092.イケブの街を守るのは? ☆
みんなで属性強化魔石を作った次の日、俺達は宿屋で朝食を食べていた。
俺は、マップ上に大量のオークが表示されているのを見て、困っていた。
おそらく夜の内に、集まってきたのだろう。
「兄ちゃん、浮かない顔してどうしたの?」
「この街の周辺にオークが、大量に集まってきている」
「え!? そのオークは、街を襲ってくるのではないですか?」
「ああ、そうかもしれない」
「倒しに行くの?」
「行かない」
「なんで?」
「オークは、広範囲にバラけて行動しているから、全部倒すのに、時間がかかりすぎてしまう」
「じゃあ、どうするの?」
「俺達に出来るのは、冒険者ギルドに報告するくらいだ」
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俺達は、冒険者ギルドにやってきた。
「すいません、報告したいことがあります」
「はい、何でしょうか?」
受付の若い女性は、ちょっと退屈そうに答えた。
暇なんだろうか?
「えーっと、森で沢山のオークを見かけました。冒険者ギルドの方で、何かしらの対策をしないとマズイかと思います」
「え? 本当ですか!?」
「はい、間違いありません」
「分かりました、ギルド長に報告してきますので、少々お待ちください」
受付の女性は急に緊張した顔をして、ギルドの奥へ報告しに行き、しばらくして戻ってきた。
「ギルド長が、お会いしたいと申しております。すいませんが、お願いできますでしょうか?」
「あ、はい」
案内されて奥の部屋に入ると、ボサボサ頭のおじさんが、出迎えた。
「あんたらが、オークを見たって人かい?」
「はい、そうです」
マップ上で見たオークを、なんとか目撃した風に説明し終わると。
おじさんは、ボサボサの頭をガリガリかきむしりながら。
「まいったな~ 今この街は冒険者が少ないんだよな~」
「やはり皆さん、戦争に参加しに行ってしまってるんですか?」
「そうなんだよ。ちなみに、あなた達は?」
「俺達も、シンジュの街へ向かう予定です」
「ですよね~ まあでも、この件はこちらで何とかしますので、あなた達はもう結構です。ご報告ありがとうございました」
「はあ、では、これで失礼します」
俺達は、報告を終えて冒険者ギルドを後にした。
「セイジ様、よかったんですか?」
「俺の体が2つあったら、良かったんだけどね~ とりあえず、この街のどこかに追跡ビーコンを置いておくか」
「それなら安心ですね」
「さて、どこにビーコンを置くかな? ってあれ?」
そこには見覚えのある顔が……
「お、お前達は! セイジとアヤ! エレナ様も!」
そこにいたのは、『鉄壁のリルラ』こと、リルラ・ライルゲバルトだった。
「あんた、こんなところで何をしてるんだ?」
「それは、こっちの台詞だ!」
「もしかして……」
貴族連合騎士団長の居場所を、ビーコンで確認すると、奴もこの街にきていた。
「貴族連合騎士団長と一緒に、戦争に参加しに来たのか」
「そのとおりだ! それより、お前の目的を教えなさい!」
「俺達は、この街の近くでオークの大群を見かけたから、冒険者ギルドに報告しに来たんだよ」
「なんだと! オークの大群が、この街に迫ってきているのか!?」
「ああ、そうだ。しかし、冒険者の多くが戦争に参加しに、シンジュの街に行ってしまって、手薄になってしまっているんだ」
「うーむ……」
リルラは、オークが迫っていると聞いて、考えこんでしまった。
「おーい、どうしたんだ? 考えこんで」
「お前、ちょっとお父様のところに来なさい」
「なんだよ、急に」
「エレナ様も、ご同行お願いできないでしょうか?」
「はい、構いませんよ」
リルラに連れられて街の外に出ると、そこには兵士キャンプが作られており、500人ほどの兵士が体を休めていた。
結構な速度で移動してきたようで、兵士たちはかなり疲れている様子だった。
そして、キャンプの中央には、立派なテントが建てられていて、俺達はそこに案内された。
「お父様、至急お耳に入れたいことが」
「どうしたリルラ、ってお前はマルヤマ・セイジ! 何故ここに!」
「何故って、リルラに連れて来られたんだよ」
「リルラ、何故こいつを連れてきた」
「お父様、聞いてください。こいつの話によると、現在このイケブの街に、オークの大群が迫っているとの事です」
「オーク? それがどうした?」
「この街の兵士や冒険者は、戦争に参加するために、シンジュの街へ出向いてしまっていて、手薄になってしまっています。このまま、この街がオークに襲われたら、街に犠牲が出てしまいます」
「知った事か! これから戦争が始まるのだ。それは何よりも優先される」
「ですが、お父様」
「くどい!」
騎士団長に、ゴブリンとオークに騙されて戦争になっていることを話しても、意見は曲げないだろうな。
「お父様、それでは、わたくしがここに残って、街を死守します」
「分かった、100名ほど兵士を貸してやるから、勝手にしろ」
「ありがとうございます」
『鉄壁のリルラ』の異名を持つくらいだ、防衛戦にも強いのだろう。
俺は、万が一の保険のため、騎士団長の追跡用ビーコンをリルラに移しておいた。
「用が済んだのなら、俺達は行かせてもらうぞ」
「待て、お前は何をしにここに来たのだ?」
「俺達は、戦争を止めに来たんだ」
「戦争を止める、だと!?」
「まあ、お前はお前の仕事をすればいい」
「言われなくても、そのつもりだ!」
その後、騎士団長は100名の兵士をリルラに残して、シンジュの街へ急いで出発していった。
「リルラ、ほんとに良かったのか?」
「国を守るのは、貴族たる私の役目!」
「街の人達を守る為に頑張るとは、お前も結構いいやつだったんだな」
「は? 人達? 貴族が守るべきは領地であって、平民ごときではありませんよ」
駄目だこりゃ!
騎士団長の娘vsオーク戦が楽しみです。
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