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身体に魔力を溜めて地にある屋根の煉瓦を踏んでそして蹴り前へと走り出す。
虚空庫から取り出した鉄の短剣を右手に持ち左手には琥珀色のナイフを持つ。
頭で使う魔術を思い浮かべて左手からナイフの先端まで魔力を通して放つ。
「魔法陣展開…ゆけ、アクアボール」
浸透させた魔力を吸って琥珀色から水色に輝いたナイフを空を斬るようにして薙ぐと真っ直ぐに水の玉が撃ち出される。
水の玉は屋根についた炎や燃えて崩れた木材を包んで弾け消火する。
本当だったら先程放った痺電流の魔術で痺れて欲しかったがまぁあんな屋根で避けるためとはいえ何も見ずに後ろに飛んだら転ぶだろう。
そんな風に鷹を括り立ち塞いできた二人を追い越し水で消火された足場へ飛び乗り先を目指そうとした。
一応構えてはおいたが…下に落とした方が速くあそこへ行けるだろうしコイツらは無視しておくこととする。
「チィ…こんな餓鬼に負けてたまるかよッ!」
言葉遣いの悪い一人の神官がいち早く状況を判断すると一緒に後ろに飛んだ杖を持つ神官の身体を掴みモーニングスターを投げて近くの家の壁を突き破る。
その破り突き刺さりストッパーの役割となったモーニングスターの鎖を使い落ちゆく身体を壁に引き寄せて壁を走ると対面にある家の屋根へと飛び移った。
あんな体勢からしかも短時間で対面へ飛び移るなんて…凄い身体能力だ。
それに元々あんなにモーニングスターの鎖は長かっただろうか?
…もしかしたらアレはアーティファクトなのかも知れない注意を払わなくては。
「ハァ…ハァ…今だオメェの唯一の得意技で燃やしてやれッ!」
「ふぅ…すまない助かった…なら後は私が仕留めましょうッ!おぉ我らが女神よ…燃え広がる炎よ!我らが敵を焼却せよ!フレイムカーペットッ!」
ここまで聴こえる大声が響くと相手の持つ赤い宝石のついた杖が輝き目に入った一面が一瞬の閃光に包まれた。
それは小さな火球で赤い宝石のように見えたがされど豪速球でそれが飛んできて全てを燃やす。
着弾地にそれが落ちると弾け飛び屋根を一面火の海にした。
「くッ…炎が揺らいで熱いし煙で視界が」
炎や煙が顔にかかるのを避けるため反射的に手をかざしてしまう。
一瞬の油断が命取りというのは古今東西どこの戦場も同じで鎖がついたトゲトゲとした鉄球が私目掛けて飛んでくる。
その危険信号を放つ物体が近づくことで身体が反射的に動いて咄嗟に半歩前へと駆け出す。
直後後ろからは瓦礫が舞う。
そしてその鉄球は引きづられるように下へ落ちた後鞭のようにしなり天へ打ち上がり持ち主の元へと帰っていく。
「おいッ…ご自慢の鞭のような鎖術が血と炎で錆び付いたんじゃじゃないか?」
「ハァァァァァうっせぇなぁ…こっちはオメェをこの屋根まで引き上げたから疲れたんだよッ!…次はぜってぇ当てる」
そう言い放つとその鎖をぶん回しモーニングスターは天を回り狙いを定められた。
ここにいたらあの攻撃が着弾する…あんなのが連続で来たら家が崩れるし無駄に火傷を負ってしまう。
しかも対面とはいえここからじゃ短剣などの物理攻撃が届かない。
あそこであの選択をしたのは悪手だったのだろう…まぁここで悔やんでもしょうがないことだが。
頭で魔法陣を構築し魔力を流してナイフを振る。
それはさながら指揮棒のように薙ぐようにして振り回して宙にその魔術を作り出す。
ナイフには当然ながら収集の魔印の魔法陣を刻んでいるため持っているだけで大気の魔素を集める魔力タンクの役割もあるのだ。
「どっちが先に家が崩れ落ちるかなッ…魔法陣展開…魔星砲ッ!」
無理に相手の身体は狙わない。
どうせ避けられたら攻撃も無意味になってしまうだろうから…だからこそ相手が立っているその場を狙う。
魔星砲の魔術は収集の魔印が含まれそれを作用させ大きさを変えるもので宙に白い粒子が生まれそこから大きな球体となり撃ち出される。
射出したその球体は最初こそ家の壁を壊すもので相手はどこに放っているのかと嘲笑いこちらを馬鹿にするが家が傾くと顔色を変えた。
「あ、あんの餓鬼がやりやがったなッ!」
「何言ってんだよ…あの子供は狙いすらつけられないんだからそんな怒るなって」
「そっちこそ何言ってやがんだッ!餓鬼の狙いは…ッ!」
叫ぶと同時に倒壊を始める屋根の一部は崩れ落ちそこから波紋が大きな波へと変わるように穴が広がる。
その様子を観る直後にまたしてもトゲのついた鉄球が此方へと飛んできてまたしても家へ飛び移ろうとしてくるが魔星砲が家を崩す。
そして二人組は倒壊していく家の瓦礫に呑まれて下敷きになっていく。
あの状態からターザンの要領で此方に飛び移ることはできないだろう。
燃える足場から倒壊して崩れきった家を見つめる…が人の姿は見えない。
モーニングスターを持ってたやつは中々身体能力が強そうだったから生きていそうだが最後までこちらを子供扱いして馬鹿にしてた奴は死んだだろう。
そうして私は「よしっ」と指差し確認をすると先に急ぐこととした。
「これ以上アイツらみたいな奴には会いたくないなぁ…」
そんなことを呟きながら少し燃えて煤がついてしまったズボンを叩くとまた走り出した。




