250
あの二人組を倒してから私は黒い炎や土埃が昇る崖の孤城へとただ走る。
外套により幾分かは炎を避けれてはいるが熱いものは熱い。
後ろでは獣人族の集まりが聖獣と神官を倒し人族は消火活動を行っているようで先程より炎は治っているがそれでも私が行く先には炎が広がるばかりだ。
だがその獣人族の暴れっぷりが恐ろしく自分の街だというのに家を自分で壊しそれで自分で怒っているときたものだから恐ろしいことこの上ない。
情緒どうなっているんだと問いただしたいほど宇宙に咆哮を上げて「コレは全部愚かな国のせいだ」とキレては破壊活動をしている。
「……またでやがったか」
そうして先を進んでいくにつれ私の前を阻んでくる奴が増えた。
四足歩行でコチラを見つめてくる顔が聖獣で身体がほっそい毛のない肉付きをした獣だ。
顔には立派な白い毛がボーボーなのに身体にはその毛が一切生えてないのだから不気味な雰囲気だ。
こうやって考えている間にも周囲の炎によって溶けた家の隙間からそんな不完全な聖獣が出てくる。
元々なのかは分からないがその身体の四肢は何処かしら太かったり逆に細すぎたり果てには全ての四肢が曲がっていたりする。
だが統一して全て顔だけは立派だ…そこを含めて不気味である。
「魔法陣展開…エアロスラッシュッ!」
琥珀色から眩い薄緑色の光が溢れそのナイフを振ると軌跡を辿るように魔力の刃が飛び出してその聖獣を殺す。
だがそんなエアロスラッシュを掻い潜って近づいてくる奴もおり噛みつこうとしてくる。
…まぁ目が悪いようでさっき私がいたところに突っ込んでいくだけなんだが。
それでも邪魔なものは邪魔であり偶に私へ突進する奴もいるので油断できない。
「熱いし…コイツら邪魔だし…けどあともう少しであそこに辿り着ける」
弱いけど何故か何処からともなく湧いてきて喰おうとしてくる…けど弱い。
そんな邪魔者以外の何者でもないコイツらの攻撃を捌くのは大変である。
でもそんなコイツらとの攻防ともようやく終わる。
それは目の前にこの獣人族の国の城である崖の壁があるからだ。
身体に魔力を回し特に脚に重点的に溜めを作り突進する。
こういうのをパルクールと言うんだったか崖の凸凹の壁を攀じ登り上へと登っていく。
下を見るとそれまで追ってきていた聖獣がコチラのことを恨めしそうに喚いている。
そして何故か弓と魔法が飛んでくる。
下にはいつの間にか聖獣の近くに神官がおり手に剣を持ち明らか近接に特化してますよという格好なのにも関わらず弓や魔法を使ってくる。
「ん、もう諦めるのか」
パルクールでそんな攻撃を避けているとあちら側は諦めたようで城へと入っていく。
そういえばこんなことしなくとも飛翔の魔術を使えばいいのではと思った奴もいるだろう…私も思った。
けどこの魔術は改良はしているものの魔力の消費が1秒単位で消費され凄いため短期決戦か離れた場所に移動する時のみ使いたい。
まぁ本音を言えばあまり高い場所に行きたくないってのもあるがな。
先程まで登っていた屋根ですらあんな高くて怖い思いをしたんだしそれ以上高いとなると身動きが取れなくなるだろう。
まぁ飛翔の魔術にはそう言う恐怖心を安定させる支援魔術も施してあるから実際には身動きが取れないなんてことにはならないんだが。
兎に角あまり高いところには行きたくないってのが本音だ。
ちなみにだが魔力が心配なら魔力タンクとしている琥珀色のナイフを使えば良いのではという見解もあるだろう。
だが魔術自体がナイフから発される構造上ナイフに飛翔の魔術がかかる。
すなわち魔術を発動すると空飛ぶナイフが出来上がるわけになりそれを持つ私…とんでもなく滑稽な状態で空に浮かぶことになるためこの考えは却下した。
「ふぅ…ココから中に入れそうだな」
やっとこさ壁をパルクールして着いた先は天井に鍾乳洞の如く煌めいた石が貼り付いたテラスだった。
なんと言うかココには色々縁がありすぎる気がするがこうやって街を一望できるほど開けた穴があり入って早々に戦いになってもコレだけ開けた場所があっても逃げ回れる。
そういった理由から態々そこら辺の廊下に空いている私が入れるような覗き穴からではなくココから入ったのだ。
「まぁコレだけ外の周りから見えるようによじ登ってたら神官が集まってくるわな」
下で見つけた弓と魔法をノーコンで当てようとしていた奴の他に神官が増えている。
どうやらお相手さんは外から私を見つけ態々城の1階からここまで走ってきたらしい。
そりゃあ占領している城に子供とはいえ侵入者が入ったのだから走ってくるだろうな。
「だがココにこうやってきたのもわざとなんだよね魔法陣展開」
シンボルは雷で一応ナイフに溜めてある魔力ではなく私の魔力を消費し必要以上に込めておく。
ココへの入口など一つしかなくそれも人が二人通れるぐらいでアイツらはここまで走ってきたせいで疲れ切っている。
剣を持ってんのが2人であれが弓と魔法を使ってた奴らでその後ろにチラッらっといるのが新しくきた人だろう。
「よ、ようやく追いついたぞ卑怯者…ハァァァァァ…覚悟しろ!」
「絶好の攻撃チャンスってわけだッ…貫け『天雷砲』ッ!」
そうして放たれるのは極太のレーザーであり風と雷の混合の技が魅せる軌跡ともいえよう。
空気という実態をもつ風が刃のように突き刺して非実態の雷がその傷目掛けて飛び込み内側を焼く。
その現象を無数に行い白く見せ風が形を作り出す。
本来の雷ならば避雷針などの鉄などで運が良ければ一人のみに当たってただろうがコレはそんな甘くはない。
魔力の限り風を生み風で雷を運び伝線の役割を持つ風が切り裂く魔術だ。
その雷鳴は轟音響かせ地を走る雷は肉を焼き風はその肉を切り分ける。
「コレでいっちょ上がりってな」
焼き焦げた人の残骸をみて呟いた。
私に牙を剥こうとして這い上がった神官は人生の幕を閉じたのだった。
「ここにいちゃ魔術の音でまた神官が集まるだろうしさっさと移動しよ」
そうして私は駆け出す…はてさてアルキアンは何処にいるのだろうか?




