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上から廃材を落として敵を混乱に陥らせると当然目立つ。
街に広がる炎が宇宙を焦がすかのように真っ赤に染め上げ明るく照らされたその中で身体一つ自由に飛び回り突然そいつを起点に廃材が現れたらそりゃ誰でもこちらを向く。
敵は騎士を束ねる軍そのもの尚且つどうやら敵将も頭がいいと来たもんで小隊を乱す私を殺しに来る。
生き残っている弓兵や魔法使いは私への報復の為撃ち落とさんと頑張ってくる。
まぁコレはあまり精度が良くないようで当たらないが…。
「ヒャッハーッ!飛んでる虫を落とすのなんて簡単なことよ!我らが女神よ…かの者を殺めるワタシをお許しください…ってなぁッ」
宇宙を飛ぶ聖獣の中にはその背に神官を乗せている者もいる。
それは遠くからの攻撃に専念され黒い炎も届かない…つまりは無傷でこの戦場に赴いている者達。
その全てが私を狩ろうと羽根を羽ばたかせてやってくる。
炎が聖獣の口から放たれ急遽盾を虚空庫から取り出し防ぐが構えた方とは判断の方から頭のイかれた神官が槍を片手に突き刺そうと突進してくる。
私が盾を失ったらこの神官も炎のブレスで焼かれるというのに…死にものぐるいといった感じ私を殺そうとする。
「ぐっ…頭がイカれてやがるな」
「…レナッ!」
身体に槍が突き刺さり麻酔が効いたようなツンッとした感覚が脳へと伝わる。
そりゃ『飛翔』の魔術すら使わず自由落下に任せていたので急な攻撃は対応が出来ないしナイフを使って尚その魔術も急には展開できない。
そして刺されると同時に下からは悲鳴が上がった。
アルキアンの声だ…そう思い首を下に向け悪魔らしいといえるその姿を見た。
それと同時にアルキアンの周辺の戦況も見えた。
当主様が剣を持ち今この瞬間にも敵を斬り伏せており目線だけは私の方を見ている。
流石は当主と言った感じだ…その名に恥じぬ強さを持ち目で見なくても気配のみで敵を叩き斬っているのだろう。
アルキアンはまぁ私の事を見て驚いているように見えた。
何故私がここに居るのかわからないと言った感じなのだろうか?
そんな事を思い浮かべながら槍で横腹を貫かれ今正に槍の重さでバランスを崩し下へと落下しようとするその時になって今までノーコンだった矢と魔法が私へと向かってくる。
矢は太腿や喉や腹といったところに突き刺さり魔法は当たると同時に衝撃が身体に走り脳を揺らす。
何せ質量のある石や炎が豪速球で飛んでくるのだ…その衝撃と言ったら普通のキャッチボールで受けるような衝撃とは比にならない。
身体は飛来した石にぶつかり体勢を更に崩すと共にその石が身体を乗せてあらぬ方向へと吹っ飛んだ。
私の身体は下へと落ちる…口からは内臓が傷ついた事で血が溢れ矢が関節に運悪く刺さった事で動かしづらい。
「魔法部隊再びヨーイッ…放てッ!」
下へと落ちこの後どうしようかと並行思考の隅で考えていると戦場にそんな声が走り眼前に岩の雨が垂直の横殴りで降り注ぐ。
射線上には騎士や兵士はいなく統率が取れた行動というのが一目で分かる。
私のようなたった一人にもコレほどの勢力を尽くして殺そうとしてくるのは敵ながら天晴れと言った感じだ。
力を振り絞り盾を前へと持って行き迫りくる岩を防ぐと共に腕に衝撃が来る。
地に足をつけ踏ん張るなんてことは出来ない…只々転がり盾を構えただけ。
心臓と脳さえ守れていれば生きて行けることは理解しているし魔力だってここまで節約して来たから十分にある。
「……コヒュッ!…グゥッ!」
それでも岩で押し流されないようできるだけ身体を盾で守ろうとし身体を縮こませ踏ん張ろうと盾を地に擦り付ける。
気合いを入れようと声を出そうにも喉に矢が刺さり空気が漏れ血が滴るがそんなのは関係ない。
ただこの攻撃を防ぐことのみに注力し身体を守り続けた。
そして…私が死んだと判断したのか攻撃が止んだ。
まぁ確かにコレほど石で出来た槍やら球体が身体を撃ち抜いたら常人なら死んでいるだろう。
「……『回生』」
その言葉を今の今まで待っていたかのように身体に魔力が巡り再生を始めていく。
ゾンビ戦法に近いやり口だがこうやってしぶとく生にしがみつく奴が戦場で一番強いっていうのは古今東西何処でも知られていることだ。
身体に刺さる矢を抜いて石の破片を抜いてその都度身体は魔力を消費し再生するかのように元の状態へと巻き戻る。
「流石にこの量を一人で相手するのは馬鹿がすることだったなぁ」
そして反省をした…まぁアルキアンに会えるからと少し気分がハイになっていたからあんな真似をしてしまったが今度はヘマをしないようにしよう。
雨のような岩から身を守っていたせいで身体にへばりついた鉄の盾を取り外し視界を明るくする。
近くには私の血と肉片が散らばりふと周辺を見渡せば岩と鎧のつけていない獣人族の姿があった。
おそらくコレはここで無惨に殺された民…か追い剥ぎされた兵士なのだろう。
「…いや火事場泥棒か」
その手には銅貨や銀貨と言った金目のものや宝石のついた指輪が嵌められている…死んだ貴族からぶんどったのだろう。
ならば遠慮なく使っても罰に当たらないというわけか。
虚空庫から足りない材料である溜め込んだ魔石を取り出して周囲に投げ捨てた。
私が多人数に対応する方法…それは特大な魔術での攻撃のみだと考えていては大間違いだ。
今回はアルキアンや当主様がいるから仲間を傷つけるような下賎な真似などできない。
「魔法陣展開…『中級悪魔』…及び『中級天使召喚術』発動ッ!対価として周辺の魔石と財を消費する!」
ナイフを握り天へと掲げて魔法陣を描き異界へと繋がる門を創造する。
魔力を辿り喰らい付きそうして呼ばれた存在は対価が支払われて現界した。
神の創造物にして善と悪の象徴とされるそれは見るものを恐怖へ叩きつける異形を象る。
とある悪魔は身体中に触手を生やし地べたを転がり近くにある死体を貪りついた。
またとある天使はその悪魔の行動を咎めることなく回転する車輪の様な目玉をギョロギョロと動かして全てを見渡す。
低級がマスコットで上級が人型ならコイツら中級は魔物の様な姿でこの世へと現界した。
「数には数で応戦しなきゃね…悪魔と天使よ!我が敵を討ち倒せッ!」




