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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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灯りが周囲を囲み開けた踊り場に熱意が包み込む。

ざわざわと騎士や獣人の声が聞こえ獣人は私の体躯から子供だからと決めつけ一応は応援してやろうという声援が聞こえる。

対する騎士や兵士は真剣に悩んでいるように思える。


そして…やはりここでも賭けをしている。

賭けられているのはさっき出たワイバーンの肉である。

やはり遊戯が少ないこの世界ではこういった前世ではあまり好まれなかったのが流行ってしまうのだろう。

熱狂するものこそが好まれる…私には少し合わないが慣れるしかないだろう。


「おいおい…よそ見かよ?まぁ子供だから許すか…俺はなんて寛大なんだろうなぁガハハッ」


なんか独り言を呟いている傲慢野郎がいきなり笑い出す。

その笑い声で周囲の獣人は何故かボルテージが上がったようで盛り上がりを見せる。

コレには騎士や兵士も困惑したようでたじろいている。


「そろそろ始めようッ!俺こそがレギスタ獣国の代々続く大王にして世界に認められし傲慢の大罪を持ち世界を導く勇者王ッ!ライオット・ウォー=レギスタ四世だッ!」


その言葉に周囲からは歓声やら嬌声やらが聞こえてくる。

やはり一国の王という補正もあるのだろう。

…何故かあちらは「さぁ…さぁ!」みたいに手招きしてるし何故か周囲も私もみている。


アルキアンの方を向くと口元を手で覆ってグッと親指を立てている…あいつハメやがったな。

やったことねぇ…というかやりたくねぇ。


「私は…お前が気に入らない唯の一般市民のレナだ」


「おいおいそれだけかよ…まぁいいや先手は譲ってやるよ!俺は寛大かつ優しいからな~」


私の名乗りに周囲は笑う奴もいれば頭を抱える奴もいる。

…どうしろってんだ私にはコレ以外何の肩書きもないんだぞ?

いや一応冒険者ギルドA級の資格とかはあるが…まぁ思いつかなかったからいいか。


にしても先手を譲るとはかなりの自信があるようだが…。

それほど自分にはダメージが与えられないとでも思っているのか?

あのワイバーン戦にもいたから私の魔術は見ているはずだが。


「目標補足…魔法陣構築開始」


獣人や兵士の観客はかなり離れた場所にいるから私がかなりの大技使っても被害はなさそう…。

ならばそれなりのを使っても良さそうだな。

天に魔素を届け操り陣が全体を覆う。

シンボルは雷鳴と光を象徴する太陽…そこに幾つもの魔法陣を重ね歯車のように。


「魔法陣展開…天から鳴り穿て天雷砲ッ!」


音は振動を呼び地に降り注ぎその土を割り天からの砲撃は幾多の光が宙を走る。

ワイバーン戦に使った魔力は未だ回復していないがこうでもしなくちゃ意味が無い。


「ガハハッ!成程…その雷は大罪の倅が使ったと思ってたが…コレほどの子が操っておったとはな俺は感激したぞッ!」


光の柱の中からは毛皮を被った大男が出てきた。

獣の顔を持ちコレこそが魔獣では無いかと錯覚してしまうほど屈強な肉体を持つそんな存在が…。


私の魔術による攻撃は何とも無いかのようで毛並みを整えている。

宇宙は天雷砲の副次効果である雲の生成により曇り周囲は松明の灯りのみ。

そして瞬きをする時傲慢野郎の姿が闇夜に消える。


「楽しもうぞッ!先手はくれてやったんだから早々にくたばるなよッ!」


危機が迫ると同時に身体に自然と魔力が回りその場から離れると同時に傲慢野郎の爪が通り過ぎ旋風を巻き起こす。

空気を叩き衝撃波を生み出している。

それと同時に飛ぶ斬撃のような…正にスラッシュのようなものを自然と行っている。


「コレは…アレだなぁ…カクク…久々に遊べる玩具だなぁ」


言い終わると同時に背筋がゾッとする感覚に陥ると同時に全方位からの危険信号が頭に鳴り響く。

猛獣という言葉が似合うその形相と共に突進そして振り返り狼爪を地に立て思いっきり上へと突き上げるとまたしても旋風は巻き起こり土と一緒に斬撃が飛ぶ。


身体強化すらしていないそして大罪としての能力も恐らくは使っていない。

それなのにこの威力の攻撃をしてくるとは…何とも危険だ。


頭で位置を確認しつつ射程圏内と軌道の予測。

空気がある空間ならば…私は考えることができればあらゆる所に理論上魔法陣を作り出せる。

魔素を手に集め魔法陣を構想…土のシンボルに火のシンボルを重ねその周囲に歯車のように支援する為の魔法陣を作り発射する。


「魔法陣展開…私の手はマシンガンのように…『恒星ノ礫』」


「なんだぁその豆粒はよぉッ!」


手の先に魔法陣が構成され指定された魔術が繰り出される。

火を纏う石の礫が軌跡を描きながら地に落ちる。

狙いはあの傲慢野郎…ではなく星の灯りがなくなり暗闇になったこの空間だ。


傲慢野郎は自分を狙っていると思っているようでまだ余裕を見せつけるようにわざわざ恒星ノ礫にあたりに行く寸前で止まって笑いながら回避する。

そう…コレは魅せプレイって奴なのだろう。

自らが絶対負けないという誇示を身をもって体現する。


灯りが見えそれを軽々しく回避することで観客の歓声は更に上がる。

アイツはエンターテイメントのように振舞っているが…どうかそのまま気づかないで欲しいものだ。


「…そのまま道化を演じてろ」


私の夜目によって暗視が効いていてもあの暗闇より黒い漆黒とも言える毛皮は厄介極まる。

一瞬にして視界から消える恐怖ってのは看過できない。

自分でやったことだから観客は私のことを愚かだと思っているだろう…コレは側から見ればマッチポンプだろうからな。

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