102.新しい武器
エレナのもとへ戻ると、エレナは冒険者たちと勝利を称え合っていた。
「エレナ、こっちは片付いたみたいだな」
「セイジ様、ご無事で何よりです」
エレナは、俺を見つけると、飛びかかる勢いで抱きついてきた。
しかし、エレナのその行動が、とんでも無い状況を作り出していることに、エレナ自身は気がついていなかった。
周りの冒険者達が、一斉に俺を睨みつけたのだ。
(こいつ誰だ?)
(戦いが終わった後から、ノコノコとやって来て何様だ?)
(我らがアイドル、エレナちゃんに抱きつかれるとは。万死に値する)
そんな心の声のこもった、凄まじい視線が、俺を貫いた。
「エレナさんや。ここは皆さんに任せて、俺達は次の場所へ行かないと」
「そうですね、分かりました!」
エレナは、冒険者さん達に挨拶をした後、俺と共に街の裏道へと消えていった。
『あいつは誰だ!』
『俺のエレナさんとイチャイチャしやがって!』
『誰がお前のだ! エレナさんは俺のものだ!』
後ろのほうから、言い争いをする声が聞こえた気がしたが。聞かなかったことにして、俺達は逃げるように、イケブの街へ移動した。
~~~~~~~~~~
イケブの街に到着すると、兵士たちがピリピリしていた。
確かにゴブリンの集団が街に近づいて来ているのだが、今日はまだ大丈夫そうだ。
こんなにピリピリしていたら、身がもたない。
リルラの居る宿屋に行ってみると、入り口の兵士に顔パスで入れてもらえた。
逆に、待ってましたと言わんばかりの態度だ。
リルラの部屋に入ると―
俺は、リルラに抱きつかれてしまった。
どうしてこうなった?
「リルラ、どうしたんだ?」
「すぐ駆けつけると言ったのに、何故すぐに来なかったのだ! その隙に私が襲われたらどうするつもりだ!」
「どうするも何も、まだ魔物は襲ってきていないだろ!」
「そ、そんなの、分からんではないか! 見つかっていないだけで、近くで隠れているのかもしれないではないか!」
「大丈夫だよ、近くには居ないよ」
「ほ、本当なのだな!?」
「ああ」
この前は、英雄になると意気込んでいたが。
ハイオークに連れ去られた事を思い出してしまったのか、また震えてしまっている。
「お前なあ、英雄になるんじゃなかったのか?」
「そ、それはそうだが……」
「お前は、この街の防衛を任された部隊の、隊長なのだぞ! お前がそんなんでは、兵士までピリピリしてしまう。ゴブリン達が襲ってくるのは明日以降だから、兵士をちゃんと休ませろ。あれじゃあ明日まで持たないぞ」
「それは本当なのか!?」
「ああ、俺には、ゴブリン達が今どの位置にいるか、きちんと把握できている。だからお前も休め」
「ああ、分かった」
リルラは、部屋の外に居た兵士に、休みを取るように命令を伝えていた。
「それじゃあ、俺はちょっと出かけてくるから、お前はちゃんと休んでおけよ」
「ど、ど、何処に行くのだ!」
「武器の調達だよ、今の武器では、少し心もとないからな」
「どうせ、この街の武器屋には、もう武器は置いていない、全て町の防衛のために徴収してしまったからな」
「大丈夫だ、他の街に行って買ってくるから」
「他の街だと!?」
「昨日見せただろ? 瞬間移動の魔法があるから、直ぐに行ってこれる」
「そ、それじゃあ、私も一緒に付いていく」
「お前は隊長だろ。隊長が部隊を離れてどうするんだ」
「だ、だが……」
まさか、こんなに怯えているとは……
兵士たちがピリピリするわけだ。
「エレナ、すまないが、しばらくここで待っていてくれ」
「はい、分かりました」
エレナはリルラを座らせて、お茶を入れてやっている。
姫にお茶を入れさせるとか、お前何様だよ。
リルラのことはエレナに任せて、俺は【瞬間移動】でニッポの街に飛んだ。
