100.スガ防衛戦
翌朝、目が覚めると、となりでエレナが、すやすやと気持ちよさそうに眠っていた。
昨日は、魔道具を使ってエレナの全身を解してあげていたら、あまりの気持ちよさからか、途中で寝てしまったのだ。
秋葉で、あれと同じものを購入して。これから毎日、エレナのあんなところやこんな所を、解しまくってあげよう。そうしよう。
そういえば、俺はスガの街の防衛に来ているんだった。
エレナの寝顔を見ていたら、危うく忘れるところだった。
マップを確認してみると、ゴブリン、ホブゴブリン、オーク、ハイオークが大量に集まってきていて。
さらに、ゴブリンプリンスも1匹確認できた。
とうとう、襲撃が始まるのだろう。
やっとエレナが起きてきた。
「エレナ、朝にもう一度バスルームを使うかい?」
「え、遠慮しておきます」
エレナは少し顔を赤らめて、拗ねてしまった。
拗ねてるエレナも可愛いな……
エレナの機嫌を、なんとか直し。
リルラに連絡を入れた所、イケブの街周辺では、まだ敵を見つけられていないとの事。どうやら、こっちに専念する事が出来そうだ。
俺達は、ルームサービスで朝食をゆっくり取り。
俺は【雷のネックレス+4】と、模造刀。
エレナは【氷の髪飾り+1】、【回復のネックレス+3】、右手に【魔力のロッド】、左手に【氷のロッド+1】を装備し。
満を持して、スガの街周辺に集まる魔物たちの、討伐を開始した。
~~~~~~~~~~
敵は、森の中の、かなり広い範囲に分散配置されているので、街に近付いているものから順に倒していく。
長期戦に備えて、MPはなるべく温存し。
物理攻撃で各個撃破していった。
俺が、模造刀で敵を斬り、エレナが殴り飛ばす。
回りこまれないように、左右に移動しながら、最前線の敵を削り続けていたのだが。
徐々に押されて、街に近づけてしまう結果になっていた。
とうとう、敵が森を抜け、森と街の間に広がる草原地帯へと、戦場が移動してしまった。
森から次々に出てくる魔物たち。
俺達の戦いの音を聞いた街の住人たちも、魔物の襲来に気づき、街の門を閉めて。
治安維持の為に少しだけ残っていた兵士や冒険者たちが、街の防衛のために集結しつつあった。
「このままじゃ、魔物が街まで到達してしまう。作戦を変えよう」
「はい。どうするんですか?」
「俺がゴブリンプリンスを倒しに突っ込むから、エレナは街の方へ下がりつつ、魔法で魔物の数を減らしていってくれ」
「わ、分かりました。セイジ様、お気をつけて」
「おう!」
俺は、小物を無視しつつ、ホブゴブリン、ハイオークを優先して倒しながら、ゴブリンプリンスの方へ、突撃を開始した。
エレナは、近づく敵を殴り飛ばしながら、密集した敵に向かって【雹】を発動させ、魔物の進行を何とか食い止めていた。
しかし、その代償に、エレナのMPは減る一方だった。
俺が、敵集団のど真ん中にたどり着くと、そこにゴブリンプリンスが待ち構えていた。
鑑定をしてみると―
┌─<ステータス>─
│名前:インバインニクス
│職業:ゴブリンプリンス
│
│レベル:40
│HP:13105
│MP:1681
│
│力:305 耐久:305
│技:170 魔力:168
│
│スキル
│【情報魔法】(Lv2)
│【肉体強化魔法】(Lv3)
│【体術】(Lv3)
│【剣術】(Lv3)
│【棒術】(Lv4)
└─────────
名前があるのか。
なにげに【情報魔法】を持ってるとか、凄いな。
『お前、人間のくせに強いな』
プリンスは、流暢なゴブリン語で話しかけてきた。
ゴブリンやオークは、全員片言なんじゃなかったのか?
やはり【情報魔法】を持ってるだけあって、頭がいいのかな?
