っていた冒険者達が、真っ先にジェネラルを倒し。
手の空いた者達が、左右から兵士たちの支援を開始した。
怪我人は出ているものの、エレナがどんどん治しているので、問題は無さそうだ。
兵士たちの方は、あらかたケリが突きそうなので、俺はリルラの支援に戻る事にした。
ジェネラルは、リルラを攻撃しようとしていたのだが。
俺のミスリルソードが、ジェネラルの右手を、スッパリと切断すると。
その隙に、リルラの細剣が、ジェネラルの喉を貫いた。
喉を貫かれたジェネラルは、体をヒクヒクと痙攣させ。膝から崩れ落ちた。
10匹のジェネラルは、全て倒した。
そして、その直後だった。
喜ぶ暇も、息をつく暇もなく―
そいつは、登場した!
最近戦ってばかりで、はやく日本の話も書きたいな。
ご感想お待ちしております。




