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孤児のTS転生  作者: シキ
孤児と愚者の英雄譚
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時間は過ぎ辺りが真っ暗になる頃村には太鼓に似た音や笛の音が響く。

村だからこそ獣人だからこそと言った感じで団結力というものが強くあり一糸乱れぬ踊りが見ることができ目が楽しめる光景だ。

騎士や兵士達は他の負傷者を気にせず酒を呑みその負傷者も踊りはしないが手を叩いて笑い出す。


一見すると楽しい雰囲気ではその過程などを知る自分にとっては中々手放しに楽しめない。

当主様やアルキアンはあの傲慢な獣人の野郎につきっきりだし御者であるレイノルドさんも他の仲間達に囲われている。

村の子供達も家族と一緒で楽しそうだ。


こんな楽しい雰囲気なのに私一人だけ楽しくないのは何とも…言葉にしていえないが羨ましいとさえ思ってしまう。

そんなことを思いながら長いテーブルの上に置かれた森の果物や村の人が作った謎肉ミートパイを喰らう。


自前の刃が飛び出すナイフで切り分けると切り出したところからはジューシーな肉汁が溢れ出し何とも美味そうに見えた。

そうして切り分けたそれに思いっきりブッ刺そうとして空中で止める。


「…コレももう寿命か」


見た先にあるナイフは所々凸凹しており刃が曲がっている。

詰まるところ傷が目立ってしまっている…コレでも砥石を使ったり他の金属とかで補修とかしてたんだがやはりあの地属性のワイバーンだけあって硬かったせいか刃が曲がってしまった。


元々3本あったスペツナズナイフはコレで最後。

他の二つは他の魔物を倒す時に刃そのものが根本から折れたり溶けたりして使い物にならなくなった。

武器を集める趣味があるなら集めたやつ使えって自分でも思ってるんだがながーく使ってきたもんで愛着もあったからコレは中々武器の交換ができない自分が悪いってことは分かってはいる。


「何処で曲ったんだかなぁ…とりあえず刃を取っ払って柄だけ残すか…はぁ」


素早く刃と柄に分け虚空庫の中へとぶち込む。

あんま使ってこなかったが刃が飛ぶ仕組みは柄にあるからそれの解析やら刃自体を一から作ればまた使えるだろう。


私は武器を保存している虚空庫から食事用に取っておいたナイフを取り出した。

コレも一応は武器なのだが魔道具として付与されている逸品である。

何を思ったのかこのナイフには『切れ味向上』みたいな武器用の付与ではなく『味向上』という食事用の特殊なのが付与されている。


そんなことを思いながらミートパイにナイフを刺して口に入れる…「美味い」その一言に尽きる。

何の肉が使われているのかわからないがとにかく肉汁が溢れて美味い。

ワイバーンの肉はあっちで丸焼きにされているからコレはワイバーンの肉ではないことはわかるんだが…本当に何の肉なのだろうか?


そうやって食べていると周りには私より一回り二回り程小さい獣人がお皿を引きずりながらこちらへと小さい歩幅で歩いてきた。

…可愛くはあるがあんな小さい子に肉を与えてもいいのかと思ったが私の後ろまで来た子は皿を地に下ろした。

そしてそのまま待つ…つまりコレは分けろというわけで遠くにいる大人の獣人も私のことを何となく見ているようにも思えた。


そうして私は目の前にあるミートパイを切り分けその地に置かれた皿に渡すとその子供達はその皿に群がった。

一片しかあげてないのに周りの子達も集まってそれを食い尽くす。

人族と獣人族とではこうも違うのだな~と思う瞬間なのであった。


…少女達食事中…


「あぁ~食べた食べた…にしてもワイバーンは食えたもんじゃなかったなぁハハハ」


「筋が多くて食えたもんじゃねぇよ!はぁ~あんなのが子供の頃に憧れた高級食の亜竜の肉だったと思うと…残念だ」


「あんは宮廷の料理長が作ってぇのが美味ぇだけで普通のやつが作ればこんなもんなんよ!まぁオラも食ったことねぇでなッガハハ」


周りが酒で潰れ子供達も家に戻ったりして寝静まる中酒豪と言えるおじさん達はそんな言葉をガハガハと笑いながら言い合う。

私はお酒は呑んでないからあんま眠くはないから起きてはいるが…子供達も寝たため暇だ。

口に入れた爪楊枝でワイバーンの筋肉を掻き出しながらテーブルの向こうのソレを見る。


「「………」」


テーブルの向かい側に座るのは当主様、アルキアン、そして傲慢な獣人の野郎が座る。

対してこちらに座るのは私一人。

配置おかしくないかと思ったが言葉が出ない。


なぜ私の前にいるのかすらわからない…私はただここでワイバーンの肉を食べていただけだってのに…。

その傲慢な獣人は私を睨むように見続け口を開く。


「盟友殿に倅よぉ…やはりコイツは弱いぜ?俺の能力にも引っかからねぇし」


「いやはや何をおっしゃいますか…アルキアンが言う通りレナ殿はかなりの強者でありますよ?」


私を貶す発言をしそれを当主様が庇うように言葉を交わすがソレでも認めないようでその傲慢はムッとした顔をした。

何故そんな顔をするのか私もムカついたがここは大人の態度ということで爪楊枝を握り締めいつの間にかテーブルの上にあった葡萄のジュースを一気飲みすると口を挟むこととした。


「なら…一戦交えてみませんか?この傲慢野郎がよ」


「うん?フハハッ!度胸が良いなぁ…いいだろうこの国の王である俺が一丁相手になってやろう」


何か思ってたんと違う言葉が口から出たような気がするが…まぁいいか。

当主様は頭を抱えてるがアルキアンはグッと親指を立ててるし良い判断をしたってことだろう。

私と傲慢野郎は先程まで踊りが行われていた開けたところに出ると距離を取る。


周りは眠りから覚めた戦い好きの獣人と兵士と騎士が今か今かとソワソワした雰囲気を漂わせていた。

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