『ずいぶん、おしゃべりなゴブリンだな』
『ほう! 人間のくせに喋れるのか! 面白い奴だな、お前』
『悪いが、お前たちにこれ以上、進ませるわけにはいかないぞ』
『人間風情が、偉そうに。もしかして、弟を倒したのはお前か?』
『ああ、そうだ』
本当はエレナだけど。
『あいつは、我らプリンスの中で最弱。あいつに勝ったくらいで自惚れるようでは、高が知れるというものだ』
確かに前回のプリンスとは、大きさも、ステータス的にも、全然比べ物にならない。
しかし、ゴブリンプリンスは全部で何匹いるんだろう? 四天王とか、三人衆とか言ってくれれば分かるんだけど。
『まあ、こんな敵の只中に、たった一人で突撃してくるようなバカは、直ぐにあの世行きだがな』
プリンスが、すっと手を上げると―
周りを守るホブゴブリンとハイオークが、俺の周りを取り囲んだ。
『お前ごとき、俺が戦うまでもない。お前たち、殺ってしまえ!』
「「グオー!」」
ホブゴブリンとハイオーク達は、一斉に雄叫びを上げたが、俺の周りをぐるぐる回るだけで、一向に攻撃してこない。
怖がっているのか?
面倒くさくなった俺は―
「【雷精霊召喚】! 【バリア】×5」
前後左右と上を、雷と音を遮るバリアで囲むと同時に―
雷精霊の広範囲落雷が炸裂し。
視界が真っ白になると同時に、地面から物凄い地響きが伝わってきた。
視界が元に戻ると、ホブゴブリンとハイオークは、黒焦げになって地面に転がっており。
ゴブリンプリンスは、体を丸くしていた。
雷精霊は、場の空気を読んだのか、さっさと俺の体の中に帰っていった。
マップで確認してみると、魔物の集団の中心部分がぽっかりと穴が空いて、ドーナツ状になっていた。
そして、そのドーナツの中心に、1つの点が……
『痛てー! 人間、何をしやがった。うわ、部下たちが!?』
ゴブリンプリンスは健在だった。
さすがプリンス、アレを耐えるとは……
【鑑定】してみると、HPは3分の1しか減ってなかった。
『まさか、こんな隠し球を持っていたとはな。仕方ない、こっちも隠し球を出すか』
プリンスはそういって、何やら魔石のようなものを取り出した。
『出よ! ペット達!』
プリンスが、アイテムを投げると―
魔石のようなものから、3匹の『虎』が出現した。
【魔物玉】か!
虎は、色が白黒で、大きさもデカくて、ゴミ清掃車くらいある。
3匹の虎は「ガオン」と低い声で鳴いて、プリンスの周りに集まった。
『どうだ、可愛いだろ。俺のペットたち』
3匹の虎は、プリンスにスリスリしている。
プリンスも虎もサイズがデカいため、ちょうど縮尺があって、普通な感じに見えてしまう。
【鑑定】してみると―
┌─<ステータス>─
│種族:大虎猫
│
│レベル:35
│HP:3054
│
│力:153 耐久:153
│技:153 魔力:102
└─────────
『大虎猫』という種族らしい。
こいつらも、なにげに強いな。
『お前たち、行け!』
プリンスが合図すると、大虎猫達は一斉に飛びかかってきた。
それをジャンプで躱すと―
3匹の中で一番小さな奴が、一番大きな奴の背中を踏み台にしてジャンプし、俺に追い付いてくる。
やばい!
とっさに【バリア】を張ったが、小さい大虎猫の攻撃がバリアを破壊し、ヤツの爪が俺の体を捕らえ、攻撃を食らって吹き飛ばされてしまった。
バリアが緩衝材になったために、ダメージはそれほどではなかったが。吹き飛ばされて自由が効かない。
飛ばされた先の着地地点を見てみると、中くらいの大虎猫が先回りして、待ち構えている。
「【電撃】!」
待ち構えている大虎猫に向かって、電撃を放つと。
そいつの動きがしびれて止まったので、顔を踏み台にして、着地した。
後ろからの『危険』を察知して振り返ると、小さいやつが後ろから追撃して来ている。
しかし、俺が着地したことに驚いて、攻撃のテンポが遅れている。
俺は、向かってくる小さいやつに向かってジャンプし、逆に模造刀で攻撃してやった。
小さい奴は爪で模造刀を受け止めたが、俺の攻撃の勢いを殺すことが出来ず。後ろに吹き飛んだ。
地面に激突するかと思われたが、ぎりぎりの所で、大きい奴が受け止め、崩れるかと思った体勢を立てなおしてしまった。
なんという連携攻撃。
結構、手強いな。
とうとう100話目です。
ご感想お待ちしております。




