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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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目が覚める…どうやら机に座ったまま寝てしまったようで身体の節々が動かし辛い。

昨日の夜は確かある程度納得いく設計図が出来たから試しに制作したんだったか?


「ん…作ったのってどこに置いたっけ?」


眠気が残る目を擦りながら虚空庫の中を探しそして探し出したソレを手に取る。

鞘は適当な何かの魔物の革を切り取ってソレらしい形に成形させて使いグリップはそのまま。

だがその刃は琥珀色の光を放つ異様なナイフがそこにあった。


素材は砕いた魔石と水晶、そして黄土色の宝玉を砕いてそれらを全て溶かして混ぜて半透明な塊になったところで型に流して作り出した。

まぁそこからやすりがけとか何やらはしたが…兎に角色々やったってことだ。


型に流したせいで私が元々使っていた飛ぶ刃が使えなくなったのは少し悲しいし鍛治知識がない私がこうやって製作したせいで斬れ味が少しアレなのが残念なのだが。

やはり黄土色の宝玉を使ったからかそれを補う異常性を獲得した。


「このナイフの異常性…それはこの」


「…お休みのところすみませんパーティの準備をする為レナ様には此方に着替えてもらいます」


私は意気揚々と鞘に入ったナイフに手を翳すと同時に扉は「トントン」というノックをされると同じタイミングで有無もなく開けられる。

そこから出てきたのは我らが当主様に慕える女性の騎士ら。

手には何故か黒色と赤色で彩られた厨二病が喜びそうなドレスを持っており私へと物理的に押し付ける。


「うーん…これはこれはお似合いです!私達がちゃんとメイクしてあげますからねッ!」


そう言うと背後からヌッと二人の騎士が出てくると私の腕を掴む。

こうなるともう抵抗など出来ない。

顔には粉をプッシュされ髪はずぶ濡れになったと思ったらすぐに乾きセットされる。

服は瞬く間に脱がされドレスで身を飾られ装飾を施された。

…そしてコルセットを身に付けなくていいことに安堵を覚えた。


あっという間にどこぞのお嬢様のような格好となった私が鏡に映った。

何で着替えなければならないのか…そんな言葉さえ出ずおめかしが終わると次に騎士達は私の身体を持って走る。


「アルキアン様ッ!只今レナお嬢様をお連れいたしましたッ!」


騎士達の脚力でパーティ会場へと入る扉の前まで連れて来られるとアルキアンの前に私を立たせる。


「ご苦労様…レナ、その可愛く着飾ってもらったね?」


そんなスピード感ありまくりな場面の展開に私は口を半開きになりながら立ち尽くすしかなかった。

目の前でなんか言っているのが目に映るが頭の中では「なんで?」と言う言葉が回っていて耳に入ってすら来ない。

アルキアンも私と同じように綺麗に身なりを整えており黒色と赤色が特徴的な礼服を纏っており髪も上げているので一瞬コイツはアルキアンでは無いとすら錯覚した。


アルキアンの奥にあるパーティ会場内には疲れた顔をした我らが当主様とカルメア嬢とダルク坊の当主様が話をしている姿が見える。

また、遠くを見ればカルメア嬢とダルク坊がそれぞれ集団で貴族同士の会話をしている。


「私…何でここにいるの?」


「それは君が僕の側付き人だからね」


私を連れてきた騎士達はいつの間にかいなくなってその代わり私の横にはアルキアンが居てさりげなく手を繋いでいた。

おそろしく速い移動…私でなきゃ見逃しちゃうね。

ちなみにその速い移動で隠れた騎士達は廊下に配置された花瓶の裏におり私たちのことを観察している。


隠れ方はあまりに杜撰で目を凝らせば着ている鉄の鎧の反射光が見えている。

だがそれはアルキアンには見えていないようで私の手を引いてパーティ会場へと入った。

パーティ会場の中は非常に賑わいを見せており各国からここへと参じたお偉いさんの貴族が楽しく会話をしている。

そうしてパーティは開始の合図が送られる。


正面の綺麗に飾られその奥に玉座がある舞台に太鼓や銅鑼等を持つ獣人族の騎士が現れるとそれを高らかに鳴らす。

集まった全員がそこへと目を向け玉座の横に親睦試合で宰相と名乗った狐の獣人であるカゲミツが立つ。


「静粛にッ!これより獣人王並びに親族のご入場となります…拍手でお迎え下さいッ!」


その言葉が告げられると太鼓が鳴り始めリズムに乗った甲高い銅鑼の音がパーティ会場内へと鳴り響く。

頭上のシャンデリアは青く光り輝き壁に飾られた魔物の頭の口からは炎を吐く。

そんな側から見たら蛮族の儀式のような風景を魅せ会場の扉が開く。


「ワーハッハッハッ!勇者王のお通りだぁッ!」


雄叫びのような笑い声を出しながらレギスタ獣国を統治する傲慢な獣人族の王であるライオットがその姿を現した。

肩からは黒い毛皮を纏い手には大きな爪を伸ばしたその格好で叫ぶ姿は正に終末時の覇王のような装いぴったりだ。


それに続き黒の立髪、白の立髪、茶色の立髪を持つ獅子の獣人族が入り最後に赤色の立髪を持つ獣人族が姿を見せた。

その場の誰もがその最後に入った赤色の立髪を持つ少女へと目を向ける。

今民らの間で話題に上がり親睦試合で堂々たる告白をし幾人のイードラ王国の貴族の胃にダイレクトにダメージを負わせた少女へとその一挙一動を見定める。


この国の重鎮の防衛や王族の護衛…そして国の最高戦力『百獣軍』の総大将であり騎士団長あるいは軍務卿と呼ばれる重要人物の娘。

『烈風爪』という二つ名を持つトゥランベル・ターナが騎士団長の手を添えられて会場内へと姿を現した。

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