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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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253

…アルキアン side…


悪魔を象徴とするような翼を広げて宇宙へと飛び立つ。

右手で小さくなったライオット王を掴み右肩に当主様が乗りかかるようにしてぶら下がっているからか側から見れば不恰好に見えるだろう。

まぁ…その不恰好さのせいで僕の体勢も崩しやすくなっているし右側に体重が乗っているから痛い。


「あんのクソ獣がぁ…俺の国を荒らしやがって…ガァァァァッ!」


「あぁもう…ライオット王…あまり揺らさないでください!もう少しで着きますから」


そうしてライオット王が激昂したコトで宙で左右に揺れつつこの崖の城、屋上に位置する開けた場所へと辿り着いた。

僕は肩で息をしながらどうにか息を整えさせる…というのも僕の持つ大罪の力である『憤怒』には飛行する能力ってのは元々無い。


悪魔の姿での飛行は翼を炎で構成し世界に散らばる怨念が集まりその翼から垂れ流しになりそこに炎が加わるコトで飛ぶことができるのだ。

姿を展開し続けると悪影響が生まれそうだからあまり使いたくは無いから短時間の使用に留めている。

使い続けていたら『憤怒』という感情があちらこちらで発現されてしまいその一帯は大混乱になるだろう。


僕のこの能力は魔力こそ使わないからかなり継戦能力は高いと自負しているがその分多少の体力と精神力が必要だからキツい。

この『憤怒』の能力を使用している間は何に対しても怒りが込み上げてくるし他者の『憤怒』という感情に敏感になりすぎてしまう。

それ故に感情のコントロールをしなければ無差別に攻撃してしまいそうになるから本当に使い所が難しい。


「ふぅようやく追いつきましたよ…全く逃げるのが随分と上手くなったモノですね?」


「ほんと…我々の血が本当に通っているのか疑うくらい逃げ足が早いですこと」


「この売国奴がッ!お前らこそ我々の血が通っているのか…疑わしいッ」


この崖の屋上に繋がる階段からゾロゾロと騎士達を引き連れたターナ家が姿を現した。

先程より人数が増えその背後には神官の姿がありその誰もが血塗れだ。

…きっと彼らにとっての反乱分子、元仲間を手にかけた後で此処へとやってきたのだろう。


「この虚栄に縋りついた仲間殺しがぁ…誇りや自らの血と先祖に恥ずかしくは無いのかッ!」


「はッ…何が誇りだ?何が先祖だ?そんなモノは魔物にでも喰わせておけばいいのだ…我々らは聖なる国の叡智と獣の大いなる力を持って全てを支配する」


「我々獣人族に必要なのは絶対的な外交…他国を従える力なのよッ!例えそれが過去の大敵だろうと強き国と手をとって融和を齎し絶対的優位性を手に入れる…それこそが国を栄光へと導く唯一の光ですわッ!」


その演説と共に周囲に付き従う騎士がまた前にと出る…背後に立つ神官はその手に杖を持ち詠唱を始めた。

夜空は炎で埋め尽くされた赤い空に輝く白い光の粒子が浮かび上がる。


多人数での詠唱というのは過去に行われた戦時の手法、上位魔法ともいえる儀式魔法と呼ばれた呪文。

その名の通り多くの人が集まり一心に祈りを捧げて敵を殲滅せんとする魔法を放つ。

だがその代償として詠唱者と周囲の魔力を持つ者全ての命を奪いそれに見合わない多くの命を刈り取る…それ故に戦後は全ての国が停戦した際その儀式魔法を禁忌として扱うと厳しく定めた。


「まさか…禁忌魔法だとッ…その代償がどれほどのものか分かっているのかッ!」


「フハハッ!安心してくれたまえ代償に使う命は弱き者の命…魔力は弱き者から頂戴し我々強く知恵のある者の命は使わない正に改良された最早過去の禁忌と指定された弱き魔法ではない…究極の魔法だッ!」


白の粒子は更に大きくなり刃のようにそれは尖り突き刺さんとこちらを睨む。

前に立つ騎士もそれを一度睨んだ後に僕達に標的を決めるとその爪を構えジリジリと詰め寄ってくる。


「こ、この大馬鹿者めが…それほど死にたいのなら叶えてやるッ」


その声と同時に黒い毛皮の王は大きくその身体を変異させる。

口は太陽を飲み込むほど大きく、牙と爪は鉄を軽々しく砕くほど鋭く、腕や脚は見た者を恐怖に陥らせるほど太くなり身体はそれに見合う大きさへと成長した。


最早先程の僕と同じ大きさではない…見るものが見れば魔物と見違うほど凶悪な姿だ。

コレこそが獣人族の王族、それも王に『傲慢』と共に継承される権威を示す象徴。

普通の獣人族の『獣化』ではない禍々しくも歴とした『神獣化』と呼ばれる神秘の術だ。


「ガァァァァァァァッ!クカカッ!行くぞ?勇気ある獅子の一撃『ブレイブインパクト』ォォッ!」


成長すると同時に騎士の元へと近づくと腕を振い衝撃波が戦場に響き渡る。

その一撃は騎士の一人に当たるとそこから波紋が伸びて周囲の全てを吹き飛ばす。

だがそんな吹き飛ばされた仲間を一瞥することなく騎士は爪でライオット王へと攻撃するがその攻撃が届く前に毛皮が金属音を鳴らして弾く。


「オラァァァァッ効かねぇゾォ!」


「第二防衛陣を組めッ!詠唱が終わるまで持ち堪えよッ!弓兵部隊ヨーイッ」


「見てるだけでは此方の印象が悪いな…今助太刀いたすッ!」


遠くからターナ家の「放てッ!」という声と同時に横にいた当主様が地を蹴り走りだして腰に刺した剣を抜いて降り注ぐ矢を弾き返す。

その戦場へと出た当主様は一進一退で音速の域での納剣と抜剣をした後下がり突進してはライオット王に加わる攻撃を弾いている。


「それなら僕もやろうか…燃えよ『瞋恚武装』そして漂う怨念よ炎となりて感情のままに焼却せよ『憤怒の劫火』ッ」


身体から発される炎は手に結びつき大きな剣へと変貌し灯火から劫火へと成った『憤怒』の炎は黒く燃え上がると天を焦がす。

先程まで悪魔の羽根が生え揺らぐ気体の炎は結晶となり炎の鱗へと転じそれでも抑えきれない黒い炎が身体から吹き出した。

感情が揺らぎ暴れたいという本能が溢れ出し口の端が上にあがりそうになるが手を必死に抑えて平静を装う。


「さぁ…行こうか」


その少し震えた声を放つと僕は宇宙へと舞い上がった。


…アルキアン side end…

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