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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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そんなこんなで天然甲冑さんとゲラ甲冑さんと一緒にビスケットを分け与えながらそれぞれの主人の見守ること数分後誤解は解けたようで話し合いながら戻ってきた。

アルキアンは…少し疲れた表情をしているなぁ。


側付き人に聞いた話だと金髪の方がカルメアという子爵家の嬢ちゃん。

銀髪の方はダルクというかなーり地位の高い侯爵家の坊ちゃんだそう。

どうやらそれぞれ幼い頃からの仲だそうで所謂幼馴染という関係なのだという。


「遅くなってごめん…それじゃあ行こうか」


そう言うとまた手を握りながら歩き始めた。

背後からは「これってそういうことなのかしら?」という声が聞こえてくる。

…まぁ何となく意味は分かる。


アルキアンと私の関係のことについて突いてきてるんだろう。

恐らくはアルキアンは私に対して恋愛感情に似たものを持っているのだろう。

この数日でスキンシップが多くなってきたのもその影響あってのことだと思う。


対する私という人間は…まぁ元男な訳で。

別に同性婚を否定するわけでもなければそういうのを嫌っている訳ではない。

前世でも仕事の付き合いで海外に行ったりした時そういう話ぐらいは聞いたことがある。


インターネットだってそういう話題は出てた。

そういうのに私は「へー」ぐらいしか思わなかった。

だが…なぁ私より精神的にずっと歳下なやつで私としてはどうやっても女性の方が好きだ。


「…願わくば、このまま馬鹿やりながらいられる関係が良いな」


小さく呟き願う。

今みたいな友達というか親友でいられるようにと。

そう思い気づく…私は今世では結婚は絶対に出来そうにないなと。

何なら男性と女性の輪に入れないから友達すら出来ない。


だからこそアルキアンという親友は手放したくないものだ。

唯一仕事関係なく話すことができるやつなのだから。


「着いたよ…ここがこの国の中でも絶景が見れるっていう断崖のテラスだ」


アルキアンに手を引かれながら着いた先は王城の一番高い場所。

少し開けたテラスだった…そこからは城下町となっているロンフェールの街並みを一望でき上には鍾乳石のような何かが光りながら点在して綺麗だ。

外は真っ昼間で明るいのに上を見上げると星空が煌めいているかのようだ。


そうやっていると周りからは私と同じく見上げている獣人族の子供が視界の端に見えた。

ここのテラスというかこの王城自体が自由開放されているのだと実感できる。

この王城は防衛用の要塞であり避難場所…だからこそこうやって民が自由に出入りする。


誰もが綺麗だと言いながら街並みと鍾乳石を交互に見ている。

横ではアルキアンや坊ちゃん嬢ちゃんもその景色を一望し目を瞬かせている。


「………成程」


そんな小さな呟きが聞こえ声のした方へと視線を向ける。

そこにいたのはこの国には似合わないような神官風の服を着用している壮年の人族?

いや頭の上に耳があるから獣人だろうか。

…頭の横に普通に耳もあるなどっちだろうか?


十字のロザリオに錫杖まで持ってるし何処ぞの国の神職かな?

怪しい…にしてもつい似合ってないなぁと思ってしまう。

何というか怪しいとか思ってても似合ってないっていう言葉が出るぐらいには似合ってない。


そうして景色よりもそっちの方に視線を向けているとけたたましいベルの音と共にこの国の衛兵が到着し壮年の人族を連れて行ってしまった。

やはりその格好でこの国を回るのは難しかったようだ。


壮年の人族は衛兵から逃げようとするがここは獣人の国。

ここに来た衛兵は犬の獣人だった為即座に回り込まれお縄についてしまった。


ふと横を見るとアルキアン達はこんな状況でも景色の方に感動しているようで街並みに魅入っている。

街の方を見ると先ほどまで高く登っていた太陽は沈もうとしており夕陽が向こうの山に消えようとしていた。


そうして暗闇が訪れ空には星が映る。

街では喧騒に溢れ此処ではただ静かに宙と街を見つめる。


「…そろそろ帰らないとね」


「…この光景はずっと見ていたいですわね」


アルキアンとカルメア嬢がそう言うとまた手を繋がれて歩き出した。

…今度は何故かカルメア嬢も一緒になって私の手を繋いで歩き出したので何か宇宙人が連れられている気持ちになった。

どちらも私より身長が高い…これ私が足を地から離しても移動できるんじゃなかろうか?


ちなみにダルク坊は私達の前を歩き先導している…側付き人は私達の少し後ろ。

奇妙な陣形だ…他の人がこちらをチラチラ見ながら少し笑っている。

側から見れば私の今の状況は正に滑稽なのだろう。


足を止めても止めなくても引き摺られ移動する。

私が足を止めた時アルキアンは一度私の方を見て足を止めようとするがカルメア嬢は私の意思すら無視して歩くせいで私の身体は中に浮き移動する。


「さて、僕達に割り当てられた食事処は此処だったかな」


ダルク坊が呟きながら扉を開くと大きくそして長い机が一つある部屋が眼前に広がる。

奥では3人の男性が話し合っている姿が見えた。

その中の1人が我らが当主様ってことはわかるんだが…他二人は恐らくカルメア嬢とダルク坊のおやっさんなのだろう。


そして…扉が開かれたことでその3人は私の方を当然の如く見る。

…瞬間水を吹き出した。

やはり今の私が滑稽だったからだろう。

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