094.くっ殺?
『警戒』を発した追跡用ビーコンは、【小麦粉】の袋に付けた物だった。
どうやら、物にビーコンを付けた場合、盗難などにあった時に『警戒』を発するようだ。
俺は自分の部屋で、【小麦粉】の袋が盗まれる所を、ただ見ていることしか出来なかった。
犯人は複数、オーク面の男達が、【小麦粉】だけではなく、他の食料も洗いざらい盗んでいる。
犯人たちは、夜の闇に紛れて、盗んだ食料をスラム街に運び込んでいった。
スラム街の倉庫らしき建物に食料を運び終えた犯人たちは、【人化の魔石】を置いてオークの姿に戻った。
明日、異世界に戻ったら、取り返しに行ってやるか。
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翌朝、リルラの様子を見てみると、「くっ、殺せ!」的な事態には、まだなっていなかったので。
午前中は、小麦粉を仕入れたり、部長に精力剤を届けに行ったりして過ごしていたのだが。
昼前になって、今度こそリルラの追跡用ビーコンが、『危険』を発した。
俺とエレナが、急いでイケブの街に到着すると……
イケブの街の北門の外で、激しい戦闘が繰り広げられていた。
「エレナは、怪我人の治療を頼む」
「はい」
エレナは、戦場で怪我をしている人たちの治療を開始した。
俺は、最前線に移動して、オークの集団に向けて、【水流カッター】を発射し、なぎ倒していった。
なぜ、わざわざ【水流カッター】なのかというと、大勢の人が見ている前で雷を使うわけにいかない。雷の魔法以外で一番強いのが【水流カッター】という訳だ。
雷以外の魔法も、もっと練習しとけばよかった。
エレナは、怪我で戦線利達していた兵士の傷を治し、その兵士を戦線に復帰させることで、戦いに貢献していた。
俺とエレナの参戦により、戦線は有利になりつつあったのだが……
そういえば、リルラの姿が見えない。
追跡用ビーコンの位置を調べてみると、リルラは戦闘エリアから遠ざかりつつあった。
一体、何をしているんだ?
リルラの現状を映像で確認してみると―
手足をそれぞれ4匹のオーク?に抱えられ、大の字に担ぎ上げられて、連れ去られている最中だった。
捕まっちまったのかよ!
しかし、このオーク達、普通のオークより体が一回りほど大きい。上位種なんだろうか?
音声を聞いてみると……
「くっ、殺せ」などとは言っておらず。
「だずげで~!!」
と、涙と鼻水を垂らしながら、泣き叫んでいた。
「おがざれる~!! 初めでを、オークにだなんで、いやだぁ~~!!」
なんか、『鉄壁のリルラ』のイメージが……
「ブヒブヒ」「ぶひー」
よく聞いてみると、オークが何か会話しているようにも聞こえる。
試しに【言語習得】を使ってみると―
┌─<言語習得>─
│【オーク語】を習得します
│ 習得レベルを選択して下さい
│
│・レベル1(消費MP:50)
│ 片言で話が出来る
│
│・レベル2(消費MP:100)
│ 日常会話程度は話ができる
│
│・レベル3(消費MP:200)
│ スラスラと会話ができる
└─────────
やはり、オーク達は、オーク語で話をしていたようだ。
MPを200使って、レベル3【オーク語】を習得してみると―
『この、人間の雌、うるさい』
「まったくだ。しかも、この雌、凄く、ブサイク。ゴブリン王、怒るかも』
『鎧、高そう。怒られたら、鎧、剥がして、使う』
『それ、いい考え。鎧、剥がしたら、ブサイクな雌、捨てる』
すごい言われようだ……
おそらく、オークと人間では美的感覚が違うのだろう。
流石にかわいそうなので、【瞬間移動】で、リルラを連れ去っているオーク達の前に移動した。
『ちょっと待ちな』
オーク達は、急に現れた俺に驚き、急ブレーキを掛けて止まった。
『お前、誰だ? 人間、何故、喋れる?』
『その雌を、助けに来たんだ』
『こんな、ブサイクな雌、助けに、来たのか? お前、物好き』
オークに笑われてしまった。くそう!
【鑑定】してみると、『オーク』ではなく、『ハイオーク』だった。やっぱり上位種か。
『お前たちこそ、ブサイクな雌を拐ってどうするつもりだ? まさか交尾するつもりじゃないだろうな?』
『うげえ、そんな事、するか! これと、する位なら、ブタの方が、ましだ!』
ひどい言われようだが、当然リルラは話の内容を理解することは出来ず、「犯される!」とか「殺される」とか騒いで、暴れている。俺が来ていることすら、気づいていない。
俺が模造刀を取り出して構えると、ハイオークは二匹だけ前に出て、残った二匹がリルラを担いでいる。
俺とハイオーク二匹は同時に駆け出したが、片方に電撃をぶつけたことで足が止まり、ハイオークの連携が崩れた。
ハイオークが腰の剣を抜きながら横薙ぎにしてくるのを、ジャンプで躱しながら、ガラ空きになった首を、すっぱり切り落とした。
首が無くなったハイオークの肩を踏み台にして、電撃でしびれていたハイオークに飛びかかる。
電撃から復帰したハイオークが俺を追って顔を上げると同時に、その首もコロンと転がった。
リルラを抱えていた二匹は、リルラを後ろに放り出して、腰の剣を抜いて構えを取った。
リルラは、急に地面に投げ出され。
「ぎゃー! いだい! いだい!! 乱暴じないで!」
リルラは、オーク達に乱暴されたと思ったらしく、激しく泣き叫んでいた。
「あのー、リルラさん?」
「ぎゃー、オークが喋った!!」
もう、パニック状態で、何を言っても、ぎゃあぎゃあ騒ぐばかりだ。
俺は、うんざりして、しばらく黙っておくことにした。
リルラの騒ぎ声をBGMに、俺とハイオーク二匹は睨み合った。
ハイオークは、左右から俺を挟むように、攻撃を仕掛けてきた。
左右から同時に振り下ろされるハイオークの剣、俺は【瞬間移動】でそれを躱すと同時に、右のハイオークの後ろに移動し、その背中を袈裟懸けに斬り下ろした。
斬られたハイオークは悲鳴を上げながら、斬られた背中に、両手を必死に回そうとしているが。次の瞬間、その両腕も俺に斬られて、地面に落ちた。
激しく出血したハイオークは、そのまま倒れて、動かなくなった。
最後の一匹は、【電光石火】で体を貫通してしびれさせた後、後ろから首をはねた。
俺が、クッキングペーパーで模造刀の汚れを拭きとって鞘に納めていると―
最後にはねたハイオークの首が、コロコロ転がって、うずくまっているリルラの頭にゴツンと当たった。
やっと落ち着きを取り戻しつつあったリルラが、顔を上げると―
目の前に、すごい形相のハイオークの生首が……
「ぎゃー!!!!」
リルラは、そのまま気を失ってしまった。
オークがトラウマにならないといいけど……
まあ、気を失ってたほうが、運ぶのには都合がいいや。
俺は、リルラを抱き上げて、エレナの元へ【瞬間移動】した。
あまりにも「くっころ」の要望が多かったので、ホントはもうちょっと後だったこの話を、無理やり先に持ってきました。
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