~~~~~~~~~~
ガムドさんの店にやって来た。
「こんにちはー」
「ようセイジ、今日は一人か、珍しいな。属性強化の装備は手に入れたのか?」
「ええ、ひと通り揃いましたよ」
「おう、そうか、それじゃあ今日は何のようだ?」
「今日は俺用の武器を買おうかと思って」
「ん? 前に買っていった摸造刀はどうした?」
「摸造刀で歯がたたない奴がいて、もっといいのが欲しいんですよ」
「なんだと!? お前さん、何と戦ってるんだ?」
ガムドさんには、本当のことを言っておいたほうがいいよな。
「ゴブリンプリンス」
「プリンス!!? マジか!」
「マジです」
「分かった、ちょっと待っとけ」
ガムドさんは、店の奥から一本の剣を持ってきた。
「これが、家で扱ってるやつで一番いい武器だ」
ガムドさんが、剣を鞘から抜くと―
銀色に輝く剣が姿を表した。
なんか凄そう。
【鑑定】してみると―
┌─<鑑定>────
│【ミスリルソード】
│ミスリル銀で作られた剣
│魔力を通すと切れ味が増す
│レア度:★★★★
└─────────
「ミ、ミスリルですか」
「ああ、よくわかったな」
ガムドさんから、ミスリルソードを受け取ってみたが。
重さと言い、長さと言い、俺の手に丁度いい感じだ。
「お前さんは、刀が好きだったが。あの摸造刀よりいい刀となると。ドワーフの国まで行かないと手に入らないだろう。それまでは、このミスリルソードを使っとけ」
「ありがとうございます。いくらですか?」
「くれてやると言いたいところだが、さすがにそうは行かん。50000ゴールドだ」
「分かりました」
俺が、100ゴールド金貨を500枚だして、テーブルの上に置くと―
「ちょっ、おま!」
テーブルが、壊れそうになるほどに、軋んでいた。
「即金かよ!」
「不味かったですか?」
「少しずつ払わせて、その間の利子として、毎回酒を要求しようと思ってたのに。俺の計画が台無しだよ」
「それは、すいません。そんなに心配しなくても、ちょくちょく顔を出しますよ」
「そうか、それならいいんだ」
俺とガムドさんは、馬鹿笑いをしながら握手を交わした。
~~~~~~~~~~
リルラの所へ戻ってくると―
エレナとリルラが、優雅にお茶をしていた。
「帰ったぞ」
「「お帰りなさい」」
エレナならいいが、リルラに出迎えられるのは、ちょっと変な感じだ。
「それで、どのような武器を買ってきたのだ?」
エレナが相手をしててくれたおかげで、すっかり落ち着きを取り戻している様だ。
「これだ」
俺が剣を鞘から抜いて見せると、二人は目を輝かせていた。
特にリルラの目の輝きは、恋する乙女のような目だ。
「それは、ミスリルではないか!」
「ああ、そうだよ」
「私の細剣もミスリルなのだ!」
リルラはそう言って、自分の細剣を取り出し、俺の剣に重ねてくる。
「おう、リルラもミスリルなのか」
「う、うん。お、おそろいだな」
リルラはそう言って、俺ににっこり微笑みかけてくる。
リルラはそんなにミスリルが好きなのか。
もしかして、ミスリルフェチとかそういうのなんだろうか?
「さて、そろそろ時間も遅いし、俺達は宿屋を探すか」
俺が、剣をしまって、お暇しようとすると―
「ま、まて。ここに泊まっていけばいいではないか」
「ここ? ここは貸し切りじゃないのか?」
「部屋ならあるし。もしあれなら、こ、こ、この部屋に泊まっていってもいいのだぞ!」
「この部屋って、ベッドは1つしか無いじゃないか」
「そ、そうだな……」
結局、俺とエレナは、リルラの両隣の部屋を空けてもらって、そこに泊まることになった。
リルラが、なんか変になって来てしまった。
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