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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
戦争解決編
108/438

099.リルラの覚悟

 貴族連合会議が終了し、各人ぞろぞろと退出する中、俺とエレナは、コソコソと話をしていた。


「セイジ様、これからどうするおつもりですか?」

「しばらくは、スガとイケブの街の警戒をする必要があるから、今日はスガの街に泊まっておこう」

「そうですね、そうしたほうがいいですね」


 そんなことを話していると、ロンドが近寄ってきた。


「エレナ様、あとセイジも、ちょっとした食事会をするので、よろしければいかがですか?」

「俺は、おまけかよ」


「申し訳ありません。私は、行かなければならない所がありますので、参加できません」


 呆気にとられるロンドを尻目に、エレナは俺の手を取って、スタスタと会議場を後にした。



「エレナ、食事会に出なくても良かったのか?」

「セイジ様、これからスガに行かれるんですよね」

「ああ」


 エレナは、心配そうな顔で俺を見上げてくる。


「エレナ、そんなにスガとイケブの街が心配なのか?」

「はい……」


「分かった、じゃあ、今直ぐに行こう」

「はい!」


 エレナは、嬉しそうに俺に抱きついてきた。


「エ、エレナ様! 何をなさっているのですか!?」


 やべえ、ロンドに見られた。

 でも、まあいいか。


「悪いな、ロンド」


 俺はそう言い残して、【瞬間移動】した。


「エ、エレナ様! セイジ! ……き、消えた!?」


 ロンドはしばらく、その場に立ち尽くしていた。


~~~~~~~~~~


「あれ? セイジ様、ここはイケブの街では?」

「ああ。まずは、リルラに狙われてる事を、忠告しておこうと思ってな」

「そうでした。そのほうがいいですね」


 取り敢えず、地図上の魔物の数は、それほど増えていない。しばらくは大丈夫そうだ。


 リルラの場所をビーコンで確認して。

 泊まっていると思われる、高級宿屋にやって来た。


「あいつ、こんな所に泊まってるのか」



「この宿屋は、貸し切りだ。別を当たれ」


 宿屋に入ろうとしたら、入り口を守っていた兵士に、止められてしまった。


「リルラに取次ぎを頼む、エレナとセイジが来たと伝えてくれ」

「あ、あなたは!」


 どうやら気づいてくれたみたいだ。


「エレナ様ではありませんか!」


 気づいたのはエレナの方かよ!


「今直ぐ、お取次ぎいたします!」


 兵士は急いで取次ぎをしてくれて、リルラに会うことが出来た。



「エレナ様、セイジ。昨日は戦勝会の途中で居なくなってしまったが、どこに行っていたのだ?」


 リルラはスイートルーム的な部屋で、優雅にお茶をしていた。のんきなもんだ。

 しかも、珍しい事に、リルラが鎧を着ていない。鎧を着ていない姿を見たのは、アヤが鎧を破壊して、素っ裸にしてしまった時以来だ。


「ずいぶん、のんきなものだな」

「なんだと!」


「新たに入手した情報によると、ゴブリンプリンス率いる部隊が、ここを狙っているらしい。せいぜい気を付けておけ」

「ゴ、ゴブリンプリンスだと!?」


 リルラは、その名前を聞いて、急に顔が青ざめていった。


「ど、どうするのだ。は、早く逃げなければ」

「逃げる? 街の人達はどうするつもりだ?」

「街の者などどうでもいい、私は高貴な家の出なのだぞ!」

「お前な~、昨日は勝利を一緒に祝った奴等なのに、そんなに簡単に見捨てるのか?」

「だ、だが、しかし…… 相手は、ゴブリンプリンスなのだぞ!」


「危ない時は、助けに来てやるから。それまで持ちこたえるだけでいい」

「助けに来る? お前は私をずっと護衛する為に来たのではないのか?」

「俺はエレナの護衛だ。俺とエレナはスガの街の防衛に当たる。お前はその間、このイケブを守れ」


「スガだと!? お前は、私とスガの街と、どっちが大事なんだ!?」

「スガの街だ!」

「そ、そんな……」


 リルラは、ブルブル震えだしてしまった。


「直ぐに助けに来るから、そんなに心配しなくても大丈夫だ」

「だが、しかし、スガからここまで、急いでも2日はかかるのだぞ!」

「大丈夫。俺には直ぐに来れる魔法があるから」

「魔法だと! そんなのがあるのか? ほんとなのだな?」


 なんかリルラが、すっかり怯えてしまっている。どうしたものかな。


「リルラ、よく聞け。この難局で、お前がこのイケブの街を守りきれば、お前は英雄だ」

「英雄!?」

「しかし、逃げ出せば…… お前は、臆病者、卑怯者と罵られ。お前の家も、お前と同じように(さげす)まれてしまう事になる」

「わ、分かった……」


 リルラは急にキリッとした顔つきになり、しっかりと頷いた。



「もし、何かあったら、これで俺に知らせろ」


 俺は、前に作った双子魔石式糸電話を、片方だけリルラに渡した。


「これは何だ?」

「離れていても話が出来る、俺の作った魔道具だ」

「それは凄いな!」


 もう片方をエレナに渡し、使い方を教えたら。

 二人して楽しそうに遊んでいやがる。

 ついさっきまで、泣きそうになったりしていたのに……


「リルラ、それでは後は頼んだ」

「ああ、分かった」

「そうそう、索敵を優先して行うようにしておいてくれ」

「そうか、そうだな」


 俺達は別れを告げ、わざとリルラの目の前から【瞬間移動】を使って、スガの街に飛んだ。


