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時空魔法で異世界と地球を行ったり来たり  作者: かつ
戦争解決編
100/438

092.イケブの街を守るのは? ☆

 みんなで属性強化魔石を作った次の日、俺達は宿屋で朝食を食べていた。


 俺は、マップ上に大量のオークが表示されているのを見て、困っていた。

 おそらく夜の内に、集まってきたのだろう。


「兄ちゃん、浮かない顔してどうしたの?」

「この街の周辺にオークが、大量に集まってきている」

「え!? そのオークは、街を襲ってくるのではないですか?」

「ああ、そうかもしれない」


「倒しに行くの?」

「行かない」


「なんで?」

「オークは、広範囲にバラけて行動しているから、全部倒すのに、時間がかかりすぎてしまう」


「じゃあ、どうするの?」

「俺達に出来るのは、冒険者ギルドに報告するくらいだ」


~~~~~~~~~~


 俺達は、冒険者ギルドにやってきた。


「すいません、報告したいことがあります」

「はい、何でしょうか?」


 受付の若い女性は、ちょっと退屈そうに答えた。

 暇なんだろうか?


「えーっと、森で沢山のオークを見かけました。冒険者ギルドの方で、何かしらの対策をしないとマズイかと思います」

「え? 本当ですか!?」

「はい、間違いありません」

「分かりました、ギルド長に報告してきますので、少々お待ちください」


 受付の女性は急に緊張した顔をして、ギルドの奥へ報告しに行き、しばらくして戻ってきた。


「ギルド長が、お会いしたいと申しております。すいませんが、お願いできますでしょうか?」

「あ、はい」


 案内されて奥の部屋に入ると、ボサボサ頭のおじさんが、出迎えた。


「あんたらが、オークを見たって人かい?」

「はい、そうです」


 マップ上で見たオークを、なんとか目撃した風に説明し終わると。

 おじさんは、ボサボサの頭をガリガリかきむしりながら。


「まいったな~ 今この街は冒険者が少ないんだよな~」

「やはり皆さん、戦争に参加しに行ってしまってるんですか?」

「そうなんだよ。ちなみに、あなた達は?」

「俺達も、シンジュの街へ向かう予定です」


「ですよね~ まあでも、この件はこちらで何とかしますので、あなた達はもう結構です。ご報告ありがとうございました」

「はあ、では、これで失礼します」


 俺達は、報告を終えて冒険者ギルドを後にした。


「セイジ様、よかったんですか?」

「俺の体が2つあったら、良かったんだけどね~ とりあえず、この街のどこかに追跡ビーコンを置いておくか」

「それなら安心ですね」

「さて、どこにビーコンを置くかな? ってあれ?」


 そこには見覚えのある顔が……


「お、お前達は! セイジとアヤ! エレナ様も!」


 そこにいたのは、『鉄壁のリルラ』こと、リルラ・ライルゲバルトだった。

挿絵(By みてみん)

「あんた、こんなところで何をしてるんだ?」

「それは、こっちの台詞だ!」


「もしかして……」


 貴族連合騎士団長の居場所を、ビーコンで確認すると、奴もこの街にきていた。


「貴族連合騎士団長と一緒に、戦争に参加しに来たのか」

「そのとおりだ! それより、お前の目的を教えなさい!」

「俺達は、この街の近くでオークの大群を見かけたから、冒険者ギルドに報告しに来たんだよ」

「なんだと! オークの大群が、この街に迫ってきているのか!?」

「ああ、そうだ。しかし、冒険者の多くが戦争に参加しに、シンジュの街に行ってしまって、手薄になってしまっているんだ」

「うーむ……」


 リルラは、オークが迫っていると聞いて、考えこんでしまった。


「おーい、どうしたんだ? 考えこんで」


「お前、ちょっとお父様のところに来なさい」

「なんだよ、急に」

「エレナ様も、ご同行お願いできないでしょうか?」

「はい、構いませんよ」


 リルラに連れられて街の外に出ると、そこには兵士キャンプが作られており、500人ほどの兵士が体を休めていた。

 結構な速度で移動してきたようで、兵士たちはかなり疲れている様子だった。


 そして、キャンプの中央には、立派なテントが建てられていて、俺達はそこに案内された。



「お父様、至急お耳に入れたいことが」

「どうしたリルラ、ってお前はマルヤマ・セイジ! 何故ここに!」

「何故って、リルラに連れて来られたんだよ」

「リルラ、何故こいつを連れてきた」


「お父様、聞いてください。こいつの話によると、現在このイケブの街に、オークの大群が迫っているとの事です」

「オーク? それがどうした?」

「この街の兵士や冒険者は、戦争に参加するために、シンジュの街へ出向いてしまっていて、手薄になってしまっています。このまま、この街がオークに襲われたら、街に犠牲が出てしまいます」

「知った事か! これから戦争が始まるのだ。それは何よりも優先される」

「ですが、お父様」

「くどい!」


 騎士団長に、ゴブリンとオークに騙されて戦争になっていることを話しても、意見は曲げないだろうな。


「お父様、それでは、わたくしがここに残って、街を死守します」

「分かった、100名ほど兵士を貸してやるから、勝手にしろ」

「ありがとうございます」


 『鉄壁のリルラ』の異名を持つくらいだ、防衛戦にも強いのだろう。

 俺は、万が一の保険のため、騎士団長の追跡用ビーコンをリルラに移しておいた。


「用が済んだのなら、俺達は行かせてもらうぞ」

「待て、お前は何をしにここに来たのだ?」


「俺達は、戦争を止めに来たんだ」

「戦争を止める、だと!?」


「まあ、お前はお前の仕事をすればいい」

「言われなくても、そのつもりだ!」



 その後、騎士団長は100名の兵士をリルラに残して、シンジュの街へ急いで出発していった。


「リルラ、ほんとに良かったのか?」

「国を守るのは、貴族たる私の役目!」


「街の人達を守る為に頑張るとは、お前も結構いいやつだったんだな」

「は? 人達? 貴族が守るべきは領地であって、平民ごときではありませんよ」


 駄目だこりゃ!


騎士団長の娘vsオーク戦が楽しみです。


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