~~~~~~~~~~


 スガの街に移動すると―

 遠くの森に、多くの魔物が居ることをマップで確認できた。


 けっこう数が多い。

 しかも、ゴブリンや、オークだけではなく、ホブゴブリンやハイオークなども、何匹か混じっている。


 少し距離が有るので、スガの街を襲うとしたら、明日になるのだろう。



 俺が、そんな心配をしていると―


『リルラさん、聞こえますか?』

『エレナ様。はい、聞こえます』


 エレナとリルラは、まだ糸電話で遊んでいる。

 距離が離れても使えるかを、きちんとチェックしてなかったが、取り敢えず問題無さそうだ。



 俺達は、ゴブリン達が襲ってきそうな、街の北側に近い宿屋を探した。


 別に、わざとその宿を選んだわけじゃない。

 街の北側の宿を探したら、そこしかなかっただけだからな!



 俺達の見つけた宿は、建物全体が、何故かピンク色だった……


「セ、セイジ様、ここに泊まるのですか?」

「魔物が攻めてきた時、ここなら真っ先に気がつく事ができるからな」

「そ、そうですよね。街の為ですものね」


 俺とエレナは緊張しながら、宿屋に入った。


「いらっしゃい」


 受付は、客の顔が見えないように、変な位置に小窓があり。そこからお金や鍵の遣り取りをする形になっていた。


「いっぱt……いっぱく頼む」

「一番いい部屋しか開いてないが、いいかい?」

「ああ、それで頼む」

「それじゃあ、一泊300ゴールドだ」


 た、高いな。


 しぶしぶ300ゴールドを支払い、鍵を受け取って部屋に向かった。


 部屋に着くと、部屋中ピンク色だった。目がチカチカする。

 こんな所でエレナといっぱt、一泊するのか!?


「セイジ様、バスルームがあります」


 エレナが指差す方を見ると、バスルームがあった。

 あれ? 何かおかしい。


 そう、部屋の中からなのに、そこがバスルームだと直ぐに分かった。

 バスタブが部屋の中から見えているからだ。

 なぜ見えているかって? 部屋とバスルームの間が、ガラス張りだからだ。


 こっちでガラスは、高級品なんだろうに。こんな無駄遣いをしているとは……


「セ、セイジ様、このバスルーム。みえて……」

「エレナ先に入っていいぞ」

「で、でも……」

「ほら、カーテンがあるだろ。これを閉めれば」

「あ、そんなふうになっていたんですね」


 エレナは、いそいそとバスルームに入っていった。


 しかし、どうしたことか。

 このカーテン、薄くて…… 薄っすら見え……

 いやなんでもないです。


 俺が一生懸命にカーテンの鑑賞をしていると、エレナが石鹸の匂いをさせながら、バスローブ姿で出てきた。

 俺は、とっさに目をそらしてしまった。


「セイジ様も、どうぞ」

「あ、ああ」


 バスルームに入ると、光の関係なのか、中から外は見えない事に気がついた。なるほど、こうなっているのか……

 俺は、もしものときのために、全身を綺麗に洗った。


 バスルームから出ると、エレナは顔を真っ赤にしていた。


「セイジ様、このカーテン、薄いんですね……」


 どうやら、エレナもカーテンを鑑賞していたらしい。

 そして、エレナはモジモジしている。


 ん? エレナはモジモジしながら、手に何かを持っている。


「エレナ、その手に持っているものは何だ?」

「あ、これですか。部屋の中に置いてあったのですが、何かの魔道具のようです。なんの魔道具なのでしょう?」

「ナンダロウナー、肩こりをほぐすための物かな?」


「肩こりをほぐす魔道具だったのですね」


 エレナが、魔道具を肩に持って行き、魔力を送ると。魔道具は振動を始めた。


「セイジ様、気持ちいいです」

「き、気持ちいいのか」

「はい、気持ちいいです」


 俺は、エレナの言葉を、深く心に刻みつけた。


プロローグと閑話を入れると、前回で100話でした。

そんなおめでたい時に、こんな話で申し訳ないm(__)m


ご感想お待ちしております。

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[良い点] ストーリーとても面白いです。社会人生活で活躍できる魔法(バグチェック魔法など)は心躍ります [気になる点] 今回の防衛戦もそうですが、冒険者活動でも主人公が自分の成果をしっかり報告せず、正…
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